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第234号  登る男

先週末、カナダ人の同僚とその友人のイギリス人のクライマーとトレーニングがてら近くの国立公園にアイスクライミング(凍った滝を登るクライミング)に行ってきました。当地は寒い割に降雪が少ないので、滝は完全に凍って、しかもアプローチでラッセルする(雪をかきわけて進む)必要がないという、アイスクライミングにはもってこいの場所です。

 車から降りて登ること1.5時間。その滝はありました。遠くからでもすぐに見つけられる全長約50mの滝です。日本だとこのような大きなスケールの滝はなかなかないので、滝を目の前にするだけで少し興奮してしまいます。

 まずはカナダ人の同僚がリードする(最初に登る)ことになりました。アイスクライミングでは登りながら何か所にもアイススクリュー(回転させて氷に埋め込む金具)を氷に埋め込んで、それにカラビナ(D型の金具)をかけ、さらにそのカラビナにロープをかける動作が必要なのでリードする人が一番大変です。
 アイススクリューにロープをかけていくことによって、万が一、それより上で落ちてしまっても、地面まで落ちてしまうことはなくなります。もちろん地上ではロープを確保している人(ビレイヤー)がいて、クライマーが登るにつれてロープを少しずつ出すようになっています。

 2番目にイギリス人のクライマーが登り、最後に私が登りました。しかし久々のアイスクライミングということもあって、アックス(アイスクライミング用のピッケル)を何度も振っているうちに両腕が疲れ果ててしまい、何度もテンションをかけて(ロープに体重を預けて)しまいました。
 もちろん先に登ったカナダ人の同僚が上でロープを確保してくれているので、テンションをかけても下まで落ちてしまうことはありません。それで結局、へろへろになりながらも、なんとか50mを登りきりました。今回はこの50mの滝を登るのに予想外に時間がかかってしまい、その後すぐに下山することとなりました。

 どのスポーツ(或いは趣味)にも当てはまるかもしれませんが、ある一つの目標を達成するためには、そのメンバーの間には生まれた国や民族の違い、その他諸々の違いを超えて協力する姿勢が生まれます。

 私の場合はそれがたまたまクライミングで、この国に来てからは様々な国籍・民族の人と山を一緒に登りましたが、かっこいい・登りたいと思う山やルート、綺麗だと思う景色、楽しいと思う夜の宴会、クライミングの一連の動作全般というのは国籍・民族の別なくほとんど同じでした。これは大きな発見でした。

 特にクライミングは他のスポーツとは違い、本質的には相手に勝つことや時間を縮めることを求めるスポーツではありません。登れたか、登れなかったか。それだけが問題で、そしてその結果について、本来は自己完結的なものであるべきだと思うので、それで名を売ったり賞を狙ったりというのは本当に山が好きな人はやらないのではないかと思います。
 それもあって、私は純粋に山が好きな人とはどこの国の人であっても気が通じる気がしています。

 そんなことを下山中てくてく歩きながら「やっぱりクライミング(登山)は素晴らしい!」と改めて思ったのでした。そして、この一連の違いを超えて協力する姿勢は、自分の仕事、即ち国際協力にも当てはまるなと。

 私の使っているロシア語のテキストには次のような例文があります。
С ней трудно находить общий язык.
(彼女と意見を一致させる(共通の言葉を見つける)のは難しい。)

 私にとっては彼女と意見を一致させる前の段階、即ち彼女を見つけることが大変ですが、幸運にも私はこの国で「山」というобщий язык(共通の言葉)を見つけました。この発見を是非これからの活動にも活かしていきたいなと思っています。 (S.S.)

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