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第258号  禁断症状

 禁断症状に悩まされている。子どもの時から動物が、それも大型なモノが好きだった。小学校の頃、両親に頼み込んで犬をかってもらった。「ヘンリー」と名前をつけた子犬は、我が家へ来た夜、親犬から突然分かたれた心細さで夜鳴きを続けた。明朝、眠れやしないと祖父が怒って、子犬は元の持ち主に返された。その日、一日、私も泣き続けた。
 庭仕事が好きだった祖父を気遣って、小鳥ならと買い与えられた文鳥2羽。真っ白な1羽は「ナポレオン」、グレーの桜文鳥「ぶんちゃん」。ある日、庭の高い木にかけておいた鳥かごが猫に襲われ、ぶんちゃんの片方の羽がちぎられてしまった。獣医は包帯を巻いてくれて、大丈夫。朝になるとぶんちゃんは死んでいた。泣きじゃくる私は、それでも学校に行かされて、一日中、泣いていたことを覚えている。
 とうとう中学の時、頑固な祖父を説得して犬を飼えることになった。「ルパン」はそれ以来、私の定期の写真入れや携帯の待ち受け画面に留まらず私の心を独占し続けた。ルパンの最期の日は朝だった。研修員との集合時間が迫っている中、もう立ち上がれなくなったルパンは尻尾だけパタンと振ってくれた。研修員と移動中、ルパンが死んだと連絡があった。その日も一日中、研修員がいるのにも係らず泣き続けた。

 当然のことだけれど、動物は私よりも先に死んでしまう。悲しい気持ちで心が痛くなることがわかっているのに、どうして動物をそばに置きたくなってしまうのだろう。ルパンとの別れの後、本格的に開発の仕事に従事することになり、海外を数年、時には数ヶ月で転々とする生活をしている。また動物を飼いたいという気持ちはずっとあるものの、ほとんどいない日本に待たせるのもよくないと我慢し続けていた。我慢し続けて9年。来年10年目が来たら、もういいか。

 最近、よく夢想する。グレーと茶色の犬を2匹飼って、「しょうが」と「まめ」と名づけよう。アルパカの飼育は可能だろうか?帰国することになったGIZの人が羊の貰い手を探している。朝、事務所に行った時、首に鈴をつけた羊がしゃんしゃん出てくるところを想像する。これは禁断症状だ。
 現在の赴任国では、ホテルに長期滞在している。そのホテルに最近、火薬探知犬が配置されることになった。ジャーマンシェパードっぽい、こわもての犬だけれど、あちら様も私が好きだとわかるようで、なでさせてくれる(仕事中の犬の邪魔はしてはいけないが、私のなでたい衝動もすごく、そんな理性は全くふっとんでしまう)。とうとう、開発業的流浪生活を辞めて定住するときが来たのかもしれない。ルパンが死んで10年目の来年は、私にとって節目の年になるのかもしれない。 (N.M.)

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