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第259号  夏の交響曲九番

今年も年末に向けて第九の合唱の練習会が始まりました。第九は60歳になったら一度歌ってみようと思い、65歳になるともっと歌いたくなるものだそうです。この暑い時期の練習は、皆で声を張り上げると3度は室温が上がり、かつ、参加者は年配の方が多く、例の節電もありで主催者の方は特に気を揉んでいらっしゃるようです。今年の合唱は例年と違った意味があります。巨匠と呼ばれるズービン・メータが4月に急遽来日されて、音楽の力で人々を勇気づけようと震災チャリティコンサートで渾身の第九の指揮を執ったのです。メータは地震当日、オペラ公演のため来日中でしたが母国から帰国命令が出て帰りました。このとき、「音楽の力で人々を励ます場面が絶対に訪れると信じている」と危機的状況における芸術の重要性を訴え、震災の影響で外国人指揮者の演奏会の多くがキャンセルとなるなか、このためだけに、再来日されたのでした。大勢の合唱団が必要となる第九をなぜやられたのかといえば、イタリアの諺「一度歌うことはニ度祈ること」。一回歌うことは二回祈ることに相当し、大勢の人で歌う第九を選曲されたのだろうと思います。われわれの第九の毎週の練習も祈ることになると思うのです。■合唱を指導されている先生は、二期会の方ですが、今回、改めて表情が明るいな、と思いました。多分、歌うときに情感をこめたりするためでしょうね。眉間の皺(しわ)などありはしない。合唱の練習を始める前にラジオ体操なんぞをして体をほぐすことから始めるのですが、次が目を見開く、とか、息を長く吐く、とかやります。姿勢も大切でチェックします。自分自身、日ごろから姿勢は前かがみ、滑舌(かつぜつ)が悪いと自覚しているところ。この年になってもどうしても直りません。油断すると走るときも前かがみになっています。金哲彦さんの「体幹ランニング」の本など読んでやってみていますけど。滑舌だって、「拙者(せっしゃ)親方と申すは、御立会の内に御存知の御方も御座りましょうが」で始まる「外郎売(ういろううり(*))」の口上も覚えてしまうくらい頑張った時期もあるのですが、知らず知らずのうちに母音Uの口の形が出来ていない。映画「英国王のスピーチ」の主人公国王ジョージ六世のような頑張りがもうひとつ足りないのかもしれませぬ。■うん、しかし、まあ、梅雨もさっさと明けてしまって酷暑の日々。この合唱の練習会は、無理せずにゆるゆると自分自身に沈殿してしまったものの矯正の時間と考えるようにしようと思っています。多分、戻ってしまうだろうけど、そのときはまた来年。夏の第九。いつもと違う第九です。 (A.T.)

(*)外郎売:歌舞伎十八番の一つ。「曽我物」の一幕が独立したもの。劇中の長口上が有名。

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