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第261号  愛というキーワード

16世紀の画家エル・グレコ。日本では倉敷の大原美術館にある一枚の絵が有名で、美術館の隣には50年前から同名のカフェもあるくらい代表的なコレクションであります。中央の人物の天を見上げ、ハッという感じの眼差しが特徴的な宗教色の強い絵を描く画家で、この眼差しから、他の絵を観てもグレコの絵だ、とわかってきます。好き好きありましょうが、そもそも彼の絵は日本にあることが奇跡とまで言われる方もいます。■彼はスペインで活躍した画家なのですが、もともとはギリシャ人。エル・グレコという名は、実は「ギリシャ人」という意味です。いわゆる、とおり名。絵にあるサインは長々と本名ドメニコス・テオトコプーロスでしていますが、いくらなんでも「ギリシャ人」なんて、もうちょっとなんとか別の名前をつけてもらえなかったのかな、本人はどう思っていたのかな、などと思ってしまいます。当時のスペイン人にとってギリシャ人が珍しかったのか、単に名前が長くて覚えにくかったのか。スペイン三大画家のゴヤ、ベラスケス、そしてピカソもみんな絵のサインは短いですな。■中南米に行った日本人は経験がありましょうが、知らない人から「チノ」と「チニート」とか呼ばれます。中国人、中国人ちゃん、という意味ですが、侮蔑のニュアンスがあるので、ちょっと悲しいですね。「ちょっと、そこの東洋人」という感じです。エル・グレコはどうしてそんなとおり名を受け入れていたのだろう、芸術家という個性の強い人が、その他大勢のような呼称を好むわけはないと思うわけです。「アノニマス(匿名)」っぽいとおり名ですよね。■自分ならどうするだろうと思いを馳せ、ふと思ったのが、流行っているソーシャルネットワーク。いろいろツールはあれども、実名の公表を求めるのがフェイスブックです。他はアノニマスでよろしい。どちらが好きですか?実名にして責任がとれる情報をお互いに交換するフェイスブック。匿名にしてリアルの世界から離れて楽しむのか。自分はこう思う、というのはやっぱり実名にしてこそ価値があるのか。言いたいことが言える匿名性がやっぱりいいのか。うーん。このフェイスブック、見知らぬ人が自分の正体を自由に知ることができるなんて、会社の誰かに知られたら…、などと懸念がいっぱいで日本ではなかなか広がっていないようですが、アクセス数はすでに世界一になっているそうです。■ソーシャルネットワークで皆を振り向かせるには、コンテンツが重要。そう考えると実名でも匿名でもいいのかも。人というのは、多分、両面ともに求める性質なのだろうとも思います。いま連載している「広報のチカラ。ソーシャルメディアの活用術」の執筆者のお一人であり、5月のセミナーのスピーカーでもある植原正太郎さんは、「愛情を持って接してください。自分の話を聞いてくれる人、自分に語りかけてくれる人に。」と仰っていました。キーワードは愛かもしれません。エル・グレコはスペインに来てからそれまでの凡庸から独自の画風を確立し、今では世界三大名画の一つとされる絵を描きました。こちらはキリストへの愛です。めざせ、ソーシャルネットワークのエル・グレコかしらん。 (A.T.)
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