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第280号  路面電車王国を見て思う

先週末は、国際協力人材セミナー in 中国にて、広島に行っておりました。当日のセミナーには晴天の中、多くの方にご来場いただきました。

広島市は、大田川の河口近くに発達したデルタの上にある町。調べてみると、意外にも、中世に入る頃から砂州が発達し、デルタが形成されていったとのこと。海と山に睨みを利かす交通の要として、城下町が形成されたのは、近世に入って毛利輝元の時代だそうです。現在、市街地はデルタ一帯に広がります。

そんな、広島の町で目につくのが路面電車。市内線部分で総延長19km。デルタの町を縦横無尽に走っています。また、運行系統が9系統もあります。まさに、広島は日本一の路面電車王国といえるのでは。運賃こそ、長崎の120円よりは高いものの、市内線なら150円と安いです。街中に立っていると、電車がひっきりなしに走っていて、お客さんもよく乗っておられます。「市民の足」として定着していますね。

そんな路面電車、かつて日本の都市の多くで活躍していました。ところが、1960〜70年代のモータリゼーションの流れで、「車の渋滞の原因」と嫌われ、次々と廃止されていきました。広島でも、その危機はあったようですが、それを乗り越えて、現在では市民の足として、なくてはならない存在になっています。この路面電車見直しの流れは、日本でも環境にやさしい公共輸送手段(次世代型路面電車システム)として都市計画に組み込まれつつあります。例えば、富山市では最近、新線が開通しました。広島はそのお手本のような都市といえるのではないでしょうか。何といっても、地下鉄よりは建設費用が安いです。

さて、日本のODAでも、そのような技術協力が行われていないか調べると、JICAでは、1994年と2000年にフィリピン国のマニラ・ライトレール(LRT)の増強事業をやっています。どちらかといえば、LRTは「地下鉄」に近いものの、地上を走る市内交通手段です。公共交通の整備は人口の規模に応じますから、マニラのような国の中心規模の大都市の場合、地下鉄やLRTの整備になるでしょう。ただ今後、より規模の小さい都市での公共交通機関を整備する場合は、広島のような路面電車か、あるいは専用軌道を走る東京の東急世田谷線のような電車が交通輸送手段としてあっているかもしれないですね。

以上のように、鉄道分野も途上国の都市インフラ整備において、日本の技術が生かせる分野です。今、大学で交通工学を学んでいる方、あるいは鉄道業界で働いている方は、そのノウハウを生かして、将来、途上国の公共交通や都市計画の専門家として国際協力に携わるという機会もあるかもしれないですね。 (T.N.)

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