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第286号  ウィンナーワルツ

 むかし、カルチャーセンターで社交ダンスを習っていたことがある。ワルツ、タンゴ、ルンバ、それぞれ面白く、また授業とは言え異性と共に踊ることが気恥ずかしかったが、社交ダンス用の靴まで購入して会社帰りのひと時を楽しんだ。面白いことに、初級のクラスなのに全然初めてではない上手な人がたくさんいる。中級のクラスに行けばいいのに行かない。それは、ダンスのステップを覚え、身に着けてしまうのがそうたやすいことではなく、間違えると相手に迷惑をかけるから、つい安全を考えて皆、上のクラスに行きそびれるのだ。まあ、これも世の常なのかもしれない。

 そんな中で、ウィンナーワルツを習った時のこと。ご存知と思うが、ウィンナーワルツは一つの方向にくるくる相手と回るように、みんなで輪になって踊っていくが、途中で踊る方向が反対になって、今度はその方向にしばし踊り続けるということを繰り返す。私は、その方向を変えるステップを習って唖然とした。右、左、右と足を交互に出していたものを、方向を変える時に同じ足を二度出すと、あら不思議、向かう方向が反対になってしまうのだ。

 これを知った時に脳裏に浮かんだのは、悪循環という言葉。悪循環を断ち切るにはどうすれば良いのかという命題をそのころひたすら考えていた。もしも、ウィンナーワルツの方向転換が宇宙の真理の一つであれば、一つの循環を反対に循環させるためには、今意識的に、もしくは無意識に次々とやっている中で、どこかで続けて同じことを繰り返せば、それまでの流れが反対に流れ始める、つまり悪循環は好循環に代わってしまうのではないか。

 すごいことを発見してしまったと思った。それからは、仕事、私事に拘らず、「ああ、悪循環だ」と思ったら、「同じステップをあえて繰り返す、同じことをあえてやってみる」と自分に言い聞かせ、渦中にいる悪循環の中の「同じステップとは何か」と必死に探した。しかし、そのステップが見つからないというか、はっきりしないまま月日が過ぎ、気付いた時には悪循環はいなくなっていた。

 今にして思えば、ウィンナーワルツで同じ足を二度続けて出すと、それまで来た道を反対に辿る(たどる)ものの、新たな道、新たな循環が拓けるわけではない。それよりも、悪循環を乗り越えるには時間が必要なのかもしれない。良いことは続かないし、悪いことばかり続くと思う時もあるけど、前向きに意志をもって働きかけていれば自分も周りも変わっていく。それが我々の住んでいる宇宙なのだろう。 (T.M.)

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