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第294号  「人」を育てる小さな一歩

久しぶりにアフリカに出張する機会がありました。出張先はいずれも近年のアフリカ経済の好調さを感じさせ、たいへん勇気づけられたのですが、ある国では空港で係官が入出国手続き中幾度となく手荷物や所持品に難癖をつけあわよくば小金を稼ごうという様子がいまだに見られました。空港はその国の最初の印象を刻む「顔」の役割を果たし、こうした出来事は国全体のイメージを大きく損なうことになります。その国のガバナンスや汚職問題への取り組み姿勢が末端の係官を通して浮かび上がるのです。

「国の発展は、最後は『人』のありようそのもの」、国際協力の業務に携わっていると、そう感じることがよくあります。

政府の国際協力事業では、課題解決のためさまざまな協力形態を組み合わせてプログラムとして取り組んできています。その内容は、公共事業を含めた大型の資金面での協力や、政策・制度面への専門知見の支援、ボランティアによる現場での協同活動などバラエティに富んでいますが、個々の協力事業の現場では、日本人専門家による相手国行政官への指導であったり、途上国行政官を招いての日本での研修であったりと、「人」を育てる小さな取り組みの連続です。

技術指導にせよ、研修にせよ、相手国全体から見たら、私達が直接関与しその人材育成を図れる対象はほんの限られた人数です。課題が何であれ、こうした小さな取り組みが、所属する政府機関全体、さらには、その国全体の発展に向けた取り組みとなるまでの道のりは、時に途方もなく遠く感じられることもあります。しかし、「『人』が国を造る」という思いは、そうした不安を打ち消し、私達の背中を押してくれます。

インドネシア、タイなどのアジア諸国で顕著ですが、これまでの長い協力関係を通じて日本人や日本社会に触発され、日本に学んだことを活かして自分達の国造りに取り組んでいる人々は静かに広がっています。スタートは一握りの取り組みからかもしれません。が、日本人に学び、日本社会を知ったこれらの人々が核となって、国の政策、制度、事業を改善する試みが始まり、やがて、部署を越えて課題に取り組み、組織が整備されるようになり、途中、人が入れ替わることがあってもその組織の記憶として受け継がれていき、最後には、確固たる能力(capacity)として定着、発展していく。「人」を育てることでこそ、各国がそんな道のりを歩んでいく姿を信じることができます。この道はもちろん平坦ではないでしょう。途中回り道をしたり、中休みをしてしまうこともあるかもしれません。でも、そんな時にも改善を進める原動力となるのはやはり問題意識を持った「人」の力です。

国づくりを進める小さな一歩、小さいけれど、「人」を育てるということの意義と可能性の大きさはいつも信じて、将来の国の発展を思い描きながら進みたいと考えています。(H.T.)

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