PARTNER 国際協力キャリア総合情報サイト PARTNERニュース・コラム(第313号)

第313号  見えているつもりになってはいないか?

アフリカのとある事務所、10年前に赴任していた国で、今回は2度目。旧知の現地スタッフ一番の古株の彼は、労務管理などに関わることでは、小生の良き相談相手であった。彼のアドバイスは、現地スタッフ間の複雑な相関図を踏まえたもので、日本人以上にプライドや心情面への配慮を強く意識させられることが多かった。

定年まであと数年、50代半ばの彼とはいつも冗談を言い合いながらも、時には厳しく、時には大真面目に議論をし、ぶつかることも多々あったが、それでも「いい感じ」でやってきた。彼の口癖は「僕は日本人に本当に感謝している。だから、遠く遥々来てくれる専門家やボランティアに対し、できる限りのことをしたい」と、何度も聞かされてきた。もちろん、待遇の不満や職場や家庭のストレスなど、内に秘めたものを多く抱えてはいるが、大方は、やる方なき憤懣を冗談交じりに笑いながらやり飛ばす。そんな彼とは、深いところまで通じ合っていると思っていた。あの場面に出くわすまでは。。

ある日、大使館での打ち合わせを終え、車に乗り込んだとき、運転席にいた彼は、携帯電話で奥方と半ば口論のような勢いで話をしていた。車は走らせはじめたが、まだしゃべり続けている。危ないからと車を道路脇へ止めさせ、会話の終わるのを助手席でまんじりともせず待っていた。それから待つこと3分。さすがにこれは喝を入れざるを得ない、と、「仮にも上司の前で家族と私用電話を続けているなど失礼極まりない、傍若無人ぶりも度が過ぎる!」などと諭した。途端、彼はぶち切れた。

「自分は今家族ととても大事な話をしているところなんだ!」「なんでこれくらいのことで文句を言われなきゃいけないんだ!」「結局俺たちのことを見下しているんだろ?」とまくし立てるばかりか、さらにはハンドルを両手で叩きつけ、わめき散らし、手の施しようがない状況になってしまった。
まさに茫然自失。。

しばらくして興奮から冷めたのか、彼は我に返り、何度も何度もひたすら謝った。この瞬間、自分もボーっとしてる中で「ああ、自分は彼(ら)のことを一体どれほど理解しているんだろう?」と思ったのだ。すると突然、自分が付き合って来た国の人々のことや、途上国における目の前で実際に起こっているさまざまな現象に対応することで培った経験や得た情報、理屈や時には気持ちで理解しているはずだと思っていた何かが崩れ去った。。

きっかけとしては少し極端な例かもしれない。だが考えてみれば、よそ者の我々が見えている世界など実は極めて表面的でしかなく、ボランティアのように村人と生活を共にしてさえ、相手を理解することは難しい、という当たり前のことに今さらながら気づかされた。それからは、物事を今までの尺度を一旦脇に置いて、初心に帰って見つめ直すようにしている。「見えないものが大切なんだ」と改めて気づかせてくれた彼に感謝したい。・・彼は元気でいるだろうか。。 (L.S.)

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