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第337号  亀の帰国

JICAでは常時400人弱の職員が海外で活躍していますが、いざ帰国が決まって困ってしまうのは、狭い日本の家には収まらない赴任中に買い揃えた家財道具などの処分ではないでしょうか。私の場合、帰国というと思い出すのは、1990年代に4年ほど家族とともに赴任していた北京勤務の時のことです。

頭を痛めたのは幼稚園生だった息子にせがまれて飼っていた2匹のミドリ亀をどうするかでした。体長3cmだった子亀も帰国の時には2倍以上に成長し、3年近くも一緒にいたので情も移っていました。近所の川に放そうかとも思ったのですが、汚い水の中では可哀想だということになり、乱暴な話ですが日本に持ち帰ろうということになりました。

問題はどのように持ち帰るかです。妻は身重だったので、私より1ヶ月早い前年の12月に息子とともに帰ることになっていました。そこで嫌がる妻を説得して彼女に持ち帰ってもらうことにしたのです。スーツケースに入れて預かり荷物とすることも考えましたが、飛行中氷点下となる貨物室の中で亀に万一のことがあるといけないと思い、機内に持ち込むことを私は主張しました。当然妻は難色を示しました。私はセキュリティチェックを通る時は亀をコートのポケットに入れて金属探知機を通れば問題ないと強弁し、妻はしぶしぶ了承したのです。

いよいよ妻と息子の帰国日となりました。当初の作戦通り彼女は2匹の亀をコートの両脇のポケットに入れて金属探知機をくぐると・・・・。無情にも「ブー」という異常を知らせる音がなり、携帯金属探知機を持った係官にボディチェックを受けることになりました。係官の携帯金属探知機が妻の体を上下させると、両側のポケット付近で「ブー」という音が鳴りました(亀は金属探知機に反応するようです)。

係官にポケットの中身を出せと言われた妻は両ポケットに手を突っ込み、俯いたまま亀を取り出しました。なにしろ身重の日本人女性のコートのポケットから2匹の生きた亀が出てきたのですから、係官も相当びっくりしました。係官は即座に没収すると宣告しました。当たり前ですよね。妻は恥ずかしさで頭の中が真っ白だったとのこと。息子は可愛がっていた亀が取りあげられるとわかると大声で泣き出してしまいました。すると、それを見た係官は小声で「わかった。わかった。早く亀をコートにしまいなさい」と温情を示してくれたのです。その後、亀は無事に日本の我が家にたどり着きました。それにしてもあの係官はよく許してくれました。今の北京空港では絶対無理ですね。検疫的には問題があり、とんでもないことをさせたと深く反省しています。亀は今も元気に我が家で暮らしています。体長30cm近くまで成長しました。 (M.W.)

注: ミドリ亀は、日本の検疫では届出対象動物ではなく、現物検査の対象ではありませんでしたが、「動物の輸入届出制度」のホームページで、制度の概要、手続き、必要書類などを確認した上で輸入動物管理室へご相談ください。

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