PARTNER 国際協力キャリア総合情報サイト PARTNERニュース・コラム(第348号)

第348号  支援、協力とは何からスタートする? ~“専門家”になりたいあなたへ~

私が初めて途上国現場での専門家として赴任した、まだまだ若き頃に、最初にぶつかったのが、具体的に、とある方針を検討する前提条件として、当たり前と思うことが、協力相手側にとって当然でないことがあり、それが故に相手との業務の段取り、議論などが思うように進められず、それが要因となって、次々に課題が雪だるま式に山積して行き、事業の進捗に支障を来したことがあります。

こうした理解の違いは一体どこから起きたのか、原則的には、その国(社会)やその国が歩んできた変遷(歴史)において、人と人との交渉の仕方はもちろん、個人の考え方、議論の進め方などに違いがあり、そのことを、私自身が理解していなかったことが障壁となっていたのではないか。

海外で専門家としての業務を行う時には、1つの組織(グループ)で1つの目標に向かって取り組む場合、多かれ少なかれ、関係者間の目標に向かう意識を摺合せ、お互いの役割分担を汲み取って、お互い補完し合い、相手の立場を慮ることが、小さくとも成果を生み出すための不可欠な成功要因になると思います。 このことは、初めての海外赴任を経て、さらにこの業務を長年続けて来る中、本当の意味での相手の意思、相手の考え方を聞き取ってあげることで、相手との協働の始点となるのだと気づいたときに思ったのでした。

途上国で先方のカウンターパートを指導する専門家は、「技術とはこうである」、「必要な考え方はこうであるから、身に付けろ」と押し付けることを優先する前に、より配慮すべきものがあるのではないでしょうか。先ずは関係する人たち(相手)がそれまで何を思い、取り組んできたのか、それまでに何を考え、悩んでいたのか、相手の立場を理解することから、スタートする必要があるのではないでしょうか。
私自身を振り返ってみると、相手の立っている土俵の状態を知った上で、次に進むことを念頭に置くべきでした。

つまりは、相手の自立心をうまく擽りつつ、自主的に解決方向性を生み出させてあげることが、遠回りのようで、最終的に近道になるケースが少なくないと思います。一生懸命専門家がたたき台を作って、それを相手に提示してコメントを求める方が話も早いですし、質の高いものができるかもしれません。でもそこを敢えて恣意的に期待される成果品を提示せず、そもそもなぜ問題があるのか、その解決には何が必要なのか、相手の意見を聞いてみることから初めてみては如何でしょうか。相手は何をすれば動くのでしょうか、それも持続的に、継続して立ち振る舞っていただくには、当事者自身が自身で、何か解決する方策を見出すこと、何か役に立つことが出来ることで、動機づけされると思います。その嬉しさがその方の次のさらなる解決に向けた検討、努力を誘発する、この『当事者自身が考える』と言う視点から、当事者自身が自分で考えるように「働きかけ」をすることが一番求められていると痛感したのが、専門家として現場での大きな収穫でした。

答えを与える(そのことで、相手が自問自答もせず、考えることを止めてしまう)のではなく、ベターな答えを導き出せるのは、当事者自身であることを気づいてもらうことが、より効果的な指導、助言が出来、良好な協力関係を作り上げる必須条件のように思います。

そうだとすれば、相手が何を考えているのか、どのような意見を持っているのか、相手を理解する、人の話(意見)を聞いてあげることが第1歩であり、その実践は、海外であろうが、国内であろうが、どのような場面においても、国際協力であろうが他のお仕事であろうが、同様に必要なステップではないでしょうか。そんな点で自身を振り返ることも重要ではないでしょうか。 (S.A.)

先月 来月