PARTNER 国際協力キャリア総合情報サイト PARTNERニュース・コラム(第362号)

第362号  国際協力を通じて本当の嬉しさを感じた瞬間

技術協力プロジェクト専門家として、ケニア農業省園芸試験場に赴任した私自身の経験をご紹介します。

 具体的な協力内容は、気候や土地条件もふまえ、ケニア国内で栽培されているマカダミアナッツの適正な品種を選定すること、苗木の繁殖方法を開発し、農業普及員などを通じた栽培技術を伝えることでした。

 当時栽培されているマカダミアナッツの樹、それぞれは”品種”と呼べる様な状態ではなく、1本1本異なる性格を有する状態で、放任栽培されているに等しい状態でした。
 100万本と言われる中から、品種の元となる”母樹”の選定のため、ナッツの大きさや品質、潜在的な収穫量の多少を選定基礎とし、”母樹”の性格を公平、均一に引き継いだ苗木を育成し、栽培試験を通じ本当に”母樹”と同じ結果(ナッツの大きさ、ナッツの質・食感、収穫量、栽培管理手法など)を示すのか確認するなど、長年の積み重ねが必要でした。

 現地適応性の試験地を見つける上では、プロジェクト関係者が各地の農家1軒1軒を訪問して、各お宅の庭先をお借り出来ないか、という交渉の苦労がありました。さらには、10年以上の継続的な成長記録を取り、収穫の状況を借主のご家族にも協力いただきながら、結果を取りまとめるという気の長い取り組み、積み重ねがありました。(私が赴任した 際は、そうした積み重ねの苦労の直後で、それぞれの地域に適正があるとされる候補品種が確定した時点でした。)

 そのような中、次のようなお話しを聞けたことが、関係者にとって、最も嬉しく、同時に、やって来て良かった感を共有出来た瞬間でした。

 試験のため、庭先をお借りしていた貧しい農家のお母さんから、
 「庭先をお貸しした際は、何が期待出来るものか解らないまま時間がたっていったけど、とある”母樹”(品種)から多くのナッツが収穫出来ることが解ったの。それにナッツ販売で稼げる(品質が安定したことによりナッツ加工業者が購入してくれる)ことも解ったの!」と言われました。
嬉しそうにお話ししてくれたお母さんから、さらに「子供が生まれる度に、1本ずつ植えておいたら、子供が学校に行く頃にはナッツが収穫出来、それが収入になって、学費を出せたことが嬉しかったの。」という言葉もいただきました。
 つまりは、当時のケニアでは、小学・中学校が義務教育とは言いつつも、地域によっては、教員の報酬や教材購入を保護者が支払わねばならない状況で、多くの子供たちは入学できない、或いは入学しても経費の支払いが出来なくなくなり、途中で退学しなければいけないという状況でした。

 その問題解決の一助として、ケニアの片田舎の小農の収入向上にしっかりつながっていることを、農家のお母さんからの言葉で実感出来たことは忘れられません。

 同プロジェクトの四半世紀にわたる数多くの専門家の継続的な活動の成果は、ナッツがケニアの輸出産品として、稼ぎ頭No.1になったのも協力事業の成果ではありますが、そうした大きな視点の成果はもちろんのこと、1人の農家から聞けた吉報もまた成果であると思います。
 支援とは何であるのか(最近でこそ、被援助対象者の一人一人に対するインパクト、成果を考えていますが、四半世紀前の協力プロジェクトでそうした視点が今よりも不足していたと言える時代背景の中 で)、考えさせられる嬉しい瞬間でした。(S.A.)
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