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第368号  荒野に道を作る

パキスタンに海外赴任をしていた時の話。

バロチスタン州という荒野の広がる大地で約100キロに渡る道を改修するというJICAの無償資金協力の現場に出張に行ったことがある。バロチスタン州はパキスタンの中でも危険度の高いエリアと言われている。カラチからプロジェクトサイトまでは、前後に警護の車をつけて走る。
ただただ広がる荒野をひた走ること約半日。
「うーん、このがたがたで車酔いしそう」と思っていたら、とある地点から走りがスムースに。道の状態でこんなにも違うものなのかと実感、とともに、「これからはソフトの協力でしょ」なんて思っていた自分を反省。
かつて、車より熊が通る数の方が多い、税金の無駄使いだと批判された道が日本にもあった。私も当初、同じ意見だったが、その浅はかさを反省。モノはクリック一つで移動するわけではない。長い長い道のりを、トラックの運転手が運んでくれているのである。そして、その道が舗装されていれば、その分早くトラックは走れ、燃料費も時間も節約できる。物事は大きな視点でバランスよく見なくては・・・
と思いをはせつつ、ようやく到着した現場には、荒野の中にぽつねんと日本人用宿舎の平屋が建っていた。某建設会社の方が数名そこに常駐し、5年弱に渡り道路の改修を行っていた。周りには防御用に壁を張り巡らし、何名もの警備員を配置して、24時間体制の警護の中暮らしていた。

改修していた道は、アフガニスタンへと続く道。大きな大理石や、明らかに過積載のトラックが走っていた。アフガンへ物資を運ぶNATO軍のトラックもそこを通る。
ある日、測量をしていたら、いきなり人が歩いて来て、殴りかかられた。聞けば、「その双眼鏡で俺の家や妻を見てただろう」とのこと。また、別のある日には、村の人たちが宿舎を囲んで、「雇い続けてくれ」と抗議を受けた。「工事はいつか終わるものだから雇い続けるのは無理だと説明しても納得してくれなくて」と現場監督はそれを笑い話として話してくれた。だが、その時は身の危険を感じただろう。その辺の村から人を雇い、働かせるのはさぞかし骨の折れることだったろう。娯楽の全くない世界の果てのような地での気分転換は、日本から持ち込んだ食材や、本、漫画、DVD、そして衛星で受信するNHK。そんな環境の中で黙々と道を作っている。タフだなぁ。と、そんな語られない裏の顔にしみじみ思いをはせた。

私にとってはインフラの大切さが身に染みたこの出張。
だが、現場監督は言っていた。「インフラも大切だけど、教育も大切。教育がないと、道路の改修が終わって、雇い続けるのがムリっていうそういう話さえ通じなくて、住民に囲まれちゃう、とつくづく思いましたよ」と。
国際と名のつくものだけが国際協力の仕事ではなく、むしろそうではない仕事の方がより現場で、ずっと深く世界に食い込んで活躍している。いろいろ考えさせられた出張だった。
そしてこの出張の総括は、本件に従事していた某建設会社のキャッチコピーとともに。
「荒野に道を作る」地図に残る仕事をしている彼らは、かなりかっこよかった。(H.S.) 
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