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第374号  ソーシャルなビジネスとは?

一般財団法人 国際開発機構(FASID)では、国内外の国際開発関連分野の大学院で学ぶ日本人人材に必要な経費を支援することにより、 開発援助分野における高度なレベルの人材育成の促進に資することを目的として、奨学金プログラムを実施しています。 本稿では、2013年度FASID奨学生による寄稿をご紹介します。
 

 

2013年度(2014年度支給開始)募集情報はこちら
プレスリリースはこちらをご覧下さい。

一般財団法人 国際開発機構(FASID)

2013年度FASID奨学金プログラム採用
名古屋大学大学院国際開発研究科博士後期課程   一栁 智子

研究テーマ
  BOPビジネスと企業との開発パートナーシップ:
  企業との開発パートナーシップを通じたコミュニティ農業開発
  —ケニアにおける農業関連資機材販売ビジネスとの連携を事例として—

 

 

ソーシャルなビジネスとは?

 民間企業が行うビジネス(市場を通じた経済活動)が開発途上国における貧困問題など開発課題の解決に効果的なアプローチであるとして国際社会から注目を集めています。とくにC.K.プラハラード、S.L.ハートらが所得ピラミッドの底辺の人々(Base of the Pyramid : BOP)を対象に、企業利益と開発課題解決の両立を図るビジネスは可能であるといったビジネス論を展開して以来、BOP層を対象としたビジネスが日本でも活発に論じられるようになりました。このBOPビジネス論が提唱されてから10年あまり経ち、この間BOP概念の発展に伴って、ビジネスに関わるアクターやビジネスモデル、パートナーシップのあり方は多様化しつつあります。BOP層を消費者として位置づけるビジネス形態から、生産者、流通・小売業者、従業員、企業家など、BOP層をビジネスパートナーとし、NGO等と協力してBOP層とともに行うビジネスへ、ビジネスに関わる人々や地域コミュニティの参加をより意識したビジネスのあり方が提示されるようになりました。しかし、開発課題解決に貢献するとされるビジネスの最終目的や定義、意味づけは、関わるアクターの立場によって異なります。では、様々な立場のなかで、ビジネスの対象となる現地の人々は、実際どのように企業の商品、サービスを自分達の日々の生活のなかに取り込み、ビジネスと繋がっているのでしょうか。私の研究は民間企業が行うビジネスに影響を受ける社会、地域、人々を中心として、貧困課題に対するビジネス・アプローチを実証研究しようとするものです。ビジネスの介入によって起こった人々の意識・行動変容は最終的にどのように現地の人々や地域コミュニティのエンパワーメントの発現に繋がっているのか、そのプロセスを明らかにしていきたいと考えています。
 上記のような視点を持ち、今年度は国際開発機構(FASID)奨学金プログラムの支援を受け、ケニアにおいて民間企業の介入度の異なる二つの事例の現地調査を進めています。ひとつは、温室栽培機材販売を通じて国際NGO等と協働しながら小規模農家の生産性向上支援を行う園芸会社アミラン・ケニア社の事例、もうひとつは養蜂バリューチェーン構築に重点を置き、小規模農家に所得向上の機会を提供する社会的企業ハニー・ケア・アフリカ社の事例です。
 アミラン・ケニア社とNGOの協働事例では、HIV/エイズの女性患者とその子供達を支援するNGOにインターンとして滞在し、プロジェクトの現場を調査する機会を得ました。当該プロジェクトでは、アミラン社は自社の製品をNGOに販売することに力点を置き、NGOがプロジェクト全体のマネジメントを担い、HIV/エイズ患者達を含む地域コミュニティの収入源として温室栽培農業をコミュニティに導入していました。地域コミュニティ側は温室栽培野菜の販売による収入などプロジェクトからもたらされる便益を認識することによって、HIV/エイズ患者達をコミュニティに受け入れるという関係が見受けられました。一方、後者のハニー・ケア社の事例では、ハニー・ケア社が事業全体のマネジメントを担っていますが、養蜂箱設置等にかかる資金面についてはマイクロファイナンス機関と提携し、ビジネスの供給面に携わる小規模農家やコミュニティとはメンバーシップ契約を結んで、お互いの利害関係が一致するところで共に蜂蜜の生産を伸ばしていました。ハニー・ケア社は長年にわたる地域コミュニティとの関わりのなかで自社の提携関係を築いてきています。
 今後、アフリカ市場に参入しようとする日本企業や、アフリカ諸国と企業を結ぶ人材が増えていくと思います。日本企業が途上国でビジネスを展開する際、現地パートナーと良好な関係をどのように築いていくか、その関係を一過性ではなく長期間、持続的に保ち、最終的に企業利益(ビジネスの経済的持続性)と開発課題解決(開発効果)の双方を成立可能にさせるためにはどうすれば良いか。それら答えはビジネスを展開する社会をより意識し、現地の人々の考え方や地域社会を深く理解するなかで見えてくるのではないかと考えています。

【参考文献】
  菅原秀幸・大野泉・槌屋詩野(2011)『BOPビジネス入門』中央経済社.
  ハート,S.L.&ロンドン,T.(2011)『BOPビジネス市場共創の戦略』(清川幸美訳)英治出版.
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アミラン・ケニア社のグリーンハウスと温室栽培トマト

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ハニー・ケア社と提携してはちみつ生産を開始するコミュニティ

 
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