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第402号  世界遺産 富岡製糸場とJICAの養蚕協力

2014年6月、「富岡製糸場」が世界遺産に登録されたニュースを聞き、ふと17年前にフィリピンで担当した養蚕専門家を思い出した。あまり知られていないが、「富岡製糸場」とJICAの養蚕協力は浅からぬつながりがあるので、ここで紹介したい。

Web上で調べた限りでは情報が無く、正確な情報であるか不安だが、1997~98年頃、フィリピンに片倉工業社(前身は富岡製糸場)から製糸機が届いた。同社は、1987年には操業を停止しており、専門家を中心にして、使わなくなった製糸機を活動現場のフィリピンで活用させてもらうという交渉をし、JICAは、輸送費用と短期専門家の費用を持つ、という共同事業を行った。そして、機器の試運転と指導のために、同社の元社員の方が短期専門家としてフィリピンに来てくれた。

“会社としては、もうけにならないけど、自分たちが大切に使ってきた機械が、フィリピンの人たちの役に立てれば、こいつらも喜んでいることと思います。”と、まるで我が子のように製糸機を例えながら、笑顔で語ってくれた横顔を今でも覚えている。

私は、今回調べたことで初めて知ったのだが、片倉工業社では、1985年に富岡製糸場を停止し、2005年に富岡市に寄贈するまでの18年間、「売らない」「貸さない」「壊さない」という気持ちで保存したそうだ(*1)。それは、明治以降の日本の近代化の原動力となった製糸業の役割を認識し、建物が持つ歴史への畏怖の念から、その原型を残すことが重要であると考えたためだという。そのことを知ったとき、そういった考えがあるからこそ、フィリピンへの協力を快く引き受けてくれたのだ、と思い、改めて感謝の念がこみ上げてきた。

その時専門家や片倉工業の方々がまいてくれた種は、フィリピン国内で花が咲き、現在でも成果が続いている(*2)。専門家は、フィリピンでの活動を終えた後、インドへ種をまきに渡り、現在では技術協力の成功例として紹介されているほどになった(*3)。

この夏、ぜひ世界遺産となった富岡製糸場を訪れ、フィリピンやインドに思いを馳せてみてはどうだろうか? (T.I.)

【参考ページ】
(*1)「片倉工業と富岡製糸場が歩んだ歴史」
(*2)「ネグロスの未来を紡ぐシルク糸」MONO語り、JICA’s World 2012年4月号」
(*3)「シルク大国インドに継承された日本の養蚕の技」
 
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