PARTNER 国際協力キャリア総合情報サイト PARTNERニュース・コラム(第407号)

第407号  算数プロジェクト

ちょうど25年前、JICAの青年海外協力隊事務局で中米のホンジュラスを担当していた時、同国では教育分野の青年海外協力隊員(以下、協力隊員)による「算数プロジェクト」が行われていた。当時、ホンジュラスでは小学校の教師の指導力が大きな問題となっており、協力隊員たちは現場レベルで様々な課題に直面し、試行錯誤しつつも現地の先生たちと共に精力的に活動していた。
 それから10年少し経過し、教育分野の技術協力を担当する部署で勤務していた時、ホンジュラスの教育省から「算数指導力向上プロジェクト(PROMETAM)」という名称でプロジェクトの要請が出された。その内容は、初等教育の質向上のため、算数教育の教材(教師用の指導書と生徒用の練習帳)を作成するとともに、同教材を使い現職教員への研修を実施するというものだった。
 この指導書と練習帳の作成は、「算数プロジェクト」を通じ協力隊員が長年に亘り試行錯誤を重ねた結果、この方法であれば現場の教員にも受け入れられ授業の質も改善するだろうという感触を得、辿り着いたアプローチだった。すでに協力隊員たち自身の手で1~2学年向けの教材が作成され、それを見たホンジュラスの教育大臣が「ぜひ全学年に作りたいので協力してほしい」と要望があり、プロジェクトの要請となった。
 その後、同案件は正式採択され、プロジェクトの立ち上げに向けて取り組むこととなった。派遣される専門家を担当部で探したところ、最終的に選ばれた3人の専門家は、なんと全員、過去ホンジュラスへ派遣された教育分野の協力隊員経験者だった。また、教材作成と共に現職教員への研修にも協力するため、草の根レベルでの活動が得意な協力隊員が各地域で行う教員研修を担当することとした。
 こうして、協力隊員のグループによる活動が時を経てプロジェクトへと発展し、そのプロジェクトへ派遣される専門家は全員協力隊の経験者であり、更に現役の協力隊員も参加するという、まさに協力隊事業から生まれた珍しいプロジェクトがホンジュラスで始まった。
 その1年後、奇しくもホンジュラス事務所勤務を命じられ、今度は現場で同プロジェクトと関ることとなった。その後、専門家、協力隊員、ホンジュラス側関係者の真摯かつ献身的な努力により、作成された教材は同国の国定教科書・指導書となり全国に配布され、また、ホンジュラスのみならず中米・カリブ7か国を対象とした広域のプロジェクトへと発展した。
 現在、専門家を派遣する形でのプロジェクトの多くは終了し、各国では再び協力隊員が中心となり教科書と指導書が正しく使われるよう、新たな形での「算数プロジェクト」が始まっている。 (S.T.)
先月 来月