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第425号  鉄道技術移転に携わって

20年近く前、中国北京で勤務していた時に日本の鉄道技術に関する中国政府への技術移転に関わりました。

当時の中国政府の相手側官庁は国務院鉄道部(日本風には鉄道省)。当時の鉄道部は、政策・法令から施設建設、実際の運行まで全てを直轄して担当しており、日本の戦前の鉄道省に相当する巨大な権限(と更には利権)を持つ存在でした。

日本政府への主な援助要請内容は、主として在来線鉄道の高速化。当時の中国の鉄道はスピードも遅く、輸送効率及び安全性に問題を生じていました。
ただし、鉄道の高速化というのは、単に車両を高速化するのみではなく、それを支える鉄道施設(土木設備、電気・信号・通信システム、保安システム等)や運航体制の整備、人材育成などの総合的な対策が必要となります。
(日本は、新幹線の導入に際して、高速化及び安全性の確保を図るため、専用線方式、動力分散方式、ATCなどのシステムを計画的に採用)

当時の日本側は、運輸省鉄道局が取りまとめ役となって、日本鉄道建設公団、JRグループ各社、関係団体、関連メーカー等が協力して真摯に協力していたものと記憶しています。なお、今でこそ、尖閣諸島の問題があり(もちろん当時既に存在していた問題ですが、表面上問題化されていなかった。)、「中国へそんなODAを供与していたなどけしからん」と言われそうですが、当時は政治的、経済的、外交的にも「日中友好」全盛の時代、しかも鉄道分野の支援は1980年の対中ODA開始時点での中国側の優先分野の一つだったのです。

その後、時を経て四囲の状況も大きく変わり、当該分野の日本政府の協力も数年前に停止され、今や、周知のとおり、中国自身が、新幹線に相当する高速鉄道までも「自力」開発し、更には海外へ輸出しようとする時代となりました。

これを日本政府の援助や民間ベースの協力が効果を挙げたものと評価するのか、伝統的なブーメラン効果と称するのか、はたまた単に中国の経済成長に付随する事象と見るのかなどは、意見が分かれるものと思います。

なお、2011年には鉄道部長(鉄道大臣)の汚職や浙江省での高速鉄道追突脱線事故が発生し、その後の中国政府内の権力闘争(と言われています)なども受けて、鉄道部も、昨年、別の官庁である交通運輸部(交通運輸省)にその外局である国家鉄路局として格下げ吸収されると共に、現業部門は(債務と共に)中国鉄路総公司として「分割民営化」されることになりました。
今後、今に至る日本の国鉄の民営化と同様の道のりを歩むことになるのか、将来の中国的社会主義の在り方も含め、興味深いものが有ります。(T.O.)
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