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第426号  兵法三十六計

 私は以前JICAの中国事務所に駐在勤務した時期がありました。最初は農業分野の技術協力プロジェクトや無償資金協力の案件を中心に担当しておりました。農業案件は特に地方案件が多いという特徴がありました。中国側のカウンターパートも非常に多岐に亘っていて関係者も多かったものですから、専門的な農業分野のナレッジの勉強優先というよりは、まずは人間関係、と言いますか信頼関係の構築に腐心した記憶があります。

 中国は4千年の歴史といわれ、様々な先哲の思想がありますが、なかでも『兵法三十六計』は学生時代に多少触れる機会があったので、中国勤務になった当時、あらためて『三十六』の記憶を辿ってみました。その内容から結論付けられたことは、モラルや道徳だけでは「百戦錬磨」の中国側カウンターパートとの深い信頼関係を構築するのは難しく、『三十六計』の駆け引きや戦略についても少し頭の隅で意識してみることも価値はあるということでした。

 ここで『兵法三十六計』のひとつ、「借刀殺人(jie dao sha ren)を挙げさせていただきます。⇒『敵が我に対して攻撃意図を明らかにしたときに、同盟国が対応をまだ決定していなかったなら、この同盟国を引きずり込んで敵を攻撃させるよう仕向けよ。我が方の労力を払うのでない・・・。(ウィキペディアより引用)』

殺人という文字を見るとドキッとしてしまいますが、私の場合「殺人」という意味は決して荒っぽいイメージではなく、第三者にこちらの意図で動いてもらうことにより、信頼関係を構築したい人の心を動かすという作戦と解釈しました。

 当時仕事上関係のあった中国側の行政機関はいくつかありましたが、なかでも「農業部(日本の農林水産省に相当)」との信頼関係の構築は当初最も意識した記憶があります。地方案件が多かったものですから、まずは中央政府だと思いました。「農業部」の方々との人間関係の構築は、中国だけに、まず宴会設定で胸襟を開いていただく作戦を、勿論自費開催も含めてフルに活用しました。
 その後半年ほど経過して、いよいよ地方出張が続いてきました。現地の農業行政機関(日本の地方農政局や地域センター等に相当)を訪問した際には中国得意の?宴会、姑息な手段と言われればそれまでですが、その際例えば「中央の誰々があなたのことを褒めていた(実際に地方出張前に「中央」に裏取り確認実行は必須)・・」等、要は「中央」の「刀」を借りて「地方」の心を動かす作戦でした。
この作戦を繰り返すごとに、「中央」と一部「地方」の信頼関係自体が芳しくなく苦心した場面もありましたが、逆に「地方」の「刀」を借りて「中央」の心を動かす応用編も出てきたり、本当に色々と勉強の連続でした。

さて今は日本にいるわけですが、この時学んだ「刀」の使い方、公私の区別なく「的中」することもありますが、やはり試行錯誤の連続です(苦笑)。(Y.I.)
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