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第465号  ミャンマーで「洗濯機」を使うということ

ミャンマー人の夫を持ち、日本企業のミャンマー進出支援を行う私は、年に数ヶ月間ミャンマーで生活します。夫の実家はヤンゴンでホームセンターを営んでおり、一階に店舗、中二階に従業員用の住まい、二階に店主一家である夫の家族の住まいがあります。私は二階で家事をしたり、ライター業務をしたり日本から来た視察のお客さんを案内したりしてミャンマーで過ごします。

さて、ミャンマー人は洗濯機にあまり親しみがありません。ミャンマーの実家の洗濯機は、二階キッチン横のバスルームにあります。しかしほとんど使用されません。理由は3つあります。1つ目は、停電で洗濯機が止まる、2つ目は、電力が弱くて洗濯機が早く回らない、そして3つ目は、洗濯機の使い方が分からない、からです。

家政婦さんは「私は洗濯機のプロじゃないですから」と言い、洗濯機の横で大量の洗濯物を手洗いしています。私は家政婦さん(40代)の負担軽減を考え、彼女に洗濯機の使い方を教えました。洗濯機は使用中にふたを開けると、洗濯が止まってしまうことがあります。彼女は洗濯機の動きが心配で、使用中に頻繁にふたを開け閉めします。とうとう洗濯機は、ふたを閉めても動かなくなりました。

「手洗いのほうが、洗濯物の汚れがよく落ちるんだから」

こう言って、止まった洗濯機に見向きもせず、再び手洗いで洗濯を始める家政婦さん。いつでも電気が通っている日本社会の生活様式をミャンマーであてはめようと考えた私はおごっていました。電力が弱い場所では、洗濯機はいつ止まるか分かりません。彼女にとって、文明の利器はやっかいなお荷物なのです。

他のミャンマー人のご家庭にも洗濯事情を尋ねたところ、「ウチの母は、洗濯機はわけのわからない、怖いものだと言います」との話。どうやら若者とは言えない世代の方々にとって、洗濯機を使いこなすのは大変なようです。


さて、しばらくたっての話です。その後、私はミャンマーの家庭内でのアドバイスはやめて、おとなしく自分の仕事をしていました。一方で家政婦さんは洗濯機に洋服を入れ動かそうとしています。何とかスイッチを入れて、ふたを開けたまま動かしています。30分ほどして、家政婦さんに呼ばれました。

「あなたは洗濯機のプロですから」

動かなくなった洗濯機を前にして、家政婦さんが「洗濯機を使って自分の仕事をラクにしたい」と感じていることを知りました。少数民族州の農家から都市ヤンゴンに出てきた彼女が、40代にして始めて見た洗濯機を使いたいとするチャレンジ精神を感じるとともに、私のおせっかいなアドバイスで、彼女の考え方が少し変わったことに面白さとおかしさと嬉しさを感じたのです。

日本ミャンマー支援機構株式会社 
ライター・深山沙衣子
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