PARTNER 国際協力キャリア総合情報サイト PARTNERニュース・コラム(第468号)

第468号  スエズ運河平和橋を訪ねて

今週(2016年9月)、スエズ運河平和橋の視察に行きました。
同橋は日本の無償資金協力を受け、エジプトの最貧地域であるシナイ半島とエジプト本土を結ぶ、平和の架け橋として、2001年に建設されたものです。 
シナイ半島の北部は中東戦争の舞台となったこともあり、そもそもそれなりに貧しいエジプトの中でも特段貧しく、発展から取り残されてきた地域でした。
そんなシナイ半島の経済活動を活性化させるべく作られたのがこの橋で、エジプトと日本の協力のシンボルとなってきました。

しかし、アラブの春以降、治安の懸念から橋は長く閉鎖され、一般利用は禁止されてしまっていました。日本でもエジプトのテロのニュースがたまに流れますが、その殆どはこのシナイ半島での過激派によるテロであることを考えると、この閉鎖も納得はいきます。

そんなスエズ運河架橋、昨年末に漸く一般利用が再開しました!
それに併せて、建設から15年が経った施設の安全性に問題がないかを点検・修理するという技術協力をJICAは今年1月から行ってきました。結果的には大きな問題も見つからず無事に協力が終わり、今後はエジプト側が学んだことを活かして自分たちで修理を進める予定です。

いやー、良かった良かったと思って視察していたら、この橋の愛称である「ムバラク平和橋」が掲げられた記念プレートの「ムバラク」という文字に上から線を引かれているのを見つけました。対面にも同じプレートがあるのですが、そっちはそのまま。やはり作業員の中にも親ムバラク、反ムバラクといった政治的なイデオロギーの差があるということです。
また、橋から下を眺めると、シナイ半島側と本土側の開発状況は大きく異なっており、大きなビルも見られる本土側に対して、シナイ半島側で目立つのは塩田のみです。とても橋一本隔てているだけとは思えませんでした。
私はまだこの複雑な国・地域・社会の表面しか見ることができていないと、改めて気づかされ、考えさせられました。
(ちなみに、現場の作業員の中には、この橋の下で俺の爺さんがイスラエル軍を奇襲して撃退したんだといった自慢話をする方もいるらしいです。)

シナイ半島の治安はまだまだ安定したとは言えない状態ではありますが、少しでもスエズ運河橋の再開による経済活動の活性が人々の生活向上につながり、憎しみの連鎖・社会の不安定化が断たれていくことを祈ります。(JICAエジプト事務所 K.I.)
ユーザが追加した画像ユーザが追加した画像
先月 来月