PARTNER 国際協力キャリア総合情報サイト PARTNERニュース・コラム(第471号)

第471号  シリーズ 国際協力の第一線(団体編)~リーダーシップ教育は国際協力を加速させる原動力! ~

リーダーシップ研究大学「進化する教科書」チーム 小川 優

法律を学びながら人権擁護のために国際協力をしてきた私が、リーダーシップ教育に携わるようになったのは 一人の社会活動家としての後悔と成功体験からでした。

私は大学時代に何か国際協力したい!と思い、カンボジアの子どもたちに語学を教える学校インターンシップに参加しました。その学校は、効果的なクラス編成も、貧しくて毎日学校に来られない子どものサポートもしておらず、さらにボランティアできている学生は遊び感覚で来ている様子。「国際協力ってこんなんでいいの?…いや、なんとかしなきゃ!」と決意した私は、他のインターンや現地教員を説得。児童支援やクラス編成、ボランティアの研修改善に取り組みました。限られた時間の中でしたが、提案事項がなんとか終わり、「やってよかったー!」と仲間は大満足の様子。しかし、「“ほんとうの貢献”に、もっと早く、もっとうまく皆を巻き込んでいれば、さらに素晴らしい結果を残せたのではないか」と私は少し後悔していました。

そんな心のモヤモヤが取れない私が参加したのが、大学のリーダーシップを学ぶサークルでした。リーダーシップを学んでいく中で、どんな指示をすればより効果的な行動を促せたのかを知ることができ、さらに、カンボジアでの体験は私が思っている以上にうまくいっていたことが分かり、少し自信をもてたのです。特に“状況対応リーダーシップ®”の理論は、「誰でも使えそう!」と私が直感したもので、後に次の活動拠点である南アフリカで大いに役立ってくれたのでした。

さて、南アフリカで私がしたのは、ファンドレイジング。「国際協力には興味があるけど、何をしたらいいのかわからない」という留学生が多いことに気づき、この状況と南アフリカの貧困を改善するため、ファンドレイジング学生団体を創ることに。最初は一人でした。人権と南アの子どもたちの未来について訴える中で、やる気も経験もほとんどゼロですが、学生6人が集まりました。国際協力経験があるのは私だけだったので、メンバーは私に頼りっぱなしで、「なんでこんなに自立してくれないの~」と私はいつも落ち込むばかりでした。この状況を打破すべく、私が使ったのが前述の“状況対応リーダーシップ®”モデルでした。

このモデルは、とても簡単に言うと、相手(フォロワー)のあるタスクに対する経験ややる気に合わせて、私(リーダー)が相手への指示の仕方や態度を変えることによって、タスク(課題)を達成できるようにしていくというものです。
例えば、私のチームには、会計についてとても詳しく、会計のことなら、どこか自信があるようなやる気ある女性メンバーがおりました。私はどんな指示を出す時も、1から10まで説明する癖があるのですが、私が彼女に会計の仕方について詳しく説明してしまうと、彼女にとっては「わかってるから説明しなくていい。好きにさせてよ」というようにモチベーションが下がってしまいます。ですので、私は「これは、あなたの得意分野だし、あなたがよくできるっていうことも知っているから、任せるね」と背中を押すだけにしてみると、彼女はのびのびと自分に課されたタスクに取り組み、達成したのです。
一方、ある男性メンバーは、とても人から好かれそうなキャラだったので、ファンドレイジング・イベントの広報をしてもらおうと思い提案しました。彼は、今まで一度も広報活動などしたことがなかったので、「え~。できないよ!」と全く経験値もやる気もゼロいう反応でした。しかし、彼の長所を含め説得した結果、「やってみる!」とやる気をみせてくれたので、広報活動とは何で、何を使って広報をするのか、彼に達成してほしいタスクは何なのか、詳しく丁寧に教えていきました。さきほどの女性メンバーとは違って、私が彼に「じゃあ、任せたよ」と言ったところで、彼はその広報活動におけるタスクを達成できるとは限りません。そうなると動機づけもされないので、活動がいやになってしまいます。ですので、ここでは1から10まで説明することがリーダーである私がとるべき行動だったと言えます。

このようにメンバーのやる気や経験をもとに、どういう役割を任せ、指示をするべきかを分析し実践していくと、みるみるメンバーがそれぞれの役割に自信をもち、最高に活発的なファンドレイジング活動をできるようになっていったのです。メンバー一人ひとりの大成長の結果、集まった寄付金は、貧困の方々の経済的自立コミュニティを3つ建設できるほどになりました。(この経験は「12のリーダーシップ・ストーリー、課題は状況対応リーダーシップ®で乗り切れ」(生産性出版、2016年刊)に掲載しています。)

そんな清々しい気分の中帰国すると、友人の薦めで、リーダーシップ研究大学の研究員として進化する教科書チームに参加させていただけることに。そのチームは、“状況対応リーダーシップ®”を国際協力などの様々な場面で、誰もが実践できるように教科書を出版するチームでした。そのチームでの活動は、私にとって、一人でも多くの国際協力に志のある方にリーダーシップを学んでもらうことを通して、より効果的な国際貢献を促し、より多くの人々を救っていく意義のあるプロジェクトでした。いざプロジェクトが始まってみると、最年少であるという不安も吹っ飛び、「なんて自分らしく伸び伸びとやっていける組織なんだろう!こんなに一人ひとりがリーダーシップを発揮している組織は見たことがない!」と感動する日々。チームのメンバーは、リーダーシップを勉強し実践してきたメンバーだったので、それぞれが自分の役割というものを強く自覚し、互いに協調しながら議論を進めていくことができました。一方、このプロジェクトで難しかったのは、リーダーシップに関心を示している主な層がビジネスマンであるということ。出版過程で、リーダーシップのワークショップも開催してきましたが、ほとんどの参加者がビジネスマン。しかし、その中でも、国際協力に携わってきた、また携わりたい参加者もおり、彼らが“状況対応リーダーシップ®”を学び、「これだ!」と感動する姿を見るたび、このプロジェクトが国際協力を加速させる原動力になっていると実感せずにはいられませんでした。

現在は、より多くの国際協力を目指す方々へ「リーダーシップの重要性」のアピールを進め、リーダーシップ理論を実践ができる人材育成を進めていけるよう、頑張っています!「もっとできた」と後悔しない、いつも最大限に仲間のポテンシャルを引き出していけるリーダーシップ。ぜひ皆さんにも勉強・実践をしていただき、最高の国際協力史を皆さんの行動で刻んでいっていただけると嬉しいです!


状況対応リーダーシップ®は㈱AMIが管理する登録商標です。
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