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第474号  シリーズ 国際協力の第一線(団体編)~疑心暗鬼という病~

国際協力の現場では、知らない間に疑心暗鬼に陥ることがある。

青年海外協力隊員としてガーナに派遣されて間もない頃。事前に想定はしていたものの、やはり会う人会う人に「お金が欲しい」と言われることに疲れが溜まって身構えてしまっていた。

ある時、家の前で洗濯をしていたら、いつも優しく接してくれるお隣さんが声を掛けてきた。
笑顔で応えたら、次に言われたのが「買い物に行くから50ペセワちょうだい」。

日本円で15円程の大した金額ではないけれど、信頼していたおばさんにまでそう言われるのか、とショックを受け、私はその場でさめざめと泣きだしてしまった。

英語が喋れないおばさんはオロオロとし、現地語がまだおぼつかない私は自分の感情が説明できずにただただ泣き続けた。すると心配したご近所さん全員が集まりだす。私はとりあえず一度座らされてお茶を飲まされ、「彼女はただからかっただけで悪気はなかったんだよ」と諭された。事実、おばさんはお財布を持ってきて見せて、別にお金に困っていたわけではないと何度も説明された。
(青年海外協力隊時代、ガーナにて)
(青年海外協力隊時代、ガーナにて)
疑心暗鬼で気持ちが固まっていなかったのなら、もう少し気持ちに余裕があったのなら対応が違ったのではないかと今でも時々振り返る。


さて、青年海外協力隊の任期が終わり、仲間と共に起業してケニアでものづくりをする事業を始めた。

私が日本にいるときのケニアスタッフとの連絡手段はチャットとメール。あれこれと細かくチェックを入れる中で、やはり時々不透明な情報が入ると不安になる。ルール通りに動いていないのではないか、余分な経費が使われているのではないか、と。

ある時、スタッフから膨大な数のバスケットが届いたと連絡が来た。柄やデザインなど細かく聞いてみると、私が注文した覚えのない柄が混ざっている。また、疑心暗鬼に陥ってしまう。
「私はその色合いで注文したことがない。」「誰の指示でそれが届いたの?」「違う場所からの注文を混ぜてきたのでは?」など、言いたい放題。

現場は混乱して事実確認を急ぐが、バスケットの生産者も発注担当者も、私のオーダー通り作ったと言い張り、一悶着。

すると、その会話の様子を見ていたスタッフが、古いチャットを調べていたようで、突然一言。
「あの、2週間前にあなたが送ってきたチャットなんだけれど・・・」

なんとそこには注文のリクエストが。私の注文とは色が微妙に違っていたものの、柄と数は合っている。

今度は自分が相手を疑い、傷つけたことにショックを受ける。
担当者と生産者にひたすら謝ると、間違いはあることだと、みんな水に流してくれた。

またあの病にかかってしまっていた。5年前のあの失敗から、私は何も学んでいなかったのか?
もっと余裕を持たなければ、深呼吸して事態を見極める強さを持たなければと改めて実感。

これから海外で活動する皆さま。どうか、この疑心暗鬼という病にご注意を。
(ケニアの工房にて)
(ケニアの工房にて)

岡本ひかる 株式会社アンバーアワー 副代表

 
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