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第477号  博士課程と途上国開発の現場との結びつけ

一般財団法人 国際開発機構(FASID)では、国内外の国際開発関連分野の大学院で学ぶ日本人人材に必要な経費を支援することにより、開発援助分野における高度なレベルの人材育成の促進に資することを目的として、奨学金プログラムを実施しています。 
本稿では、FASID奨学生(3期生)による寄稿をご紹します。

2016年度(2017年度支給開始)募集についてはこちら をご覧下さい。
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松田 宜彦(まつだ・のりひこ) 
2015年度FASID奨学金プログラム採用(3期生)
奨学期間:2016年9月~1年間以内
(2015年9月~1年間受給、延長申請・同審査を経て現在に至る)
修学機関:University of Wisconsin, 
Department of Agricultural and Applied Economics(米国)博士課程4年在籍
研究課題:「発展途上国における都市部フォーマルセクターの雇用」

略 歴:京都大学理学部卒、一橋大学修士課程(経済学)修了。中央三井信託銀行勤務の後、開発コンサルティング企業のアイ・シー・ネット株式会社に所属し、東南アジア、南アジア、アフリカの計7つの途上国で国際協力機構JICAの案件に従事。2013年からウィスコンシン大学マディソン校農業・応用経済学博士課程に留学中。現在、博士号候補者(Dissertator)として博士論文に取り組みながら、世界銀行のコンサルタントとして途上国の労働市場の分析業務にも従事している。



 「労働・産業政策に関して途上国開発の現場で役立てられる技術と知識を身につけて、もう一度現場に関わろう」そう思って私は2013年から留学しています。ですので、現場でどう役立てられるのかを常にイメージしながら身につける理論・テクニックや研究テーマを選択してきました。現場をイメージする際には、開発コンサルタントとして働いた経験がとても役立っています。
 具体的には、政策評価の技術を深く掘り下げて身につけること、労働・産業政策のセクターに関する知識を幅広く得ることを意識してきました。政策評価を的確に行う能力を強みとしつつ、現場の議論についていくための知識もアップデートしていきたいと考えたのです。
 コースワークでは統計・計量経済学を重点的に学ぶことを心がけました。また自分の研究では、高齢者向け社会保障プログラムが受給者の生活とその子供の就業状況に与える影響(南アフリカ)、労働規制が雇用と企業活動に与える影響(バングラデシュ、エジプト)、初等教育プログラムが出稼ぎ労働に与える影響(インドネシア)に取り組んできたのですが、これらの研究を通じて、データを用いて可能な限り正確に政策を評価する実践的技術を掘り下げて身につけることができたと思います。同時に、途上国の労働市場、労働規制、出稼ぎ、社会保障プログラムに関する知識も得ることができたと思います。
 去年から学業の傍らで世界銀行のコンサルタントとして働いており、これまで学んできた政策評価の技術やセクターの知識を実際の政策ディスカッションの場で活用する機会にも恵まれました。具体的には、賃金構造、就職市場、職業訓練に関するミクロデータを用いた分析を行ったり、ランダム化比較実験を用いたインパクト評価のデザイン・分析に取り組んでいます。この業務を通じて、政策評価と計量経済学の技術が役立つという点を確認できたのは良かったと思っています。加えて、分析結果を政策にフィードバックしていくプロセスを学べたのは、博士課程で得た経験を今後生かしていくうえで大いに役立つと思っています。 
 アカデミックな研究や技術は途上国開発の現場に必ずしも近いとは限りませんが、直接結びつけられるもの、役立てられるものもあると思います。残りの博士課程は論文を仕上げる段階となりますが、現場をイメージしながら取り組んでいこうと考えています。

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出所:国際労働機関
南アフリカの老齢年金プログラムで使われている可動式ATM(左)と受給者全員に配布されるカードのサンプル(右)。近年、行政手続きの効率化が進められている。暗証番号に加えて指紋・声紋での身分認証も可能。私の研究では、この年金プログラムによって、相対的に貧しい高齢者の生活水準が向上したこと、働き世代である受給者の子供の労働参加率が低下したことが明らかになっています。


※FASID奨学金プログラムでは開発援助分野における実践的研修を受講することとなっていますが、私は世界銀行の業務を当該研修としました。
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