PARTNER 国際協力キャリア総合情報サイト PARTNERニュース・コラム(第482号)

第482号  シリーズ 国際協力の第一線(団体編)~しくじり体験、こんなところに落とし穴が!~
― 初心者プロジェクトマネージャーの奮闘記 ―
NPO法人道普請人  福林良典

NPO法人道普請人(みちぶしんびと)では、「自分たちの道は自分たちで直す」という意識を広げる活動をしている。
開発途上国農村部の整備が行届かず状態の悪い生活道路を、土のう袋を使って人力で直す。
所定の量の土を袋に入れ穴ぼこに敷いて人力でたたくと石のように固くなり、その上に土をかぶせて道路が出来上がる。
作業に参加した人々は道の仕上がりに満足し、自分たちでも道を直すことができると実感する。
病院や学校に行きやすくなった、バスが村に来るようになったなど、くらしが良くなる様子を実感する。

この活動は2005年に、地球最後の秘境といわれるパプアニューギニアの山間部で開始した。
これまでに25ヶ国で約145 kmの道を住民とともに直してきた。

その実績が活かされて、8路線で合計約80kmの道をコミュニティと直す大型プロジェクト実施の機会を得た。私は開発ワーカーとして仕事を始めて3年目で、初めて国際金融機関無償事業のプロジェクトマネージャーを務めることになった。

現地で雇用したスタッフ一同が互いに信頼し力を発揮する環境を作り、この事業を何としても成功させたいと思った。周りや従来のやり方に捕らわれず、自分らしく合理的で現地の方の意向を尊重しつつ取り組もうと考えた。

結果、数多くの失敗もし、またうまく行ったこともあると思う。車両の管理に関し、認識が甘く痛い目にあった。

連休前の日に現地スタッフがやってきて、連休の間でも村人は働くからその監督に行きたいと言ってきた。思うように現場に行けてなく進捗が遅れ気味だったこともあり、おっ、やる気があるなとついうれしく思い、レンタカーを手配して送り出した。連休明けの返却日になっても、彼は帰ってこない。電話をしてもつながらない。しばらくして情報が入り、自損事故を起こしていた。幸い誰もケガはしていないようだった。

その後、他のプロジェクトの現地スタッフに、連休中には気のゆるみや普段の業務どおりにいかないことが多々あるため、監理の難しい遠方出張を伴う業務はやめておいた方がいい、と忠告を受けた。今思えば、その通りだと思う。送り出しても安心と言えるような、互いに信頼関係がある段階ではなかった。休みの日には休む、という他のプロジェクトのやり方の、その本当の意味を理解しておくべきだった。 杓子定規に思える習慣には、実はきちんと理由がある。まず従来のやり方の背景の理解に努め、そのうえでより合理的な代替案を提案することが必要だと学んだ。

さて、事故の後始末がまた一苦労だった。他のスタッフへの影響は最小限にしたく、自分で対応するしかない。警察の事故証明一枚もらうのにも時間がかかった。事故処理なのか、事業を進めることが仕事なのか、わからなくなったこともあった。約半年後車の修理が完了し、すべての懸案事項がなくなり処理が終わった時は、久しぶりにゆっくり寝ることができたことを覚えている。

他にもいろいろあったが、プロジェクトは無事終了した。事業対象道路入口で住民の歓迎を受けると、苦労など吹っ飛んでしまう。 仲間とともに自らの成長につながると思い進めてきた業務の結果が、他の人から感謝されることにつながる瞬間に、やりがいを感じまた頑張ろうと活力を得る。今のところ、苦労して後ろ向きになるより前へ進もうとする気持ちが勝っている。この経験を活かし、引き続き団体事業活動に邁進したいと思う。

国際協力は国境を越えた人と人とのつきあいで実施される。互いに失敗もする同じ人間として、泥臭くガチンコな関係の中で事業が進む。それでも、単に言葉だけでなく意識や考え方の違いから、同じ事業実施者として一体感を持つことはなかなか難しい。プロジェクトの実施には理屈や手法上の工夫だけでなく、人間関係構築のノウハウも重要なようだ。裏切られたと思ってしまう瞬間は本当につらい。ただ、失敗やつらさは自分を成長させてくれる機会でもあると思う。つらいこともあると思うが、他の人にも続けていってほしい。それでもまた続けたいと思える瞬間があるのだから。
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