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“担当者からリーダーへ”ステップアップする時 ~協力隊の任期を終えて6年~

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元フィリピン隊員(2004~06年)の井端梓さんが帰国して選んだ就職先は、日本の国際協力NGOをつなげるNGO国際協力NGOセンター(JANIC)だった。就職して6年、34歳になった井端さんは「これまでは上司をサポートする形で必死に走ってきた。これからは自分自身が、事業の方向性を示せるようにならないといけない。私はいったい何をしたいのか、何ができるのかを考える日々を送っている」と“7年目の壁を打ち明ける。

タフなジェネラリスト
 20064月に帰国した井端さんがJANICで仕事を始めたのは5月のゴールデンウィーク明けから。就活期間はわずか1カ月だった。
 帰国者進路相談に参加した他、活用したツールが、JICAが企画・運営する国際協力分野の求人情報サイトPARTNER。掲載されていたJANICの求人情報を見つけて応募。当時28歳だった井端さんにとってキャリアといえば、1年半の不動産会社勤めと2年の協力隊経験(職種:新体操)のみ。「NGOへの就職は枠が少なくて難しい」と聞いていたが、見事その難関を突破した。
「広報・渉外のポストということもあり、企業の会員を増やす業務があった。だから営業経験が評価されたのではないか。またしばらくたってから、当時の採用担当者(事務局長)に協力隊出身だからタフそうだった、と言われた」と井端さんは決め手を振り返る。
 JANICに入って井端さんがまず担当したのは、毎月開催するセミナーの運営だ。チラシを作ったり、ウェブサイトで広報したりした。
 これ以外にも、毎年秋に都内で開かれる国内最大の国際協力イベント「グローバルフェスタ」(JANICも共催団体)では、動員する多数のボランティアを管理する役目を任された。
活動していく中で「中小のNGOの国内スタッフは、一人で何役もこなす必要がある。経験したことのない事でも手探りでもいいから周りを巻き込んで推進していく馬力のあるタフなジェネラリストであることが必要、ということが分かった」と語る。

試行錯誤の日々
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 最初の壁に直面したのは、NGO会員に配る募金をJANICのウェブサイトで集める「NGOサポート募金」の刷新にかかわった時だ。
 その際に井端さんが提案したのは、それぞれのNGOの活動を「農業・農村開発」「保健医療支援」「女性の自立支援」「ネットワーク・提言活動」など8つの分野にパック化し、寄付者が応援したい分野を指定できる仕組みを作ること。募金額をもっと増やしたいとの願いからだった。JANICはかねてから、NGO会員のための募金窓口の役割も担ってきた。しかし実情は団体名をウェブ上に並べるだけで、NGOとなじみが薄い人にとっては理解しにくく、企業は公平性や説明責任の問題から個別の団体への寄付はしにくかった。
 パック型募金を採用して実際、募金額は飛躍的に増加した。数十万円だった募金額は、2010年には3000万円となった。
 抜群の成果をもたらした裏側には、井端さんの奮闘があった。活動分野をどう区分けすればいいのか、クレジット決済を導入できないか‥‥。有識者を巻き込んで、考えに考え、実現していった。
 とりわけ力を注いだのが、賛同してくれそうな企業へのアプローチだった。その努力が奏功し、大手家電量販チェーン企業の一つは、店舗で回収した使用済みインクカートリッジ1個について10円を寄付してくれるようになった。年間で1200万円にも上る。成約に至るまでの過程においては、前職での営業経験が活きた。

次のステップへ ~自分が考える事業を形にしたい~
 2011年、井端さんは渉外ポストを専任することになり、NGOと他セクター(企業と労働組合)との連携等を担当することになった。
 NGOと企業の連携推進ネットワーク2008年の立ち上げから関わってきたが、企業会員数の増加、など自分に課する業務目標を立てた。
 「これまでは深くは考えずに、NGOを支援するJANICの活動の一端を担ってきた。上層部の示した方向性に沿った事業を企画し、実行する。
これからは、自分がリーダーとなり、具体的に何をするかのアイデアを出し、それを形にしていきたい。大きなことは出来ないかもしれないが、小さいアイデアを積み重ねていく経験を尊重してくれるNGOという職場に感謝している。」
 井端さんが描くキャリアの積み方はJANIC卒業して、JICAの専門家になるわけでも、国連で働くことでもない。これまでに培った人脈と経験、そしてJANICのリソースを活用して、より効果的なNGO支援をしていくことだ。
6年前は現場に憧れてNGOに入ったが、今は「日本の企業や消費者が変わると途上国も変わる。日本で支援者を広げるのが自分の役割」と思っている。
井端さんは今、上司をサポートする一般職員からリーダーになる時期を迎え、「自分は何ができるのか」を模索中である。

現役・未来の協力隊員への一言
 井端さんがNGOに興味を持ったのは隊員時代。フィリピン北部の任地の近くに、親から虐待される子どもたちを引き取り、生活を一緒にする日本のNGOCFF」が活動していた。
 隊員仲間と人形劇を見せるために訪問した井端さんはそこで初めて、NGOの活動現場を見る。「個人が何をやっても、世の中は変わらない、と思っていた。虐待されていた時の怪我が顔に残っている子もいる。でも、学校や教会に通い、日常生活を不安なく過ごす環境に身を置いた彼らからは子供らしい笑顔があふれていた。環境が変わって子供たちは明らかに良くなっている。」 NGOに強い関心を持った。
 国際協力の分野で働きたいと希望する現役の協力隊員に対しては「任国で活動するNGOに関わったり、JICAや世界銀行のプロジェクトを見ておくといい。そうすれば、入りたいNGOを選ぶときの現実感も湧く。またいつの日か、現地のNGOと一緒に活動する機会もあるかもしれない」とアドバイスする。
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本インタビューは、「協力隊の任期を終えてX年」で公開していた内容と同一です。