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「人のためになること」を目指して気候問題に関わり続けたい ~社会貢献活動におけるキャリア(環境編)③~

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【プロフィール】
大学院にて、海洋環境化学を専攻。地球温暖化や大気環境の研究を通じ、国際協力の重要性を知る。2006年、(独)国際協力機構(以下、JICA)に入構。JICA九州を経て、現在は地球環境部 環境管理グループ 環境管理第一課に所属。
  気候の研究にいそしんでいた学生の視界の中に突如あらわれた国際協力。途上国への支援経験も国際開発の知識も持たないながらも、気候変動という環境問題はグローバルな問題である以上、国際協力という視点が必要だ。そう考え、吉田健太郎さんは未知の領域であるJICAに飛び込んだ。現在、入構から5年目、吉田さんの胸の内を聞いた。
 
環境への関心が気候変動に行き着いた
学生の頃、大学では気候学を専攻し、気候現象の研究をしていました。仙台平野に吹く海風を調べ、どのような現象が起きているかについて調査していたのです。

 気候について学びたいと思ったのは、温暖化をはじめとした地球環境問題に関心があったからです。

 学部での研究を終える頃になって、さらに学びたいと思ったので、大学院に進み、海洋環境化学を学びました。学部では風や気温の観測といった範囲にとどまっており、もっと大掛かりな研究を行い、知見を広めたかったのです。大学院では観測船に乗船し、ハワイや北太平洋まで航行したりして海洋環境の観測をしていました。このようなグローバルな観測を通して、もはや環境問題は一カ国のみの問題ではなく、全世界的な取組みが必要だと感じるようになりました。

JICA志望はひとつのチャレンジだった
調査研究の過程で特定の場所の気象変化と環境問題全体のつながりが見えてきた。環境問題は世界にまたがっている。吉田さんは自分の研究してきたことを役立てたいと、「国際協力」という分野での仕事について考えるようになった。
学生時代にとりたててボランティアだとか国際協力に取り組んでいたわけではなく、途上国に行ったこともありません。

 特別な経験はありませんでしたが、自分の研究してきた気候現象の範囲の中で考えても、いま起きている変化は日本や先進国だけでの問題ではない。途上国を巻き込んでいるはずだ。そう考え、様々な企業や組織を調べていく内にJICAを知ったのです。
 
同じ研究室のゼミ生は民間企業の研究職や公務員を目指していました。私も鉄道などの運輸関連の企業や民間気象会社なども選択肢として考えましたが、最終的にはJICAを志望しました。各国を巻き込んでいる問題に人を介して具体的に協力できるところがいいと思ったからです。

 国際協力という分野は、これまでに経験したことがないけれど、自分の研究してきたことで役立てるのではないか、チャレンジしたいなと思ったのです。

2006年にJICAに入構。1年目は本部や国内機関のほか、フィリピン事務所で8カ月に渡る研修を行った。海外での初めての長期滞在だ。また国際協力の現場を間近に見るのも初めての経験だった。
フィリピンでの経験で印象に残ったのは、農業における技術協力プロジェクトです。あくまで短期間の研修の一環でしたので、プロジェクトによる劇的な変化を目の当たりにしたわけではありませんが、肥料コストを下げる工夫だとか、間引きによる収穫量の向上などについて、JICA専門家の方々が奮闘している様子を見ることができました。

帰国後、JICA九州の研修業務課に配属。途上国から来日する研修員のコーディネートを主に担当した。
北九州地域では、かつて大気汚染やヒ素汚染といった公害問題が発生しました。そうした経緯があることから、JICA九州では、環境管理分野の研修に力を入れており、(主に)途上国の環境関係の省庁の職員を招き、地方自治体や民間企業などの公害対策を紹介する研修事業に携わっていました。
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 研修に対するニーズは国によってさまざまですが、特に廃棄物管理に関する途上国のニーズは高かったといえます。

 JICA九州での仕事を通じて学んだのは、「途上国のためにできること」を考える上では、地方自治体や民間企業、NGOなどと良い関係を築き、これらの日本側関係者が「いま何を考えていて、それをどのように活かせるのか」を常に念頭に置いて、研修プログラムを組むことでした。

 日本側関係者が「ぜひ紹介したい」と思っていることであっても、実は途上国のニーズに合わないこともあります。日本と途上国双方のニーズのマッチングを考える。そういう視点の必要性を知ったと思います。

コーディネーターとしてのスキル向上を目指したい
JICA九州での勤務を経て、2年前に地球環境部に異動となりました。  私としては、これまで培って来た経験を活かし、途上国への技術協力がスムーズに行えるよう裏方のコーディネーターとしてプロジェクト管理をしていきたい。そう考えています。

 現在は、アジアと大洋州の環境管理分野を担当しています。この部門は廃棄物をはじめ、水質や大気汚染、気候変動関連の技術協力のプロジェクトを扱っており、インドネシアと大洋州とパキスタンの環境分野に関わるプロジェクトに携わっています。
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プロジェクトのひとつを紹介すると、フィジー国「廃棄物減量化・資源化促進プロジェクト」という廃棄物の3RReduce, Reuse, Recycle)を推進するプロジェクトがあります。ゴミは不衛生で悪臭がするので適正に廃棄処分できるような形にする措置が必要です。この適正な廃棄物処理を技術協力によって対応することとしています。

 まず住民に対してお願いしたのは、「ゴミを分別してきちんと出す」意味を理解してもらうことでした。これが機能しないとゴミを集められませんし、リサイクルにも回せません。行政の説明がきちんと住民に理解されないと、せっかくの技術も機能しません。

 そうした事例を踏まえ、現在行っているのは、大洋州全体の廃棄物管理の改善を目指している大洋州地域「廃棄物管理改善支援プロジェクト」です。これまではフィジーだけで行っていたプロジェクトを、ミクロネシアやパプアニューギニアなど11カ国を対象に拡大しようというものです。
 
いずれの場合もプロジェクトの前面に立ち、現地で実際に協力を行うのは専門家やNGO、地方自治体の職員といった人たちで、私たちのプロジェクトへの関わり方は、組織と組織をつなぐといったアレンジなど、これらの関係者が効率よく働ける環境を整え、プロジェクト全体で最大の成果を出せるようにマネジメントをしていくことです。

吉田さんは研修やプロジェクトの円滑な実施のためにどちらかというと裏方として経験を重ねてきたが、今後のキャリア展望をどう描いているのだろうか。
これまでは「環境問題」に携わってきましたが、今後はそれだけに限らず、一度は海外の事務所で幅広い分野に渡るプロジェクトを管理する仕事にも挑んでいきたい。

 特に最近は単なる「技術協力」には留まらず、民間企業やNGOとの連携や、科学技術に特化した案件など、協力内容も幅広くなっています。現地で幅広い分野を勉強しながらプロジェクトを実施することができたら、と考えています。

 JICAの仕事は、いろんな立場の人とかかわることができます。多様な情報を収集し、組み立てられるところが仕事の醍醐味だと感じています。
 
専門家の意見や現地の情報も入手でき、現地政府の意向や、国際協力に関心を持ち始めた日本企業やNGOの動向など、いろんな情報が入って来るので、各々の立場からの視点を得ることができると思います。

 ひとつひとつ経験を積み上げて行く中で、自分なりの意見が言えるようになれば、いっそう仕事がおもしろくなってくるのではないかと期待しています。

吉田さんはJICAに入るまで、国際協力に関わった経験はなかった。しかし、社会人となってからは国際協力のキャリアを築いてきた。翻っていえば、「専門知識」を持っていることが国際協力の分野では「強み」になるということだろうか。
私のもっている専門知識を活かして人のためになりたい。そう思ってこの業界に入り、仕事をしてきました。

 私に言えるのは、環境問題をコーディネートしていく上で専門知識は欠かすことができなかっただけでなく、環境問題への強い関心があったからこそ、問題解決に役立ちたいと考え、その思いがプロジェクトへの取り組みを後押ししていることもあるということです。

 JICAで仕事をする上では、自分なりの強みがあると、その強みを通してプロジェクトを円滑に進め、開発途上国のためになる協力を展開できるのではないかと考えます。

 JICAに限らず、国際協力の分野で活動を望む若い人に言えることがあるとしたら、幅広く情報を集め、いろんな立場の意見を聞き、その良いところを吸収し、現地のニーズを加味した上で、最後は「人のためになること」を自分で考えて実行する。それが大事だと思います。 
 
決して声高に語ることのなかった「人のためになること」。吉田さんの胸底の思いを垣間みたような一語だった。

本インタビューは、「ソーシャルキャリアはどうつくる」で公開していた内容と同一です。