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ヨルダン環境省での公害対策支援  ~国際協力専門員の仕事①~

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私のキャリアパス

2002年に環境分野のJICA国際協力専門員として採用されて7年余になります。

大学・大学院では地質学鉱物学を専攻、1984-86年にはネパールに青年海外協力隊・地質学隊員として派遣され大学の地質学科で教鞭をとりました。ネパールから帰国後、民間地質環境コンサルタント会社に勤務、折からの環境に関する社会的関心の高まりの中、土壌・地下水汚染や廃棄物問題に取り組み環境分野の専門性を得ました。また、JICAプロジェクトに技術協力専門家として出向し、パキスタン(地質科学研究所)に5年余、チュニジア(水・環境研究所)に2年半滞在し、国際技術協力の現場感覚を得ることができました。

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国際協力専門員の仕事は大きく分けて、国内を拠点として様々なプロジェクトを専門的見地から支援する「国内業務」と、途上国に長期滞在し現場で直接プロジェクトに従事する「海外業務」があります。以下では、2005-06年にヨルダンに派遣された経験を例に、国際協力専門員の「海外業務」の一例をご紹介します。

アドバイザー型専門家の仕事

国際協力専門員が専門家として派遣される場合、プロジェクトのリーダーとして、あるいはアドバイザー型の専門家として派遣されることが多く、単なる専門分野の支援のみならず相手国政府に対する助言者・顧問としての役割が期待されます。

私が環境行政アドバイザーとして着任したヨルダン環境省は、2003年に設立されたばかりの若い官庁で、ヨルダンの環境行政を一元的に統括するというミッションはあるものの、当時まだ組織として未成熟な官庁でした。私のカウンターパートは大臣と次官と公害局長。日本の公害経験を学び、同国の今後の公害対策を整備したいということで、当時ヨルダンで深刻になっていた大気汚染問題への助言と制度作り支援を求められました。そこで私は、固定発生源(原因工場)の査察制度、移動発生源(自動車排ガス)規制制度の導入等について協力を行うことになりました。

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ところが、ヨルダン環境省は大変弱体であり、予算もスタッフも十分ではありません。県の環境局も未整備です。しかし、公害汚染源に対する査察や取締りに関してはどうしても人手がかかります。そこで検討を重ねた結果、環境省が内務省(警察庁)と連携して、査察・取締りを行う体制を作ることになりました。内務省からは「環境警察(Environmental Police)」と名づけた警察官を配置してもらい、環境省がこれらの警察官に対して「公害査察・取締り」に関するトレーニングをする、という計画です。

そしてJICAが、このトレーニングを行うことになりました。同時に、排ガス規制についてセミナーを開き、当該分野のJICA本邦研修へ、キーパーソンを派遣し、「環境警察官」全員に「警察手帳」ならぬ「環境手帳」(環境基準・規則を収録)を配布する、市民への広報協力といった支援も行い、「環境警察」を立ち上げたのでした。

この「環境警察」、ヨルダンですっかり定着しているようで、最近現地から送られてきた新聞報道によれば2008年実績で実に15,000件を超える違反が摘発されたとのこと、また検査機材も多数自力で追加配備し、ヨルダンの環境を守るため活動を続けています。

ドナー調整会議議長の仕事

ヨルダンのみならず、途上国では、複数のドナー(援助機関)が活動していることがしばしばあります。ドナーがばらばらに途上国政府とプロジェクトを形成・実施するだけでなく、相互に連絡を取り合い、無駄な重複を避け、途上国の自助努力と個々のプロジェクトが連関して全体として大きな成果を挙げるようにすることが必要です。これを途上国におけるプログラム化と呼びます。

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ヨルダンでは、環境省の設立と同時に環境分野ドナー会議が形成され、国連、EU、フランス、ドイツ、アメリカ、日本(JICA)がメンバーとなっています。環境省にアドバイザー専門家として常駐するということから、私がこの会議の議長を務めました。

会議では、各ドナーの支援計画の情報交換からはじめ、すでに実施中のプロジェクトについてはその経験の共有化をはかりました。環境省のキャパシティ・ディベロップメント支援プログラムとして、EUと日本(JICA)とフランス(AfD)の相互に関連する3つの支援計画・プロジェクトがうまく連携できるよう調整を行い、共同のWebサイトを立ち上げました。

広域専門家としての仕事

国際協力専門員は、以上の様に一国での専門家活動のみならず、近隣諸国の類似プロジェクトに対する広域専門家としての活動も求められます。私の場合、パレスチナ、シリア、アルジェリアでも活動しましたが、自然や社会条件が比較的類似するため、有益な情報交換を行うことができ、また、ネットワーク化や共同研修開催などの連携を進めることができました。

このように、国際協力専門員は、「海外業務」に限っても、単なる技術協力専門家としてだけではなく、高次の助言者・顧問として、またドナー間の調整を行う幅広い調整者として、また、一国だけにとらわれない広域専門家・支援者として、多彩な活動が求められています。

※本インタビューは、「しごと@JICA 活躍するひとの声」で公開していた内容と同一です。