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「専門技術のアドバイザー」として、全世界でJICAの協力事業推進を支える   ~国際協力専門員の仕事②~

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1995年から13年間、農業・農村開発分野の国際協力専門員として活躍している時田邦浩さんにお話を伺いました。

国際協力専門員の仕事について

-国際協力専門員は、年間を通して海外・国内でさまざまな仕事に携わるということですが、今年度はどのような業務に従事されたのですか?

今年度一番初めの仕事は、JICA農村開発部、無償資金協力部、アフリカ部が連携して実施したマダガスカル農業分野におけるプログラムの整理を行う調査に約2週間関わりました。

私は、農業・農村開発の専門家として、以前マダガスカルにおけるアンチラベ農業機械化訓練センターおよびアロチャ湖南西部地域流域管理、ならびに農村開発計画に関わった経験を生かし、「中央高地コメ生産性向上計画」を中核プロジェクトとする食糧増産プログラムの形成を行いました。

その他に、国際協力研究誌の原稿審査や、技術協力専門家の赴任前研修の講師にも従事しました。6月から7月にかけては、以前技術協力専門家として関わっていたカンボジア国バッタンバン農村地域振興開発計画という案件の運営指導調査団の団長として、約3週間カンボジアに出張しておりました。
また、今年度は調査団長として、中国やフィリピンなどの調査業務にも従事しました。

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こういった短期間の委嘱業務とは別に、JICA本部における農村開発部の課題アドバイザーとしての任も委嘱されていますので、アジア地域の新規案件に対するコメントや必要時に専門的な見地からアドバイスを行う役割も担っています。

今月は、短期の技術協力専門家という立場で、エジプトに第三国研修の運営指導、つまり、エジプト国内で実施されている技術研修コースの見直しや改善を行うために出張する予定ですし、その後すぐに、ケニアへ出張し、在外事務所の職員研修の講師をする予定です。今年は、短期間の海外業務を全て合わせると、だいたい10回ぐらいになると思います。

-年度初めに、年間を通した委嘱業務が決定されるのですか?

課題アドバイザーのような年間を通した委嘱業務は別ですが、短期間の委嘱業務はなかなか年初に決めるのは難しい状況です。しかし、できるだけ計画的に業務を委嘱しましょう、という話が進んでいます。

-年度初めに、年間を通した委嘱業務が決定されるのですか?

現在は、課題アドバイザーとして、農村開発部で農業生産関連の案件全般とアジア地域の農業案件全般に関わっています。

農村開発部のような課題部の職員は、質の良い案件の形成、そして実際に効率よく案件が進捗するようサポートすることが仕事ですので、課題アドバイザーである私は、専門分野における技術面で職員をサポートします。

技術と言ってもかなり広い意味の技術です。案件形成をする上で、その案件が、JICAの農業セクター全体の中でどのような位置づけなのか、また案件が実施される当該国の農村開発の中ではどう位置付けられるのかという考え方から、当該国の実施省庁におけるキャパシティーの問題など、さまざまな要素を含めアドバイスさせていただいています。

-実施中の案件については、どのようなアドバイスをされるのですか?

 

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開発途上国では、案件の途中で想定外のことが多々起こりますので、そういった場合にアドバイスを求められます。例えば、突然政府の方針が変わってしまったり、実施機関の役割が変わってしまったりすることもあります。他にも、技術協力専門家が派遣されていても、専門家と現地のニーズがかみ合っていないケースもあります。

こういった状況を、いかに解決の方向に持って行くかというアドバイスを職員に対して、場合によっては直接専門家に対して行います。

基本的に、半年に一回送られてくる実施中のプロジェクトやプログラムについてのモニタリング調査表から情報を得るようにしています。しかしここから得られる情報だけでは、問題を適切に解決するには情報が十分でなかったり、タイムリーなアドバイスができなかったりすることもあるので、問題点を早期発見し、適時対処できるよう、できれば毎月各プロジェクトから本部に対して報告をしてほしいとお願いしています。

案件が順調に実施されている時は、定期的な評価調査で関わる程度ですが、状況が難しくなった時にコメントを求められるということになります。

-委嘱される案件ごとに、農業分野のスペシャリストとしての立場は変わらずとも、調査団長/団員だったり、課題アドバイザーだったりと立場が変わってくるのですね。

そうですね。今申し上げた業務だけでなく、技術協力専門家の赴任前研修の講師をしたり、無償資金協力事業に対する技術的助言を行ったりなど、非常に多様な立場で業務をすることになります。国際協力専門員のユニークな点は、まさにここにあるのだろうと思います。

-国際協力専門員は、長期で海外での業務を委嘱されることがあると聞いていますが、時田さんの場合はいかかですか?

これまで、長期間の海外派遣が2回ありました。1回目が1999年から2001年までの約3年間、フィリピンのボホール総合農業振興計画というプロジェクトのチームリーダー(現在はチーフアドバイザーと呼ばれています)として、2回目が2003年から2006年の約3年間カンボジアのバッタンバン農業生産強化計画というプロジェクトのチーフアドバイザーとして派遣されていました。

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私の場合は、プロジェクトのチーフアドバイザー(プロジェクト運営あるいは専門分野兼務)として業務に従事しましたが、政府の政策立案に関わる政策アドバイザーとして業務を委嘱される専門員もいらっしゃいます。

こういった技術協力専門家としての経験を生かして、次は日本をベースとして、運営指導調査や中間評価といった各種調査業務に従事し、課題アドバイザーとして個別の案件に問題が発生した時にアドバイスをします。

印象に残った業務

-13年間国際協力専門員として活躍されて、印象に残った業務はありますか?

国際協力専門員になって初めて海外に長期派遣されたフィリピンの3年間でしょうか。当時、農業分野のプロジェクトでチームリーダーを務めていたのは、多くの経験を積まれた省庁からの推薦者がほとんどでした。

JICAの国際協力専門員の立場から、しかも41歳で派遣された私に対して、フィリピン側も驚いたという状況でした。ちょうどその頃は、プロジェクト・サイクル・マネジメントが導入され、専門家の皆さんから、どう扱っていくのか、技術移転のプロセスがこれでどのように評価できるのかというさまざまな意見が出されていた時期であり、また、フィリピンの国内情勢の変動により、プロジェクトを進めるにあたって、さまざまなハードルをクリアしなければならない時期でもありました。

始めの半年間、色々な現場で問題点をあぶり出して、フィリピンの人たちを交えてどういう対策をとっていこうかという議論を繰り返し行って、プロジェクトを進めていった記憶が鮮明に残っています。

国際協力専門員の魅力

-時田さんが考える国際協力専門員の魅力は?

国際協力専門員になって初めて海外に長期派遣されたフィリピンの3年間でしょうか。当時、農業分野のプロジェクトでチームリーダーを務めていたのは、多くの経験を積まれた省庁からの推薦者がほとんどでした。

専門分野を基軸に、さまざまな立場で色々な業務に関わることができるということです。職員は、分野・地域を越えた異動がありますが、私たち国際協力専門員は、その分野におけることであれば一貫して関わることができます。

例えば技術協力プロジェクトに技術協力専門家として携わり、その後課題アドバイザーなど違う立場で、過去に得た知識などを還元しながら従事することができる。ここが国際協力専門員の魅力ではないでしょうか。

キャリアパス

-今までのキャリアパスを教えて下さい。

18歳で高校を卒業して従業員30名程度の鉄工所に就職し、同時に名古屋工業大学の夜間に通い始めました。鉄工所での3年間は、技術を身につけることができた他、会社組織と外との関係、あるいは人間関係を学ぶことができたということが、自分の糧になっています。
大企業では、多くの業務が分業されているため全体を知ることは困難です。実は、こういった小回りのきく中小企業にこそ国際協力に必要な総合力が潜んでいると思います。

専門家といえば、スペシャリストということになりますが、必要な条件が整っていない開発途上国では、何事にも対応できるジェネラリスト的センスが要求されることが多く、この時の体験は、その後の国際協力専門員としての仕事にも大いに生かされていると思います。

鉄工所を退職した後、大学卒業を迎えたときに大学院を受験したのですが不合格となり、岐阜大学に農学部の研究生として籍を置きました。その時に、青年海外協力隊を知り受験しました。農業機械の隊員として3年間ケニアに派遣され、自分で出せるものは出し尽くしたという感じでした。

帰国後、自分の中で問題点が見つかっていたので、岐阜大学の大学院に進み、大学院修了の頃にJICAの海外長期研修に合格し、アメリカの大学院に進みました。帰国後、JICAの社会人採用を受験しようとしていたのですが、ちょうどその時、JICA筑波国際センターから開発途上国からの技術研修員に対して技術指導を行う研修指導員を募集しているというお話をいただいてお世話になることになりました。

アメリカ滞在中に、国際協力専門員に一度応募して書類選考で落ちましたが、ケニアの技術協力専門家と筑波の研修指導員を経験した後、二度目の挑戦で専門員に合格しました。

最後に国際協力専門員に応募を考えている方々へメッセージをお願いします。

国際協力専門員という限りは、専門性という柱をしっかり持つということは、非常に重要です。しかし専門員はその専門性を一つだけ持っていれば良いわけではなく、その裾野は広くかつ厚いということが求められるでしょう。また、知識だけではく、情報収集能力、分析力、企画力、交渉力、調整力などの総合的な運営管理能力を持ち合わせていることが必要だと思います。

-どうもありがとうございました。
※本インタビューは、「しごと@JICA 活躍するひとの声」で公開していた内容と同一です。