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現地の人々との「共生」にこだわったからこそ実現できた、投資する側・される側が共に育つ社会的投資事業 ~社会貢献活動におけるキャリア(途上国ビジネス編)⑤~

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投資先企業の社会的責任の評価を加味するなど、社会性に配慮した投資のことを「社会的責任投資」というが、ARUNは、途上国と日本をつなぐ社会的投資事業を行っている。日本の個人・企業からの出資金を原資とし、カンボジアで貧困問題解決に取り組む社会的企業に対して投資すると共に事業に対する技術ノウハウの移転なども並行して行う仕組みだ。10年以上カンボジアで国際協力に従事してきたARUN代表の功能聡子さんに、社会的投資事業を立ち上げるまでの経緯や国際協力との関わり方について伺った。

—  長い経験で感じた疑問を、自らの手で切り開き、解決への糸口に
 中学時代、ネパールで医療活動を行なう日本人医師夫妻、エクアドルの高地で宣教師として活動する女性の話を聞いたことをキッカケに、日本の外の世界に興味を持ったという功能さん。当時は「自然の中で、現地の人たちと触れ合って生活するのは楽しそう」という憧れに近い思いだったそう。その後、国際基督教大学に進むが、専攻はなんと生物。一見まったく畑違いな環境から国際支援の世界に身を投じるキッカケとは何だったのだろうか。
大学時代は、南アフリカのアパルトヘイト問題に関心を持ち、世界の不正義をなくすために働きたいと思っていましたが、具体的な方法は定まっていませんでした。そこでまず卒業後は、医薬品企業の研究所に2年ほど勤務しながら、ボランティアで国際協力NGOの活動に関わりました。

その後、国際協力を仕事にしたいと思い、アジア・アフリカの農村リーダー育成機関であるアジア学院に移りました。アジア学院を選んだ理由は、途上国のワーカーと日本のワーカーが、農村開発の現場や課題、知識に触れる機会を得ることで、お互いの学びを深める点に共感したからです。アジア学院では、研修活動の他、各国で活躍する同学院卒業生のフォローアップやネットワーク構築を担当しました。お世話になった5年間はとても充実していましたが、次第に途上国の現場にもっと深く入り込みたい、という気持ちが募り退職しました。出張ベースでの訪問では、どうしてもお客さま扱いで、相手の抱える課題の深いところが見えてこないと感じたのです(今思えば未熟でした)。

念願かなってNGOの現地駐在員としてカンボジアに渡ったのが1995年、はじめは2年間の予定でしたが、最終的には10年間在住することになりました。

JICAカンボジア事務所では、NGOで働いた経験もあったため、JICAのような政府機関とNGOの連携の仕事から始まり、農村開発分野のプロジェクト企画立案なども担当しました。その過程で出会った現地NGOや起業家達とのディスカッションから、カンボジア人自身の手による開発の可能性を確信するようになり、日本のカンボジア支援も変わるべき時ではないかと思うようになりました。

 カンボジアでの仕事は楽しかったが、自分の役割を見つめ直すために、少し距離を置こうと帰国。休む間もなく渡英、ロンドン政治経済大学院で1年間、社会政策を学ぶ。
十数年国際協力に携わり、カンボジアの援助依存への危機感と外国人による援助の限界を感じました。当時、開発人類学に可能性を感じていたので、留学を決意しました。現場に深く関われる、フィールドワークを学びたいと思っていたのです。でも、学んでいる中で、自分の役割は研究活動ではなく、カンボジアで出会ったような志の高い起業家達の実践を具体的に支援する事ではないか、という思いが強くなります。

支援の方法としては、留学前に偶然目にした社会的投資のアイディアがありました。そこで、帰国後、社会的投資事業を日本で立ち上げるための準備を留学先で出会った友人と共に始めました。大学院で学んだことは、現在の業務に直接関わることではありませんが、カンボジアでの経験を整理し、国際協力について深く考える機会となりました。また、大学院で出会った仲間が立上げに参画してくれたからこそ、今のARUNがあります。彼らとの出会いも、留学時代の財産です。

ARUNはマイクロファイナンス機関への投資ではなく、カンボジアの社会的企業へ直接投資で、ベンチャーキャピタル的な役割です。お金だけではなく、技術や経営支援などもして、事業自体が成功するように活動するので、共に成長する楽しさも体験できます。また、会社自体が形成途中なので、その仕組みをつくるおもしろさも感じていただけると思います。

国際協力活動にどのように関わるか悩み続けていた私にとって、自分が好きな分野で、新しいフィールドを開拓しつつあるという充実感はあります。

—  大切なのはどの組織で働くかではなく、自分自身を生かせる場をつくること
 これからソーシャル・キャリアを積んでいきたい人にとって、自分が考えている国際協力のミッションをどんな組織で具体化させていくかは大きな関心ごとの一つ。さまざまな国際協力組織に属し、その中で確実にスキルアップし、最終的にはカンボジアというフィールドでビジネスを立ち上げた功能さんだからこそ感じる、組織の選び方というのはあるのだろうか。
著名な組織だからといって、必ずしも自分のやりたいことや価値観と合うとは限りません。私は、NGOJICA、世界銀行などの組織で仕事をさせていただきましたが、最終的には、「何を目指して」「誰と共に働くか」が大切だと実感しています。

国連やJICA、世界銀行のように各国の行政機関を相手にして社会の仕組みをつくろうという仕事もあれば、NGOや社会的企業を通して現地の人と密接に関わりながら社会を変えようという仕事もあります。私は「現地の人たちのエンパワーメント」を大切に、自分の道を選択してきました。いずれにしても、まずは一歩踏み出すことが大切だと思います。そこでのご縁というのが、いろんな学びの機会をくれるはず。

私にとって、カンボジアで人が変化していく様子を間近で見られたことは、大きな学びの場となりました。はじめてカンボジアに赴任した当時は、自国の政治や社会問題について悲観的で元気のない人が多くて、本人たちがやる気がなければどんなに援助してもダメなのでは? と思いました。でも、共に活動を続けていく中で、彼らはどんどん変わっていくんです。人が成長していく場に同席させていただく幸運を感じました。人間ってこんなに可能性を持っているものなんだなと感じるし、同時に自分にもまだまだ可能性があるんだと励まされる。もっと勉強しないと、もっと頑張らないと、という気持ちにもなります。挑戦し続けている現地の人たちと対等に仕事をするためには、自分も挑戦し続けなければ。

彼らとの出会いが、私の仕事と人生に豊かさを与えてくれていると感じています。カンボジアは第二の故郷。私に生きる喜びをくれた大事な場所です。

■ ARUN合同会社:http://www.arunllc.jp/

本インタビューは、「ソーシャルキャリアはどうつくる」で公開していた内容と同一です。