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知識・技術を純粋に伝える  ~技術協力専門家(技術移転型)の仕事②~

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1979年に自動車整備の青年海外協力隊員としてケニアに派遣されてから、約30年間、技術移転の現場で活躍されている橋口悦夫さんにお話を伺いました。

「技術移転型」技術協力専門家の仕事について
 

-橋口さんは、東ティモールの道路維持管理能力向上プロジェクトで「技術移転型」の技術協力専門家として活躍されていますが、どのような業務に携わっていますか?

東ティモール(以下東ティ)では、2002年から2004年まで、国際連合平和維持活動(以下PKO活動)として日本は道路・橋梁の維持・補修を担当し、2004年にPKOが引き上げる際、PKO活動で使われた建設機械等が日本より東ティに譲渡されました。

こういった背景のもと、本プロジェクトは、以下の3つの目的を柱に立ち上げられました。

・東ティ政府が道路維持管理・補修事業、および災害時の道路復旧事業を自立して実施するため必要とされるシステムの構築
・道路維持管理技術者および日本より譲渡された建設機械の管理を行うメカニックやオペレータなどの技術者育成
・道路維持管理が適切かつ安全に実施されるための技術支援

このプロジェクトが公示(業務実施契約)されて、日本工営株式会社が受注しましたが、私は、株式会社VSOCから補強として参画しています。現在本プロジェクトには、私を含め4名の技術協力専門家と1名の業務調整員が入っています。

東ティ側のプロジェクト実施機関は運輸通信省*の下部組織である資機材局と公共事業省*の下部組織にあたる道路・橋梁・治水局です。その中で私は、サブリーダーとしての職務と資機材局において、建設機材の管理と整備について技術移転を行う任にあたっています。

他3名は、建設機械の運転操作担当(資機材局)と施工管理担当(道路・橋梁・治水局)、チームリーダーは道路維持管理マニュアル策定や予算管理等(道路・橋梁・治水局)の技術移転を兼任しています。
 

-具体的な業務内容は?


最初は、東ティ側の関係者の知識・技術がほぼゼロからのスタートでした。
例えば、ブルドーザ、日本では皆さん名前を知っていると思うのですが、機械の名前も、ブルドーザが何をするための機械なのかも知らない方が技術移転の対象でした。

こうした状況の中、まず第1段階として、東ティ政府がどんな機械を何台所有し、機械がどのように使われ、どのように管理されているか、どのような状態にあるのかなどを把握するため機材管理台帳データベースを作成することから始めました。

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機械を維持するには、メンテナンスに必要な部品やオイルなど消耗品の補給は不可欠で、そのための経費が必要です。しかし、プロジェクト開始当初は、機材管理に必要な部品購入費や潤滑油等の消耗品費の東ティ側の予算はゼロでした。

そういったことを一から教え、どれぐらいの経費が掛かり、一年間の予算の積み上げ方法を指導していきました。実際に、予算を要求する時には、カウンターパートである資機材局の局長から一緒に閣議に出席してくれと頼まれ閣議に出向いた事もあります。結局外国人は閣議に出ることが出来ず、局長一人でプレゼンテーションを行ったのですが、彼らの努力が実って、今年度は消耗品購入費として約30万ドルの予算がつきました。

そして、2段階目として、管理している建設機材の貸し出し方や、契約書の書き方等を指導しています。民間にリースする際の貸出料金の計算方法などは、当初プロジェクトのTORには含まれていなかったのですが、実際にプロジェクトを進めていく中で、空いている機械は、民間にも貸し出しましょうということになったため、そのリース方法などについての規則作りにも関与しています。

2007年の9月から第3年次として再度派遣される予定ですが、2段階目として既に着手している、入ってきた資金の運用面の強化を継続していくことを計画しています。機械を使えば、当然そのメンテナンスなどの整備が必要になってきます。このため、整備に必要な部品の調達とその管理の仕方についてもOJTを主体にした技術移転を行っていきます。
 

-橋口さんが実際に技術移転する相手はどういう方になるのですか?

私のカウンタパートとしては、資機材局の局長を筆頭に、課長クラス、管理者にあたる5名が対象となっています。実際の技術移転の手法は、OJTを主体にレクチャー(座学)やワークショップを併用しています。メカニックの訓練は約30%がレクチャー(座学)、70%がOJTを含む実習です。

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機材管理のレクチャーやワークショップの際には、カウンターパートに限らず担当の事務職員、メカニックやオペレーターなど、出来るだけ多くの人数を集めて実施するようにしています。

メカニックの座学は通常勤務終了後の夕方(17:00-19:00)や土曜日(休日)に実施しています。

OJTでは、機材管理業務の中で実際に生じた故障等の問題を材料に指導を行うので、職業訓練校のように、あらかじめ何月何日にレクチャーを実施すると決めておくのではなく、OJTをしながら、知識が足りない、ここはフォローすべきと判断した時にレクチャーを行います。

メカニックやオペレーターは約80%が、字が書けない読めないという方々なので、レクチャーを実施するときの教材は、動画(アニメ)を多用するなどの工夫をしています。

英語でプレゼンし、通訳が現地の言葉テトゥン語に訳して進めるわけですが、彼らが本当に理解したかどうか確認するために最後に質問するようにしています。「理解しましたか」と。「理解しました」という返事が帰ってきたら、「では私が今説明したことをもう一回説明して下さい」と訓練生を指名して彼らの言葉で説明させます。我々の技術移転のやり方はこんな感じです。一方通行にならないように相手が理解したかどうか確認をしながら進めるように注意しています。
 

-どのような場所で業務を行っているのですか?

PKOで使用していたプレハブの事務所があって、その中の大部屋のような場所を我々日本人専門家は執務室にしています。カウンターパート達は同じ事務所の中にそれぞれ自分の個室を持っていますが、我々は、誰でもいつでも自由に来て相談できるようにオープンでやっていこうという方針でこの場所を使っています。

ですから、カウンターパート達を始め職員全員と毎日顔を合わせることができる環境にあります。やはり、コミュニケーションが大事ですからね。こういった環境だけは、プロジェクトの最初から築いておかないと仕事が進みません。お互いに顔、名前をよく知って、話し合いながら作り上げていく事が大事です。
 

仕事への携り方

-技術移転の際、コミュニケーション以外で気をつけていることはありますか?

まず相手を知ることですね。はじめのうちは、「これは、知っているだろうか?あれは知っているだろうか?」とカウンターパート達の知識のレベルを確認しながら、自分の知識の引き出しを選び、提案していく。信頼関係を築いて相手側から聞いてきてくれるようになれば、我々は、相手が選んだ引き出しの中身を取り出して見せることができます。

ただ、このためには、相手にやる気を起こさせ、相手側から積極的に聞いてくるようにしむけることが重要になりますが、これが一番番難しい。したがって、現状では相手を見ながら専門家が自分で引き出しを選ぶことの方が多いかもしれません。
 

-印象に残った業務はありますか?

基本的にはないです。普通の事を普通どおりにやっていると思っていますから。
 

-コアになる専門性をお持ちで、これまで長い間、いろいろな国で技術協力専門家として活躍をされてきたと思うのですが、どこの国にいっても、根本にある課題に共通するところはありますか?

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あると思います。我々が優れているわけでなく、日本に生まれ、教育を受け、こういう技術を身につけただけではないかと思います。
ただ違うのは、東ティモールの人々の場合も教育を受ける機会がなかった、経験する機会がなかったということだけだと思っています。

OJTやレクチャーをする時も、知らない事は恥ではない、訓練を受け、勉強し、経験さえ積めば必ず身につくと伝えています。しかし、幸福度という意味では、我々日本人よりたとえ貧乏でも、技術・知識が無くても東ティモールの人々の方が幸せかなと思うことがあります。

今までケニア、ホンデュラス、エクアドル、東ティモールで仕事をしてきて思うのは、我々が持っている知識や技術を伝えることは出来るが、文化的なもの(その技術を生かし、更に広めるための考え)まで変えるのはとても難しいということ。
彼らには、その土地で何十年間生きてきた歴史があるわけですから、彼らの習慣でなかなか変えられない場合もあります。そんな時は、我々の方が相手の習慣に合わせることも時には必要です。一番成果がでる方法をとるわけです。国が変れば、人は変わる、習慣も変わる、技術移転する際も、移転するものは一緒でも、国によってどのように対処し、どう伝えていくかは、柔軟に対応することが大事だと思います。
 

-移転技術はどこか共通するけれど、どのように移転するかというマニュアルはないということですね。

「技術移転型」技術協力専門家の魅力
 

-橋口さんが考える技術協力専門家の魅力とは?

自分が持っている技術・知識を、商売っ気(損得)を抜きにして純粋に相手に伝えることが出来るということですかね。あとは、日本で技術移転をするとなると、自分が関与出来るのは全体の数%になってしまうのに比べて、1から10まで関われるということですね。
 

応募者へのメッセージを

-技術移転型の技術協力専門家になりたいとお考えの方へメッセージをお願いします。

頑張って下さい。
私自身は、別に特別な事をやっていると思っていません。たまたまこういう道に入って、仕事をしているという感覚です。海外で技術移転活動をしているからといって、特別なことをしている意識はなく、ただ自分が持っている知識や技術を同じ人間に伝えているという普通のことをしているだけです。

-どうもありがとうございました。
 
※本インタビューは、「しごと@JICA 活躍するひとの声」で公開していた内容と同一です。