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海外長期研修を経てJICA専門家へ  ~海外長期研修OBのキャリアパス~

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 JICAの海外長期研修は、将来JICA専門家等として国際協力に従事することを望む方の養成スキームのひとつです。この制度を活用してイギリスの大学院に進学し修士号を取得された清水 貴さんは、JICA本部での勤務を経て、現在はルワンダの全国障害者協議会にアドバイザーとして赴任し、活躍されています。
 海外長期研修時の経験、そしてこれまでのキャリアパスはどのようなものだったのでしょうか。お話をお伺いしました。



まず、JICAの海外長期研修に応募された動機と、研修で取り組んだことについて教えてください。

 私は日本の福祉現場で経験を積んだ後に青年海外協力隊に参加してマレーシアに赴任しました。現地で活動を進めて行く中で以前から持っていた「自分の専門である福祉分野で国際協力に携わりたい」という思いが強くなり、多くのポストで求められる修士号と幅広い知見を得るために大学院進学を真剣に考えるようになりました。進学の為にはまず奨学金を得る必要があったので情報を収集していたところ、海外長期研修制度について知ったのが応募のきっかけです。海外長期研修への応募や進学にあたっては色々な方に相談をしましたが、当時のJICAマレーシア事務所や専門家の皆さん、協力隊の仲間達が背中を押してくれた事がとても心強かったですね。
 進学した英国サセックス大学開発研究所(IDS)では貧困と開発コースを選択しました。社会福祉学や障害学のコースがある大学院も検討したのですが、援助を必要とする個人や集団が抱える課題だけでなく援助が必要とならざるを得ない社会の構造や貧困そのものについて学ぶ事が先々役に立つのでは、と考えたからです。また、IDSには参加型開発の第一人者であるロバート・チェンバースが在籍しており、彼のワークショップに参加出来るというのも大きな動機でした。

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(写真:イギリスの大学院時代、課題ペーパーを書くための参考文献の山)

 貧困と開発コースは経済学を基盤とした内容だったのでキャッチアップするのに苦労しましたが、おかげで福祉分野とは異なる目線を養う事が出来たと思います。山のようなリーディングリストや課題ペーパーをこなすために朝から晩まで図書館に籠った日々も今ではいい思い出ですね。IDSでは生徒がチームを組んで取り組む課題も多く、そのプロセスを通じて異なる文化背景を持つ人達と協働する難しさや楽しさを経験出来たのもその後のキャリアで役立っています。また、時折開催されるロバートの週末ワークショップには毎回参加しました。今の仕事では自分がワークショップを企画・開催する機会がありますが、彼の本をいつも肌身離さず持って行きます。彼のように誰に対しても誠実に対応し、いつもユーモアが溢れるプロフェッショナルになりたいです。


海外長期研修を終えて今日までのキャリアパスを教えてください。

 大学院卒業前からPARTNERなどを通じて情報を収集しましたが、なかなか自分の希望に合うポストが見つからず焦りました。そんな時も親身になって相談に乗ってくれる先輩方がいたのはありがたかったです。帰国後しばらくしてJICA人間開発部社会保障チームで専門嘱託の募集があることを知り、PARTNERを通じて応募、運良く採用された時は本当に嬉しかったです。JICA本部では職業訓練、障害と開発、公的雇用といった分野の技術協力を担当しました。それまで福祉現場一筋だった自分が様々な分野の技術協力プロジェクト立ち上げ及び本部側での進捗管理、国内協力機関との連携調整、各分野の資料作成といった業務に慣れるのは大変でしたが、上司や同僚に恵まれたおかげで3年間充実した経験を積む事が出来ました。もちろん海外長期研修での経験は業務上大きな助けになりました。IDSで学んだ援助の潮流に関する知識は協力方針を検討する上で不可欠でしたし、出張先でIDSの友人に会って調査だけでは見えてこない現地の情報を得る事もありました。調査中に先方政府と署名・交換する文書を徹夜で仕上げる作業は課題ペーパーの提出期限に追われている状況と似ているかもしれません(笑)
 また、大学院時代は表面的にしか理解していなかった知識を実務に照らし合わせる事で、ようやく腑に落ちることも多々ありました。今振り返ると、海外長期研修とJICA本部での実務経験は自分の中で理論と実践を両立させるために不可欠な一対のプロセスだったように感じます。


現在は専門家として活躍されていますが、担当している業務について教えてください。

 20152月からルワンダの全国障害者協議会(NCPD)にアドバイザーとして赴任しています。ルワンダでは1994年の虐殺で障害者になった兵士への支援が社会の安定に不可欠であったことから様々な支援が入り、中でもJICAが実施した「障害をもつ元戦闘員と障害者の社会参加のための技能訓練及び就労支援プロジェクトECOPD)」は現地で大きな評価を受けてきました。他方で一般障害者のニーズが社会に反映されているとは言い難く、元兵士と比べても受けられる公的支援はほぼ皆無に近い状態です。2011年にルワンダ政府は障害者の声が各政策に反映されるようNCPDを立ち上げましたが、設立して間もない組織が期待される役割を果たすことは容易ではありません。2014年にECOPDが終了するにあたってルワンダ政府とJICAがこの点について協議し、アドバイザーを派遣してNCPDの機能強化を図ることになったのがアドバイザー派遣の背景です。

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(写真:ルワンダでの関係機関への活動提案を行っているところ)

 まだまだ歴史が浅く課題山積のNCPDで何から手を付けていくべきか赴任直後は悩みましたが、現在は主に障害者登録制度の立ち上げと関係機関の連携強化に取り組んでいます。ルワンダをはじめ多くの途上国では、障害者に関する正確な情報が整っていないために当事者のニーズに合った政策やサービスをデザインする事が困難です。最初から質の高い登録制度を立ち上げる事は出来ませんが、まずはNCPDがこの制度を自分達で「育てる」という自負を持ってもらいたいと考えています。障害者への公的支援を含む社会保障制度は社会のあり方に直結するものですから、援助の潮流やドナーの時限的な取り組みばかりを追いかけるのではなく、現地の障害者の声をよく聞きながら政府が中長期的な視点を持って身の丈にあった制度を組み立てられるようにサポートしていきたいですね。関係機関の連携については、多くの途上国においてそうであるようにルワンダでも公的機関とNGOなど民間機関の関係が必ずしも良好とはいえません。双方からの情報共有など、お互いにとって有益となる活動を少しずつ進めているところです。まだまだ試行錯誤の毎日ですが、NCPDのオーナーシップを尊重しながらそのプロセスを一緒に経験していきたいと思います。


最後に、海外長期研修への応募を考えている方へのメッセージをお願いします。

 海外長期研修に興味を持たれている方の多くは、将来的に国際協力分野でのキャリアを考えていらっしゃると思います。これまでのご経験や大学院での学びを活かしてどのように途上国へ貢献したいのか、イメージを明確に持つ事が出来ると海外長期研修の選考にあたって説得力が増しますし、進学後も筋の通ったキャリアをデザインしやすいかもしれません。
 あと、この分野で活躍されている先輩方を思い浮かべると、どなたも人とのつながりをとても大切にされている気がします。そういった方々は受け取ったバトンを次により良い形で渡そうと真摯な姿勢でお仕事をされていますし、そんな背中を見てきているので私自身そうありたいと思っています。突き詰めると国際協力は人と人のつながりの中で形づくられていく仕事だと思うので、是非海外長期研修の経験を通じて色々な人と交わり、そのつながりを大切になさってください。ルワンダから応援しています!

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