2011年度第一回活力セミナー「広報のチカラ。ソーシャルメディアの活用術」編 

 2010年度PARTNER登録団体の皆さまのための「活力セミナー」を、2011年5月27日(金)に、JICA地球ひろば(東京都渋谷区)において開催しました。
セミナー会場の様子
 講師には、今年度の新コンテンツ「広報のチカラ。ソーシャルメディアの活用術」の執筆者の一人であり、プロボノ集団「テントセン」代表、マーケティングコンサルタント、ブロガーと、ソーシャルメディアの分野で幅広くご活躍中のイケダハヤト氏を迎えました。
 今回のテーマは、「ソーシャルメディアの活用術 〜ソーシャルメディアを用いた効果的な広報活動とは〜」で、サブ・スピーカーとして日本ブラインドサッカー協会でインターンとして、ソーシャルメディアを担当する、慶応大学理工学部在籍中(2011年5月27日現在)の植原 正太郎氏にもお越しいただきました。当日は、51団体75名の皆さまに参加いただきました。

 一歩踏み込んだソーシャルメディアの活用方法とは。
  〜入門から実践まで〜 “「公園」で支援者を集めるために”

今回のセミナーでは、ソーシャルメディアについて、3つのテーマについてお話しいただきました。

  1. ソーシャルメディアとは何か?
  2. ソーシャルメディアで寄付は集まるのか?
  3. ソーシャルメディアでどのように情報収集するのか?

イケダ ハヤト氏

1.ソーシャルメディアとは何か?

 ソーシャルメディアを「公園」とイメージすると理解しやすくなります。公園という場所には、様々な動機を持って多様な人々が集まっています。ランチをしていたり、会話を楽しんでいたり、スケッチをしていたり・・・。つまり、ソーシャルメディアは、オンライン上で様々な目的を持った人々が集っている場所といえます。企業やNPO/NGOがこの中に入っていき、人びとに話を聞いてもらう場合には、場の雰囲気を壊さないように、どのようなアプローチで「入っていく」かが重要です。

ソーシャルメディアは、企業やNPO/NGOのマーケティングツールではなく、個人のコミュニケーションツールである。
 イケダ氏がプロボノとして関わっているエイズ孤児支援NGOのPLASでは、Twitterの公式アカウントを作って専任担当者を設定せずに、メンバー15人がそれぞれ個人アカウントを作って活用しています。現在、メンバー全員を合わせて25,000人程のフォロワーを通じて情報伝播されるため、結果的には10万人から20万人にPLASの情報が拡がるということになります。これまで、イベント集客やボランティア募集、エイズ孤児啓発キャンペーン“1 tweet, 1 smile”の告知に活用してきました。特に、キャンペーン告知では、関連するキーワードがTwitterに600万回表示され、個人アカウント全員のフォロワーが2,000人、代表の門田氏のアカウントのフォロワーも1,500人増えました。また、どのような人がPLASのファンになり、活動にエンゲージする(感情的に結びつく)かが分かるなど、ファンの可視化ができました。
 一方、Facebookは、広告が出せる(有料)という利点があります。Twitterも広告が出せるのですが、単価が高く、フォロワー獲得のためのツールでもないため、NPO/NGOが広告ツールとして利用するには適していません。また、Facebookは年齢、性別、趣味など条件で抽出が可能なため、ピンポイントでメッセージを訴求することができます。
 また、PLASでは、Facebookをメーリングリストのような、内部のコミュニケーションツールとしても活用しており、例えば、4月でPLASを卒業したコアボランティアとの関係維持に活用しています。
 Facebookでは、「友達」登録をすることで、登録した「友達」の情報が集まり、またそうした「友達」のみを公開対象として設定し、コミュニケーションを取ればクローズドなコミュニケーションをすることも可能です。こうした使い方は、組織内の情報共有や、議論などの社内コミュニケーションに活用することができます。
 また、プロボノの募集がやり易くなったなど、Facebookのようなソーシャルメディアは、広報ツールとしてよりも、組織内外のコミュニケーション活性化により、コラボレーションを促進するという意外な効果もあるのです。

ソーシャルメディアとは、「公園の人気者」になって、ファンを集めるツールである。
 ソーシャルメディアでは、ある特定の内容についての情報だけでなく、役立つ情報や元気の出る情報、専門性・先見性のある価値ある対話や、哲学のあるオピニオンの発信をすることもできます。
 NPO法人フローレンスの代表である駒崎弘樹氏は、ソーシャルメディアを駆使して、自身の団体についての情報のみならず、あるTwitterアカウントからスパム的なメールが流れているなどの役立つ情報、経営者としての情報も発信しており、同時にTwitter上にあるフローレンス関連のつぶやきを常時チェックし、自ら対応しています。そのため、例えば、フローレンスのセミナーに参加した人がセミナーについて何気なくつぶやいた時に、直接代表から反応があったりすると、つぶやいた本人は感動し、こうしたエピソードをきっかけにエンゲージしたりするのです。
 また、各種ソーシャルメディアには、おおよそですが、次のような利用者の傾向があるので、メディアを使い分けるのも一つの戦略となります。

メーリングリスト 40〜60歳代(比較的年齢の高い人々)
mixi 大学生(新しいメディアに対し、比較的保守的、地方在住)
Twitter 大学生、若手社会人=(新しいメディアに対し積極的、都市部在住)
Facebook 大学生、社会人

 こうしたターゲットを意識し、プロボノやマーケティング・PRのボランティアはTwitterで、イベントなどのボランティア集めはmixiで、という風に、メディアの使い分けができます。
 TwitterやFacebookは、ユーザーとの接触頻度が高く「擦り込み効果」も期待できるので、前出のエイズ孤児支援NGOのPLASの場合なら、ソーシャルメディアを活用して、団体のキーワードとなる「アフリカ」と聞いたら「PLAS」、「AIDS」と聞いたら「PLAS」を思い浮かべてもらう効果も期待できます。

2.ソーシャルメディアで寄付は集まるのか?

 NPO/NGOの運営に大きく影響する寄付ですが、(日本では未だ少数派である)遺産などの多額を寄付する大口寄付者、気が向いたときにちょっとした額を寄付する小口寄付者や、これから寄付をしそうな人などが存在し、いくつかの層に分かれます。ソーシャルメディアは、「これから寄付をしそうな人」の巻き込みに向いています。
 例えば、Twitterでイベントの集客をし、イベントの会場でその場で寄付、或いはマンスリーサポーターになるなど、ソーシャルメディアは関心を持っている人を行動へ導く、つまりオンラインでの共感を「オフライン(現実・行動)」へ人を持って来るツールだと言えるでしょう。オンラインでこうした支援を得られるメディアはあまりないのではないでしょうか。

3.ソーシャルメディアでどのように情報収集するのか?

 Twitterは、情報収集のためのカスタマイズをすることができます。例えば、キーワードで検索する場合でも、自団体についてだけでなく、競合団体に関するつぶやきをモニタリングすることもできます。また、多くの社会起業家がTwitterを利用し、各種の専門家が情報発信もしているので、様々な情報を入手することが可能です。そうした意味では、Twitterはニュースメディアのひとつといえます。

以上が、イケダ氏による講演の概要です。
 続いて、ゲスト・スピーカーとして、日本ブラインドサッカー協会のインターンとして、同協会のソーシャルメディアの立ち上げに従事した植原氏より、講演をいただきました。

 NPO/NGOがソーシャルメディアを使用する時に重要なこと
〜日本ブラインドサッカー協会のソーシャルメディア導入経験より〜

 サブ・スピーカーの植原氏がインターンを務める日本ブラインドサッカー協会では、1年程前にTwitterを導入しました。目的もなくスタートし、イギリスでのブラインドサッカー大会に自ら出張し、現地から試合を配信するなどして、現在は2,000人のフォロワーを獲得しています。

植原 正太郎氏

『誰がやるか』=インターンを活用する

 NPO/NGOでは慢性的にマンパワーが不足しているため、Twitterなどの新しいことを始めようとしても、なかなか取り組むことができません。そのような状況の中でも、すぐにもソーシャルメディアの活用を検討するなら、学生インターンを活用することをお奨めします。学生がお奨めの理由は、①ソーシャルメディアになじんでいる(生活の一部)ので、ソーシャルメディアの担当に際しハードルが低い、②比較的自由になる時間が多く、(団体の活動をサポートする)コミット量の確保ができ、継続的に情報発信ができる、③フットワークが軽いからです。
 ただ、学生インターンに、その組織の顔となる広報を任せることになるので、注意しなければならないのは、①その学生インターンが信頼できるか、②団体全体について把握できているか(突っ込んだ質問にも、きちんと対応できるか)、③ソーシャルメディアに興味があるか、を確認することです。

代表にも情報を発信してもらう

 団体の代表は、団体を設立するほどの思いがあるので、団体が伝えたいメッセージを最も強く持っています。例えば、PLASの代表門田氏は、個人アカウントでTwitterを使いながら、団体情報も発信しています。また、フローレンスの代表駒崎氏は、自身のオピニオンを発信することで、関心喚起をし、人々がフローレンスに関わりたいと思う気持ちを醸成しています。
 このように、代表がソーシャルメディアを通じて情報発信をすることで、団体への共感を生み、活動への応援につながり、その結果寄付や支援につながるのです。

最も大切なのは“愛情”です

 みなさんが友達になりたいと思う人は、どんな人ですか?
 自分の話を親身になって聞いてくれる人、一方通行ではない相互のコミュニケーションができる人と友達になりたい、と思うのではないでしょうか。それは、オンラインでも同じです。
 愛情をもって人に接するソーシャルメディアを活用することで、人々に理解され、結果としてオフライン・オンラインに関係なく人が集まってきます。

 <質疑応答>

 最後に質疑応答の時間を設け、今回のセミナーは終了しました。 質疑応答の様子

  • Q.どのくらいの時間をTwitterのフォローや、情報収集に充てているのですか?
  • A.(イケダ氏)現在7,000人くらいをフォローしており、Twitterのリスト機能を使ってNPO系やソーシャルメディア系など、1日45分くらいを充てています。他にも200件近いブログをチェックしていますが、更新のあったものを読んでいます。スマートフォンを使うと、電車で移動中や歩いている時などの細切れの時間でチェックできます。スマートフォンでのチェックは、1日30分程度で、60分以内を心がけています。
  • Q.ソーシャルメディアでフェアトレード商品販売の集客をしたいのですが、①自分を除き、スタッフは全員ソーシャルメディアの使い方が分かりません。巻き込む方法を教えてください。②目標設定は、売上やファン数など何を数字にすればいいのですか。
  • A.①については、先ずは上司の理解が必要です。その上で、競合団体の成果をネタにコミュニケーションして上司を啓蒙します。或いは、反発を受けない程度に小さくスタートして、先ずは始めてしまうことです。こうして、試験的な取り組みが意外な成果を上げることができるかも知れません。
     ②については、商品などの販売ですが、ソーシャルメディアは売買目的のツールではないので、非常に難しいです。ソーシャルメディアは、「買ってもらう人」(=ファン)の獲得を目的にして、例えば、商品を買ってくれた人のうち、どのくらいの人が自分たちのFacebookなどを知っているかなどについてを、「寄与度」として知ることはできます。または、イベントの集客で、どのくらいの人がソーシャルメディアをきっかけにして参加したか、という数字を測ることもできます。
質問に回答するイケダ氏、植原氏
  • Q.Facebookを団体で使う予定です。Twitterはフォロワーも増えてうまくいっているのですが、Facebookが今ひとつ使いこなせず、労力を割く価値があるのか疑問です。団体ホームページと同じ情報でいいのか、リンクを貼るだけで見てもらえるものか、わかりません。
  • A.労力については、私自身もFacebookの使用価値まではまだ見えていない段階ですので、先ずはミニマムで取り組むといいでしょう。Facebook独自のコンテンツを新しく作るとなると負担になるので、過去のホームページ記事などを活用する程度でいいと思います。そうすることで、本当に必要な労力や時間も見えてくるでしょう。写真や動画は、団体内でのコピーライトで制限がある場合には、YouTubeなど外部から取り入れることもできます。このように、他の人の記事を取り入れると、意外にもそういった記事の方が受けがいいこともあります。

 <懇親会>

 セミナー終了後に、懇親会を開催しました。
 約30名の出席があり、イケダ氏や植原氏に、疑問点や自分の団体に関するアドバイスを求めるなど、盛況のうちに散会となりました。

 <当日のプログラム>

《 開催日時 》 2011年5月27日(金) 10:00〜13:00
《 会 場 》 独立行政法人 国際協力機構(JICA)地球ひろば 講堂
《 プログラム 》

  • 10:00〜10:05 開催挨拶 国際協力人材部 国際協力人材センター課
  • 10:05〜11:45 「ソーシャルメディアの活用術」①講演 ②質疑応答
  • 〜ソーシャルメディア用いた効果的な広報活動とは〜
  • ■イケダ ハヤト氏(プロボノ集団「テントセン」代表 マーケティングコンサルタント)
  • ■植原 正太郎氏(慶応大学理工学部、日本ブラインドサッカー協会)
  • 11:45〜12:00 閉会、休憩
  • 12:00〜13:00 懇親会

 <講演者プロフィール>

【 イケダ ハヤト氏 】 マーケティングコンサルタント/ブロガー
企業のソーシャルメディア戦略のコンサルティングを行う傍ら、プロボノ集団「テントセン」代表としてNPOのウェブマーケティング支援を行う。
著書「フェイスブック 私たちのビジネスと生き方はこう変わる(講談社)」

【 植原 正太郎氏 】 慶応大学理工学部、日本ブラインドサッカー協会