ネットワーク型NGOとして、日本の国際協力NGO同士、あるいはNGOと政府・企業を結び付けることでNGOの活動を支援する、特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター(JANIC)。そんなJANICがこのたび、「NGO組織強化大賞」を企画されたということで、企画担当者である津島由美子(つしま・ゆみこ)さんにお話を伺いました。
 JANICが"組織の力"に着目した理由、そして、お話から見えてきたNGO/NPOの抱える課題と、課題解決に向けた取組みについて探ります。

※「NGO組織強化大賞」とは…
 JANICがNGOの組織強化を目的として、立正佼成会一食平和基金との共同事業として行っている「NGO切磋琢磨応援プロジェクト」。その一環として、組織強化に関する優れた取組みを表彰し、各団体の取組みを共有して活かし合うことを目的に企画されたのが「NGO組織強化大賞」です。第1回(2015年度)の大賞決定イベントおよび授賞式は、JANICの「会員の集い」イベント内で行われ、各部門賞受賞団体によるプレゼンテーション、参加者と審査員の投票による大賞決定の他、参加者間によるグループディスカッションが行われました。
NGO組織強化大賞の詳細はこちらから
http://www.janic.org/pressroom/pressrelease/ngo_soshikikyoka2015.php

●「NGO組織強化大賞」の取組みに込めた思い
 日本においてNGO活動が活発化した30年ほど前には、NGO活動に関わる方の多くが、自身の生活を二の次にして、まさに「手弁当」で、貧困削減や紛争解決等といった各団体のビジョン達成に向けて邁進されていました。待遇・給与面でNGOが民間企業に及ばない、という点は現在もまだまだ改善の途上と言えます。しかし近年、支援者の方々の年代や関心事項や支援者の方から頂く寄付金、NGOが世間に与える影響といった、NGOを取り巻く環境は大きく変化してきました。その変化を受け、ビジョン達成のために途上国の現場で活動する力だけでなく、その力を下支えする「組織の力」を強化する必要性を見直すようになり、JANICと立正佼成会一食平和基金は「NGO切磋琢磨応援プロジェクト」を2015年度に立ち上げました。
 その一環として、「NGO組織強化大賞」を企画しました。本企画はワーク・ライフ・バランスだけに注目している訳ではありませんが、今回の企画・運営の中で、NGOに共通のワーク・ライフ・バランス上の課題や解決するための取組みも見えてきました。

●多くのNGOが抱える共通の課題
 「NGO組織強化大賞」の企画にはJANICの会員NGO関係者にも参画してもらいました。その中で、部門賞を設定することが提案され、意見を出し合った結果、4つの部門が設定されました。「経営・戦略」「働き方改善」「担い手育成」「女性スタッフの登用・活躍」の4部門は現在、多くのNGOが共通して強く関心を寄せるテーマであり、共通して抱える課題であるとも言えます。  例えば、日本のNGOは世界の他地域と比較すると小規模な人員で活動していることが多いため、一人一人の負荷は重くハードワークになりがちです。海外駐在員がいるNGOの場合、時差のある現地との調整のために夜間や早朝に仕事することがあります。そういった状況を改善していくため、多様な働き方、例えばテレワークや在宅勤務、時短勤務やフレックス制度といった仕組みの導入に、多くの団体が着目しています。その視点から設定されたのが「働き方改善」部門です。
 また、NGOの人員構成として有給職員のうち女性職員が占める割合はかねてから多く、年代としても、いわゆる出産・育児世代にかかる女性が多いことが調査からみられます(JANIC発行NGOデータブック2011、2016より)。しかしながら、産休・育休制度は漸くここ数年で整ってきたのが実情です。また一方で、経営層・管理職に関して分析すると、男性の比率が圧倒的に多く、女性自身が、更にハードワークとなる管理職への昇進に躊躇することも影響していると言われます。以上の傾向を踏まえ設定されたのが「女性スタッフの登用、活用」部門です。
 性別という観点でみると、給与等の待遇面の課題から、男性スタッフの"寿退社"が多い点も、結果的に女性スタッフの比率が多くなる要因であり、NGOの特徴と言えるかもしれません。待遇面は以前に比べ随分改善されましたが、まだ道半ばです。

●課題の根底にある「小規模であること」は、強みにもなる?!
 「NGO組織強化大賞」のイベントは、JANIC会員の有無を問わず、一般の方にも公開したところ、80名を超える方に参加いただきました。
 当日は、前述の部門毎のテーマに分かれ参加者によるグループディスカッションが行われたのですが、「働き方改善」のテーマではスタッフのライフステージの変化(育児・介護等)に応じてどういった職場環境の整備や働き方の見直しが出来るか、という点に特に関心が寄せられていました。「女性スタッフの登用、活用」のテーマでは、育児や介護のライフイベントに加え、それに対する男女間での意識の相違による女性の働きにくさ、また、女性が管理職として働き続けられる土壌がない、といった、女性職員の経験を踏まえた"より踏み込んだ"議論となりました。
 いずれのテーマにおいても、解決策として、具体的な勤務形態・制度やNGO/NPO向けの無料情報管理サービスの活用といった事例が紹介されましたが、参加者が共通して「最も大事」と挙げたのは、実は、「組織内のコミュニケーション」でした。例えば同じ女性であってもライフステージによってニーズがそれぞれ異なるという点をお互いに理解し合うこと、その上で、個々人が今抱えている悩みや必要としているサポートを徹底的に可視化し、共有し合うことで、組織として如何に対応できるかを話し合うことが大切、ということです。
 ハードワークであることや、出産・育児というライフイベントを控えた女性職員の代替人員の採用や配置が難しいと言った課題は、小規模故に生じやすいものかもしれません。一方で、「組織内のコミュニケーション」が個々人の課題解決の近道になると考えられるのは、小規模ならではと思います。
 各NGOは同じビジョンをもって集まった仲間であり、縦割りにもなりにくく、そもそも組織における課題は皆で話したほうが早いという考えやコミュニケーション重視という意識は強く、普段から意見交換ができる場を持っている団体が多いのです。実はJANICでも、管理職を含む全員で意見交換する場を定期的にもつようにしています。こういった風通しの良さ、一人一人のことを皆で考えられるという環境は、NGOの強みとも言えるかもしれません。

●NGOで働くすべての人が生き生きと活動するために
 「女性スタッフの登用、活用」部門の部門賞に選出されたのは、特定非営利活動法人ACEです。代表と事務局長が共に女性、その二人が立て続けに産休・育休を取得することになり、事務局の運営は危機的な状況になる訳ですが、それを如何に打開したか、という取組みが評価されての受賞です。

特定非営利活動法人ACEの取組み 詳細はこちら

 「働き方改善」部門では、エイズ孤児支援NGO・PLASが部門賞に選出され、イベント当日の参加者と審査員の投票により「第1回NGO組織強化大賞」に決定しました。PLASに関しても、取組みのきっかけはACEと同様に女性管理職の出産・育児に伴う働き方の変化からでした。PLASは取組み自体の有効性だけでなく、多様なバックグラウンドのある職員が皆、"生き生きと"働いているということが良く伝わってきました。「NGOで働くこと」を明るく前向きに捉えられたという点に、評価が集まった模様です。
 授賞式の際、審査員の方が総評で「現状に至るまでには、多くの悩みと血の滲むような努力があったはずであり、その苦労があるからこそ今、PLASという組織や、その中で働く人が輝いて見えるのですね」とおっしゃっていたことが、大変印象に残っています。

エイズ孤児支援NGO・PLASの取組み 詳細はこちら

 私たちが目指す組織強化の先には、NGOがミッションを果たし社会に貢献することを見据えています。NGOに関わる個々の人が、目標達成に向かって生き生きと働ける、ということももうひとつのゴールとも考えます。NGOで働くすべての人が、生き生きと多様な働き方を実践しながら、国際協力を実現していく。それを目指しながら、今後も組織強化に取り組んでいきたいと思います。「切磋琢磨応援プロジェクト」の名の通り、NGO全体で活動を共有し合い高め合う、そんな場になってほしいと、運営側として願っています。