インタビュー・対談企画
国際協力を志してインターンに参加する人、
インターンをきっかけに国際協力への道が拓ける人---
インターン参加者の参加動機も、その後の進路も多岐にわたります。

  ---インターンの魅力とは。インターンが進路選択に与えた影響とは。

 インターンを契機に国際協力の道へ、2名のJICA職員の場合

今回は、JICAインターンを経てJICA職員としての道を選択し、国際協力の道を歩み始めたお二人に話を伺いました。

■プロフィール
三藤悠子(さんとう・ゆうこ)さん
国際協力機構(JICA)人事部所属
2009年、大学院(国際関係研究科)のときにJICA東南アジア第二部のインターンに参加。
テーマは「カンボジア国に関する開発援助プログラム」。
2011年4月、JICA入構。
ゾウ ゾウ アウン さん
国際協力機構(JICA)人間開発部所属
2013年、大学院(総合文化研究科)のときにJICAカンボジア事務所のインターンに参加。
テーマは「カンボジア日本人材開発センターのService & Culture部門における業務補助」。
2015年4月、JICA入構。

(以下、敬称略)

今回は、「インターン・スタディツアー特集」のインタビュー第1弾ということで、JICAのインターンを経たのちにJICA職員として働くことを選択したお二人に、話を伺いたいと思います。経歴の他にも、インターン参加時のテーマに「カンボジア」が関わっている、という共通項があるお二人ですが、それぞれ、どのような思いを胸にインターンに参加されたのでしょうか。

―まずは、インターンに参加されたきっかけや動機についてお聞かせください。

ゾウゾウ: もともと中学生の頃には将来的に国際協力の道に進みたいという思いがあり、大学では国際関係学、大学院では教育開発を専攻していました。大学院で研究していく中で、文献などを通じてアカデミックな学びを得ることはできていても、自分にはプラクティカルな知識や現場経験が絶対的に足りていないと感じ、大学院のうちに開発の現場を見たい、と考えるようになりました。
そこで、研究テーマとして予定していた、人間開発や産業人材育成の事業に関わることのできるプログラムがないか、さまざまな団体のHPなどを通じてインターン情報を調べていたところ、産業人材育成事業を行っている、JICAのカンボジア日本人材開発センター(以下、CJCC)でインターンを募集しているのを見つけました。それが、応募のきっかけになります。
三藤: 私は、実は、ゾウゾウさんのように最初から国際協力の道を志していた訳ではありませんでした。当時、大学院で国際関係学を専攻しており、研究テーマが国際司法、特にカンボジアのクメール・ルージュ裁判(注1)でしたので、研究対象であったカンボジアについて、フィールドワークへ行く前にもっと深く知りたい、自身の研究テーマ以外の側面からもカンボジアを見てみたい、と考えていました。そこで指導教官に相談したところ、JICAインターンの存在を教えていただき、調べてみると運よく募集要項の中にJICA本部(地域部)のカンボジアを担当する部署で募集があり、応募したのが参加のきっかけです。大きな動機は、カンボジアについて知ることができるかもしれないという期待です。

―インターンにどのように取り組まれましたか。

ゾウゾウ: 募集時点でテーマは予め決められていますが、そのテーマに沿った詳細の目標設定は自分で行っていくことになりました。当時、CJCCが課題としていたのは広報の強化でした。私がインターンに参加した当時は、CJCCのすぐ近くにカンボジア韓国協力センター(CKCC)が出来、また、援助ドナー国の数が増大しているという環境の変化の中で、CJCCがカンボジアの発展にいかに寄与できるかをアピールし、理解を得る必要がありました。そこで、私が取り組ませてもらったのが、既存のツール(Facebookなど)の有効な活用方法、効果的な広報の仕組みの検討でした。 JICA職員

―初めての現場、それも1か月半という短い期間で広報とは、なかなか難しい挑戦だったと思うのですが。

ゾウゾウ: 勿論、職員の方のサポートがありますし、CJCCにおいては、職員だけでなくナショナルスタッフ(=在外事務所の現地採用スタッフ)の方たちの非常に丁寧なサポートがありました。単に広報という業務に関してのみではなく、CJCCの業務全体が理解できるよう、ブリーフィングなどもしてもらいました。
三藤: JICA職員私の場合は、まずインターンの選考過程で面接を受けた際に、私自身の興味・関心についても大変丁寧に聞いていただいたと記憶しています。その中で、ガバナンス・法整備の分野に関連する業務に関わることで、大学院での研究についてもより理解が深められるのではないか、とアドバイスをいただきました。
当然、募集時点で大まかな課題テーマは決まっており、インターン期間中には受け入れ先の部署においても、予めその課題に沿った、インターン期間中に取り組める作業を準備していただいていました。一方でそれ以外にも、私の興味・関心に合わせ、セミナー運営を含むさまざまな業務のサポートをさせていただいたり、開発の現場で活躍している人を紹介していただいたりと、貴重な機会を多くいただきました。JICAの事業について、また、関心のある分野について、私自身の理解を深めるために周囲の皆さんの協力をいただいた、という感じでした。
JICAのインターンは複数の部署で実施されているのですが、インターンの内容は部署によっても、実施年によっても、異なるのだと思います。

―インターンの経験を振り返って思うことはありますか。

ゾウゾウ: 事前準備、特に、カンボジアという地域に関して、大学院の友人に聞くなどして情報収集していたのですが、予め業務のイメージを持ってより深く調べておけばよかったと思います。インターン先で自分の考えるアイディアが、果たしてカンボジアの人・土地に対して有効なのか、なかなか自信が持てず初めは発言に躊躇しました。
インターンはあくまで就業体験なので、基本的に教えてもらう立場ではあるのですが、事前にインターン先で働くイメージやアイディアを持っておけば、もっと、インターン先に貢献することができたのではと思います。
ナショナルスタッフとのコミュニケーションについても同様で、日常の業務にはナショナルスタッフのサポートや巻き込みが非常に重要だったにもかかわらず、最初は言葉の壁、文化の壁を感じ、うまくコミュニケーションをとることができませんでした。事前に、コミュニケーション方法についてもイメージを膨らませておけばよかったと思います。
三藤: 先程の話にも関連しますが、ただ情報収集の場とするだけでなく、目に見える何らかの成果を残すべきだったなと思います。インターン終了後に、全インターン参加者が集まって活動結果を共有する報告会があるのですが、報告内容が「実際の職員の業務補助を行い、何らかの成果をあげた」というケースと「自分の知識の幅が広がった、学びの場として活用した」というケースの2パターンに分かれていました。私は完全に後者だったので、前者の方の報告を聞いて初めて、インターンにはそのような参加の仕方や姿勢もあったのか、と気づかされました。インターンだからこそ、後者の立場での参加もよいのかもしれませんが、同じインターンという機会の活かし方が自分とは全然違うことに、当時は衝撃を受けました。

―お二人とも、まずは反省点をあげていただきましたが、逆にインターンに参加して得たものは何でしょうか。

三藤: インターンで得た財産は、一言でいうと、“人間関係”に尽きます。JICAでの仕事は、課題・地域など、非常に幅広く深い知識が必要なのですが、個人の経験や知識には当然、限度があります。ですから、いかに質問したり相談したりできる相手がいるか、という人的ネットワークが重要になります。新入職員にそのネットワークは最初ありませんが、インターンを経験していると、当時指導いただいた方、紹介されお会いした方が既に組織内にいましたので、いざという時に頼れる相手がいる、というのは精神的にも本当に心強いことだったと思います。実際、入構後もインターンでお世話になった方々には、いろいろお声掛けいただいたり、ご指導いただいたり、こちらから担当している案件の件でご相談をしたりしています。インターンとしてお世話になった方と、今度は職員として一緒に協力しながら仕事をさせていただけるということは大変嬉しいことですし、仕事以外の面でも気に掛けていただきお声掛けをいただく方がいることも、本当に心強いことです。
ゾウゾウ: まさに、新入職員の身としては、頼れる人がいることのありがたみを実感しているところです。OB・OG訪問という手段も勿論あると思いますが、単に人から紹介されたものではなく、インターンという機会を通じて自分自身でつくった人的ネットワークだからこそ、ちょっとしたことでも気軽に相談できています。
私自身は入構したばかりなので、仕事上で役立った経験というものはまだないのですが、これから活用したい点が二つあります。一つは、在外事務所においてナショナルスタッフとスムーズに信頼関係を構築すること。7月にはOJTでJICA在外事務所に行くことになっていますので、さっそくインターンでの経験を活かしたいと思います。また、広報担当でなくとも、JICAの事業について発信し、理解を得ることは職員として大事なことだと考えています。どのような広報が効果的か、インターンでの経験をもとに今後も考えていきたいと思っています。
JICA職員

―現在、JICA職員として国際協力の仕事に携わっていらっしゃるわけですが、インターンの参加がキャリア選択に与えた影響についてお聞かせください。

ゾウゾウ: 最初にお話ししたとおり、もともと国際協力の道へ進みたいという思いはありました。しかし、あくまで「思い」だけだったので、本当に国際協力が自分に向いているのか・出来るのか、確かめたい、というのもインターン参加の動機の一つでした。
結果、インターンの経験を通じてJICA事業の国際貢献や国際協力における日本のプレゼンスを肌で感じることができたこと、周囲の人間関係にも恵まれたことで、今後、自分もその事業を担う一員になりたいという思いが強くなりました。ですから、インターンの参加が「思い」を「決意」に変える一つのきっかけになったと言えると思います。
三藤: インターンに参加するまではJICA事業そのものにそれほど関心があったわけではありませんでした。しかし、インターンの後にカンボジアへフィールドワークに行き、現地の実情をみたことで、開発途上国には法律だけでは解決できない課題が多くあると感じました。それらを解決するために自分にできることは何だろうと考えたとき、JICAであれば開発途上国の発展に貢献する仕事ができる、ということに思い至り、JICAを就職活動の選択肢の一つに考えるようになりました。そういった意味で、インターンへの参加は大きなターニングポイントだったと思います。
また、インターンに参加して非常に印象的だったのは、JICAで働く職員の方たちが、とてもいきいきと仕事をしていたことです。もともとは国際協力とは異なる業界の仕事に強い関心があったので、二つの方向性を考えて就職活動を進めていましたが、最終的に選択する、となった段階で、実際に働いている人の姿を知っていたこと、そんな人たちと一緒に自分も働きたい、と思えたことが強い後押しとなり、JICA職員の道を選ぶことになりました。

―最後に、インターンへの参加を検討している方たちへメッセージをお願いします。

ゾウゾウ: 当たり前のことかもしれませんが、参加の前には予め自分が何を目的として参加するのか、整理しておくことが大切です。そして、ただ自分が何をやりたいか、だけではなく、インターンが終わった後に、インターン先や自分自身のどういう姿を期待するか、まで思い描いて参加できると、より充実したインターン経験となるのでは、と思っています。 また、短い期間ではありますが、最大限、いろんな人と出会える機会を活かして、コミュニケーションを沢山とり、人的ネットワークと知識を広げてください。
三藤: 基本的にはゾウゾウさんと同じく、目的を明確に持つことが大事だと思います。 一方で、あまり一つの目的のみに捉われない柔軟性も持ってほしいと思います。インターンの醍醐味は、学生のうちでは思いも及ばない沢山の貴重な情報や経験を得られる機会が、周囲にあふれていることだと思います。自分にとってJICAは特に、情報や人の宝庫でした。職員だけでなく、専門家や開発コンサルタント、研修員など、本当に色んな経歴・スキルの持ち主に出会うことができました。
私自身、フィールドワークに行くことができたのもインターンでの出会いのおかげです。広い視野を持って、出会いの機会をいかに掴み取れるかが、その後の自分自身の学習や進路につながっていくのではと思います。
JICA職員

―ありがとうございました。

注1:在カンボジア日本大使館HP参照。

インターンへの参加を通じて国際協力への関わり方を考える、
ある開発コンサルタントの場合

今回は、現在、開発コンサルタントとして活躍されており、過去に複数のインターンに参加した経験をお持ちの、松月さやかさんにお話を伺いました。
---松月さんがインターンで得たものとは。松月さんが考えるインターンの意義とは。

■プロフィール
松月さやか(まつづき・さやか)さん
パシフィックコンサルタンツ株式会社 PFI・PPPマネジメント部所属
2009年、大学院(国際開発研究科)のときに国内のシンクタンクでインターンに参加。
テーマは「日本の対インドODAに関する調査」。
2010年、大学院(国際開発研究科)のときにJICAブルキナファソ事務所のインターンに参加。
テーマは「教育(初等教育現職教員研修)」。
2011年4月、開発コンサルティング企業(パシフィックコンサルタンツ株式会社)に入社。国内外の官民連携プロジェクトのアドバイザーとして勤務。
社会人インターンとして、国際協力NGOの翻訳補佐の業務に従事した経験も有する。

国際協力という一つの目的を果たすために、自分自身はどのような立場で参画できるのか、また、参画していきたいのか---
インターンという“就業体験”の機会は、自身の方向性を見極める手段としても有効です。

国際協力業界には多様なアクターが存在していますが、それぞれが役割・得意分野をもち、互いに調整・協力することを通じて国際協力を推進しています。そして、その団体・企業の多くが、インターンの受け入れを行っています。インターンという“就業体験”の機会は、それぞれのアクターが果たしている役割を理解するとともに、自身の適性や方向性を見極める手段としても、有効といえます。

今回は、「インターン・スタディツアー特集」のインタビュー第2弾ということで、現在、開発コンサルタントとして活躍されている、松月さやかさんにお話を伺います。

(以下、敬称略)

―まずは、これまでに参加されたインターンについてお聞かせください。

松月: 初めてインターンに参加したのは大学院1年目のときで、受入先は日本国内のシンクタンクでした。2週間という短期のインターンで、日本の対インドODA(政府開発援助)に関する調査のサポートに携わりました。
翌年、JICAブルキナファソ事務所のインターンに参加し、3か月半にわたり、現地に滞在して2つのプロジェクトに関わりました。
また、現在の会社に就職後も、とある国際協力NGOで約半年間、社会人インターンとしてお世話になりました。平日夜間や土曜などの就業時間外に参加していましたが、フランス語圏の国の支部から送られてくる書類の翻訳補佐などに携わりました。
コンサルタント
(インターン参加当時に撮影)

―大学院在学中に、2つのインターンを経験されたのですね。インターンに参加された動機やきっかけについてお聞かせください。

松月: もともと国際協力に関心があり、特に、アフリカ地域での仕事に携わりたいと考えていました。シンクタンクでのインターンには、政策決定など上流部分について調査・研究をしたいと思い参加しました。そちらでの経験は、日本のODAについて深く知る、いい機会となりましたが、今度は就職前に一度、実際の現場を見てみたいという思いから、アフリカ地域でのインターンに参加したいと考えるようになりました。
そんな中で、PARTNERのメールサービスでJICAのインターン募集を知りました。アフリカ地域でインターンの機会を提供している団体は殆ど無かったため、多くの在外事務所で募集を行っているJICAのインターンはとても魅力的でした。中でも、大学院では教育分野を専攻していたことから、ブルキナファソ事務所で募集していた「初等教育・理数科現職教員研修改善計画プロジェクト」でのインターンが自身の関心に合致していると感じ、応募を決めました。国の援助機関であるJICAのプロジェクトを経験することで、最初のインターンで学んだ援助の流れや方針をより深く理解し、現地政府やカウンターパートとの交渉などを、身をもって体験できるという期待もありました。

―JICAインターンへの参加にあたって、どのような準備をされましたか。

松月: 応募にあたって、JICAのホームページからブルキナファソ事務所のプロジェクトの情報や、インターンのテーマである現地の教育に関する情報を収集しました。
インターンへの参加が決まった後は、ブルキナファソ事務所の担当職員の方から、同プロジェクトの前年度のインターン生を紹介いただきましたので、その方にプロジェクトの仕事の内容や、現地の生活に関する情報を事前に伺うことができました。
準備不足だったと感じるのは、語学力の面です。現地で友人を作ったり、市場で値段交渉したりする経験を通じてフランス語に触れる機会を最大限作る努力をしましたので、3か月半の滞在中に語学力は確実に上がりましたが、やはり仕事をするには不十分でした。事前学習で少しでも伸ばせるスキルだからこそ、伸ばしておけばよかったと思います。
コンサルタント
(インターン参加当時に撮影)

―インターンの経験を振り返って、特に印象に残っているエピソードなどありましたら、お聞かせください。

松月: JICAのインターンでは、もともと予定されていた受入先のプロジェクトの他、私が修士論文で住民参加型の教育開発を研究していたこともあり、滞在期間の後半には事務所の担当職員の方の計らいで、より研究内容に近い「学校運営委員会(COGES)支援プロジェクト」にも参加させていただきました。
そのプロジェクトに配属されて数日後、カウンターパートの方が、奥さまを3人目のお子さんの出産と同時に亡くされるという悲しい出来事がありました。私は葬儀に参列したとき、亡くなった奥さまやそのそばで泣いているお子さんたちを見て涙が止まらなくなり、気丈に振る舞うカウンターパートに何も声をかけることが出来ず、逆に慰められました。
日本に比べ、途上国では出産と同時に命を落とすということがより身近にある、という現実を目の当たりにしたことで、大変辛い体験ではありましたが、一方で、このような悲しい出来事が少しでも減らせるよう、途上国の発展のために力を尽くしたい、という決意を固めるきっかけとなりました。

―大学院生時代のインターンでの体験が、その後の進路の方向性を決定づけたということですね。

松月: 国際協力の道へ進む決意を固めたというだけではありません。
就職活動の第一志望として、開発コンサルタントに絞り込むきっかけとなったのもインターンでの出会いによるものです。JICAのインターンでは、多くの関係者の仕事をそばで見ることが出来ました。その中でも、国の援助方針に則った途上国支援の中で、より現場に近いところで現地の方と協力して仕事ができる、開発コンサルタントという仕事に魅力を感じました。私のインターン期間中に、指導していただいた日本人専門家の他に、女性の開発コンサルタントの方が短期で派遣されてきていました。当時30歳位のお若い方でしたが、大変有能で、私も将来このようになりたい、と思ったことも決め手となりました。

―さて、第一志望であった開発コンサルタントとして就職されてからも、インターンに参加されたとのことですが、その動機についてお聞かせいただけますか。また、職場とは異なる国際協力の現場を体験されて、その後の働き方やキャリアを考える上でどのような影響を受けられたでしょうか。

松月: それまで民間企業(シンクタンク)と国の援助機関(JICA)の立場から国際協力に携わる機会をいただくことができましたが、その他にもいろいろな立場での国際協力への関わり方について知りたいと考え、国際協力NGOのインターンに参加しました。
NGOでは、草の根レベルでの現地との協働や国内での啓発活動など、少人数体制で幅広い支援が行われており、組織全体としてだけでなく、個人としてどう国際社会に貢献できるかということを考えさせられました。

―ご経験において、社会人インターンと学生インターンが大きく違うと感じたのはどのような点でしょうか。両方経験されたことで得られた気づきについて、お聞かせ下さい。

松月: 大きく異なるのは、「時間」と「経験」の2点です。社会人インターンでは、平日夜や土曜の業務外の時間を利用して参加していましたが、限られた時間の中でインターンの仕事をいかに効率的に進めるか、ということを考えなければなりませんでした。それには社会人経験で得たタイムマネジメント能力や、コミュニケーションスキルが重要だったと思います。
期待される役割も異なると考えています。同じインターンという立場であっても、学生インターンでは就業体験や学びの側面が強いのに対し、社会人インターンでは学びの要素もありつつ、自身の経験や知識で貢献していくということも求められているのではないかと思います。

―最後に、インターンへの参加を検討している方たちへメッセージをお願いします。

松月: インターンは、国際協力の仕事に関心がある学生の方の進路選択において、非常に価値のある機会だと思います。就職前にインターンとして仕事に携わることで、その仕事のやりがいも課題も見えてきますし、自分自身の適性についても考えることができます。
比較的時間がある学生のうちにインターンを経験することをお勧めします。
また社会人の方であっても、空いている時間にできるインターンを見つけることはできます。そこで、ご自身が仕事で身につけた知識や経験を活用し、国際協力に何らかの形で関わり続けることが、今後のキャリア形成に繋がっていくのではないかと思います。

―ありがとうございました。

インターン・スタディツアーという「行動」で夢を実現、
あるNPO職員の場合

開発途上国に旅行したり、テレビで見たり、開発途上国の抱える課題に触れたとき、国際協力を仕事にしたいという思い・夢を、一度は抱いたことがあるという人は多いのではないでしょうか。しかし、実現に向かっていざ行動となると、何から始めてよいのかわからない、何からやろうかな、自分にできるのかな、と考えている間に時間が過ぎ去ってしまう方が少なくないようです。国際協力の分野においては、ボランティアやインターン、スタディツアーに参加することが思いの実現に向けた“第一歩”になりえるのではないでしょうか。

今回は、学生時代にスタディツアーに、社会人時代にインターンに参加し、現在、NPO職員として活躍されている、野田沙良さんにお話を伺いました。
---野田さんにとっての、スタディツアーとは。インターンとは。思いの実現に向けてどのような“行動”をとったのでしょうか。

■プロフィール
野田沙良(のだ・さよ)さん
特定非営利活動法人アクセス-共生社会をめざす地域市民の会 理事/事務局長。
高校生の時に国際協力に関心を持ちはじめ、2002年、大学(国際文化学部)4年生のときに同NPO法人にボランティアとして参加し、スタディツアーに同行。
大学卒業後は民間企業に就職し、2005年、同NPOのフィリピン現地法人にて、2年間のインターンに参加。
帰国後、同NPO法人の職員となる。

―今回は、「インターン・スタディツアー特集」のインタビュー第3弾ということで、現在、国際協力NPO法人の職員として活躍されている、野田沙良さんにお話を伺います。
まずは、野田さんがこれまでに参加されたインターン・スタディツアーについてお聞かせください。

(以下、敬称略)

野田: 私が初めてスタディツアーに参加したのは大学4年生のときです。アクセスというNPO法人で、ボランティアスタッフとしてツアーに同行する機会を得ました。 また、その後いったんは一般企業に就職して2年ほど働いたのですが、その時に貯めたお金で、アクセスのフィリピン現地法人のインターンに参加しました。 これらの経験を買われて現在は、アクセスの事務局長として働いています。

―野田さんがアクセスというNPO法人を知り、ボランティアスタッフとしてスタディツアーに参加することになったきっかけをお聞かせください。

野田: 私は高校生の時に国際協力に強い関心を持つようになったのですが、大学時代は、アクセスに出会うまで、国際協力の分野で働くという夢の実現のために何をすべきか、何ができるか、試行錯誤の日々でした。苦手意識のあった語学力を習得するために半年間のアメリカ留学にも行きました。
しかし、いざ就職活動を始めた際、大学の就職課の方に言われた言葉が当時の私には非常にショックなものでした。

「あなたは、夢はあるけど実現に向けた行動が足りない」。

そのときの衝撃が原動力となり、何か行動に移したい、と考えるようになりました。
また、「自分のように国際協力に関心はあっても、行動に起こせていない人は多いはず」と考え、まずは同じゼミの仲間などを対象に、国際協力に関するメールマガジンの発行を始めました。
メールマガジンでは、国際協力関連のイベント情報を自身のコラムと一緒に紹介していたのですが、その中で紹介していたイベントの一つ、ドキュメンタリー映画の上映会に参加したのが、主催団体の一つであったアクセスとの出会いです。映画は、フィリピンのゴミ捨て場で生活する人々について描いたものでしたが、その内容に衝撃を受け、この人たちのために何かしたいと、いてもたってもいられなくなりました。このとき既に、一般企業に就職が内定していましたが、とにかく行動に移したくて、上映後すぐに、アクセスのブースに向かったのです。
ボランティアとしてアクセスの活動に参加させてもらえることになり、フィリピンの現状を日本の人たちに伝える活動や、事務局での運営のお手伝いをしました。やりがいや自身の成長を日々感じる日々で、ボランティア活動に夢中になっていた頃、アクセスがスタディツアーの募集を始めました。国際協力の分野で働きたいという思いを持っている以上、開発途上国の現場を実際に、早めに見ておく必要があると考えていたものの、実はそれまでずっと二の足を踏んでいたのですが、ボランティア仲間の勧めや、留学経験を活かして通訳としてツアーに参加して欲しい、と頼まれたことに後押しされ、ツアーへの参加を決めました。
NPO
(初ツアーの農村訪問にて)

―ご自身で考えて行動されたことが、その後の出会いやスタディツアーへの参加につながったのですね。ではスタディツアーでの経験や、印象に残ったエピソードをお聞かせください。

野田: スタディツアーは12日間で、川沿いのスラムや離島、火山被災地でのホームステイや戦跡訪問といったプログラムでした。中でもスラムへの訪問は衝撃的な経験でした。いわゆる貧困地区の実情を生まれて初めて目の当たりにし、自分のこれまでの生活からは想像もできないような劣悪な環境下での暮らしぶりにショックを受けました。川からの酷い異臭、水浸しの路地で裸で遊ぶ子どもたち、路地で洗濯、炊事、水浴びをする住民…そんな現実に大変戸惑い、住民の方たちとどう接したらいいかわからなくて困惑しました。一番ショックを受けたのは、そんな自分自身に対してだったかもしれません。
しかし、交流を重ねるにつれてそこで出会った人々や、そのスラムの雰囲気が、なんとも言えず大好きになり、フィリピンにまた戻って来たい、彼らのために働きたいと思うようになりました。
NPO
(初ツアーで訪れた都市スラムの様子)

―さて、一度は一般企業へ就職されたとのことでしたが、その後退職されてインターンに参加するに至った経緯をお聞かせください。いわゆる「安定」より「夢」を選択したと言える状況かと思いますが、迷いなどはなかったのでしょうか。

野田: もともと就職活動をしていた際、国際協力活動の中でも草の根活動、市民活動に特に関心があり、NGO/NPOを視野に入れていたのですが、採用条件を見ると「社会人経験あり・英語で業務遂行可能」といった条件が多いように感じました。当然、学生だった私に社会人経験はなく、語学力に関してもアメリカ留学である程度克服できたものの、業務遂行可能なレベルには達していないと感じていました。ですから、まずは足りない条件を満たそうと考え、(1)一般企業で数年働くこと、(2)その後、開発途上国で国際協力の現場を経験すること、(3)それらの経験をもって改めてNGO/NPOなどを対象に就職活動すること、を計画しました。そんな経緯があったので、企業を退職することは夢に向かうプロセスに過ぎず、躊躇は全くありませんでした。
一般企業への就職にあたっては、「誰も搾取せず、誰もが必要とするサービス」という視点で教育系の中小企業を選びました。小規模であったため、一人に与えられる役割が多く、やりがいがありました。社会人としての基礎的なマナーや仕事の進め方だけでなく、企画・事業運営など、現在の仕事にも活かせるスキルを身に着けることができましたので、最初に企業で働くという選択をしたことは本当に良かったと思っています。一方で、会社員時代の後半は「やはり自分が本気で取り組みたいのは教育ではなく、国際協力だ」と強く実感するようになり、当初の計画通り、開発途上国での現場経験を得るというステップに進むことにし、その手段として、インターンを選びました。
実は、アクセスには当時インターン制度がなかったのですが、当時の事務局長に「現地で無償で活動させてほしい」と直接相談し、それが結果的にインターンとしての活動になりました。

―インターンではどのような仕事をされたのでしょうか。また、経験を振り返って特に印象に残っているエピソードなどありましたら、お聞かせください。

野田: 私は座学で学ぶことより、自分自身の体験を重視するタイプですので、インターンでは体験を通じてあらゆることを学べる!という期待と、貧困の中で生きるということを肌で感じ、可能な限り自分自身のこととして理解できるようになる、という期待を持ってフィリピンに旅立ちました。しかし着任当初は、事務所の仕事に追われ現場に出る機会がなく、また自分が何をすべきか指示してくれる人もおらず、自分で仕事を見つけて行動しなければならないというハードな環境に、一時は挫けそうになりました。
そんなとき、事業を行っていたスラムで大火事が発生しました。被災した人たちの力になりたい、という思いに突き動かされ、毎日被災地に足を運び、聞き取り調査を行い、記事にまとめ日本へ送り、寄付を集めました。集めたお金をどう使うのが良いか、それをどういうプロセスで決めるのが良いか…お手本も正解もない中で、泣き、悩み苦しみながら活動を続けました。
NGO/NPOでの仕事は、こうした「答えがない中で、“自分で”仮説を立てて実践し、より良い答えを探す」ということの連続 です。このときの経験は、私にとって非常に大きな財産になっていると思います。
NPO
(インターン時、火災救援活動の様子)

―インターン帰国後に、常勤職員として採用されていらっしゃいますが、就職するにあたり、また、現在のお仕事をされている中で、スタディツアーやインターンの経験が生きたと感じるのはどのような点でしょうか。

野田: 帰国後は日本のNGOで就職先を探すつもりでいましたが、当時のアクセスの事務局長がフィリピンに赴任することになり、その後任として、ボランティア経験などで事業を理解していること、フィリピンでの現場経験があること、一般企業での社会人経験があることなどを買われて、声をかけていただき、職員になりました。そういった意味では、経験が十分に生きたと言えるかと思いますが、それだけでなく、自分自身の進路選択にも大きな影響を与えたと考えています。
世界の課題に対する漠然としたイメージをより具体的な理解に変えてくれたのがスタディツアー であり、 NPO職員としてのやりがいや難しさに関する漠然としたイメージを理解に変えてくれたのがインターン でした。また、特にインターンでの経験は、何のスキルもない状態からのスタートでしたので、何事も手探りで習得してきました。先にお話ししたとおり、NGO/NPOの仕事は自分で考え、行動することの連続です。インターンでそのことを理解し、実践してこられたことは非常に良かったと思っています。

―現在は運営する側の立場にいらっしゃるわけですが、その視点から見たインターンやスタディツアーの醍醐味とはどのようなものとお考えでしょうか。

野田: アクセスのスタディツアーの場合、学生の参加者の方が多いのですが、 「これまで生きてきた中で一番濃い経験だった」 と言ってくれる方が大勢います。日常が物足りない、変わりたい、何か一歩踏み出したい等、感じている人には、自分の生き方を考える上で大きなヒントを与えられるのでは、と考えています。
実際、アクセスのスタディツアーをきっかけに青年海外協力隊に参加した人も多くいます。また、学生の内は遊ぶことに夢中、というような様子であった若者が、ツアーをきっかけにボランティアにのめりこみ、NPOや企業を起業していたりする姿も見られます。私自身もそうでしたが、非常に魂が揺さぶられるような経験になるようで、運営する側としても、とてもワクワクします。
インターンに関しては、率直にいうとスタディツアーほどのわかりやすい「達成感」「インパクト」がなく、「もどかしさ」や「しんどさ」を感じる人が多いように見ています。しかし、 国際協力を仕事にするということの現実を知れるのがインターンの醍醐味。 自分の将来を考える上での材料にしてもらえたらと、願っています。

―最後に、国際協力の仕事を志し、インターンやスタディツアーへの参加を検討されている方たちへ、メッセージをお願いします。

野田: 私は学生の頃に就職課の方に言われた言葉が原動力となり、夢に向かって「行動する」人間になりました。その積み重ねの結果として、現在の仕事に就いています。
もし何年も持っている夢があるのであれば、夢の実現のためにやるべきことをリストアップし、その1つ目を今年中に行動に移してみてはいかがでしょうか。夢の実現に必ずつながるはずです。

―ありがとうございました。