アイコン1 はじめに

 現在、核家族化・少子高齢化・晩婚化・共働き家庭の増加・・・といった社会の変化から、国内では“ワーク・ライフ・バランス”への関心が非常に高まっています。“ワーク・ライフ・バランス”というキーワードを、皆さんが目や耳にされる機会も多いのではないでしょうか。

 “ワーク・ライフ・バランス”への関心の高まりは、国際協力分野においても同様です。
 例えば、PARTNERが参加するセミナーやイベントにおいても、「国際協力分野に関心はあるけれど、ワーク・ライフ・バランスが実現できるのか少し不安…。」「実際に活躍しながらワーク・ライフ・バランスを実現している人の事例をもっと知りたい!」といった声を、よくいただきます。

 そこでまずは、PARTNERに登録いただいている国際協力人材や団体へのアンケートデータ等を交えながら、“ワーク・ライフ・バランス” を実現するうえでの一般的な課題や、業界特有の課題・傾向などについて考えてみたいと思います。

アイコン2 それぞれの転換期 ~ワーク・ライフ・バランスの実現とは

 個々人が考える「“ワーク・ライフ・バランス”が実現している状態」とは、人によって当然異なるでしょうし、同じ人でもライフステージによって異なるでしょう。

 例えば、仕事を始めて数年のうちは、覚えることも多く、夢中でのめり込み、気づけば生活の中心が仕事になっていた・・・という人も少なくないのではないでしょうか。それでも、日々の生活が充実していれば、それは、その人にとって の“ワーク・ライフ・バランス”が実現した状態だと考えられます。 しかし、結婚・出産・育児・介護・・・といったライフイベントなどをきっかけに、それまでの“ワーク・ライフ・バランス”を見直す必要に迫られるケースは少なくないでしょう。

 ひとつの参考として、以下は、とある年の「PARTNERの登録期限を迎えたものの延長手続きを行わず、無効化された人材」を性別、年代別で整理したデータです。PARTNERの「国際協力人材登録」は規約で登録期限が3年と定められており、3年毎の延長登録を行わない場合、登録が無効となってしまいます。(2016年2月現在の規約による)
 延長手続きをされない理由は様々ですが、内訳の多くが「国際協力への関心を失った訳ではないが、国際協力活動を今は(又は、もう)行わないから」という方でもあります。


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 データを見ると、男性は年代毎の差がそれほど大きくないのに対し、女性は30代から40代が突出して多く、また、同年代の男性と比較しても多くなっていることがわかります。これは、結婚や、特に女性にとっては出産・育児というライフイベントを迎えることが比較的多い年代において、それまでの働き方を見直す必要に迫られる方が多いことが一つの要因である、と考えられます。

 ただし、上のデータは当然ながら、男性はライフイベントに応じて働き方を見直さなくても良い、ということを示すものではありません。共働き家庭の増加や少子・高齢化を背景として、男性による育児・介護への参加の重要性は社会全体で高まっています。仕事自体を辞めなくとも、家庭状況にあわせ働き方の見直しが必要となり、例えば配置転換や転職という道を選ぶ男性は増えていますし、今後も増えていくと思われます。

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アイコン2 ワーク・ライフ・バランス実現のカギ
            ~国際協力分野特有の課題とは?

 ライフイベントが “ワーク・ライフ・バランス” の一つの転換点となる、という話は、国際協力分野に限った話ではありません。 “ワーク・ライフ・バランス”実現には様々な課題があるでしょうが、では、国際協力分野に特有、或いは、業界で特に傾向が強いと考えられる課題とは、一体どのようなものがあるでしょうか。

PARTNERでは、登録団体、及び、国際協力人材登録者の方を対象に、任意でアンケートに協力いただきました。

問:「国際協力分野で働きながらワークライフバランスを実現するにあたり、最も大きな障壁(課題)とはどのようなものと思われますか。」

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国際協力の現場は・・・
 国際協力分野における“ワーク・ライフ・バランス”実現のための課題として、登録団体からの回答で最も多かったのが「海外勤務・出張が多い」という点でした。同アンケート内において、登録団体の取組みとして「在宅勤務や時短勤務といったフレキシブルワークの導入」が多くあげられており、国内での業務に対する支援体制が整ってきていることが窺える一方で、国際協力活動の推進には不可避といえる海外勤務や出張において、社員・職員をどのように支援していくか企業・団体として苦慮しているケースがある、ということを示す結果となっています。
 「その他」には、「給与」や「不安定な雇用形態(=契約形態が多い)」といった待遇面に関する懸念を指摘する声が含まれていました。

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活躍し続けるということ…
 登録団体、国際協力人材登録者に共通して課題認識として多かったのが「継続的なキャリア・経験が重視される業界の傾向」でした。これは、どういったことを意味するのでしょうか。
国際協力の仕事には、有期雇用(契約・ポジションベース)のものが比較的多いという点が、特徴の一つです。契約満了に伴い次の仕事(ポジション)を求める際には、それまでの(特に直近の)実績が評価の対象の一つになります。このため、業界で働く人にとっては、キャリアを継続的に積むこと、特に海外での経験を得ることが非常に重要なことであり、キャリアを一時的とはいえ中断、または転換する、という選択を躊躇してしまいがちです。
(参考)PARTNERキャリア系コンテンツ:国際協力分野の仕事や国際協力への関わり方 全体像 へ

 また、たとえ企業に所属していたとしても、例えば開発コンサルタントのようにプロジェクト単位の働き方が基本となる場合、やはり、プロジェクトに参画し続けることが評価のポイントとなることも少なくないようです。

家族の理解と協力があってこそ・・・
 国際協力人材登録者の方には、「最も大きな障壁」「2番目に大きな障壁」を順に回答いただきました。登録団体の回答結果と比較して、着目すべきは「家族の理解」を選択された方が多い点です。体験談として、「業界に理解がある人を配偶者(パートナー)に選んだ」「この業界で働きたいことをパートナーに1年がかりで説得した」「親に途上国へ行くことを強く反対された」「夫婦で話し合い、共に個々のライフスタイルと目標を最優先にすることを確認した」といった声が複数、寄せられました。
 国際協力の仕事を続ける上での本当の課題は、海外出張・勤務が多いことや激務であることそのものではなく、そういった仕事の内容と、自分自身が仕事に感じているやりがいや誇りについて、身近な人の理解やサポート(応援)を得ることができるか、という点かもしれません。さらに、「その他」を選択された回答においても、家族との時間の確保や子供の教育環境、家族を支える自分自身の身の健康・安全の確保等を背景に、「家族の“理解”はあるが、家族のことを考えると、現実は(国際協力分野の仕事を続けることは)難しい」とするコメントが多く寄せられました。

 個人の視点からは、家族の“ワーク・ライフ・バランス”の実現が自身の“ワーク・ライフ・バランス”実現の大前提と捉えられているようです。

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アイコン3 課題に直面したとき・・・自分ならどうする?

問:国際協力分野でキャリアを積むにあたり、ワークライフバランス上の課題に直面したことはありますか

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 2人に1人がワークライフバランス上の課題と向き合っている
 それでは実体験として、どれくらいの人がワーク・ライフ・バランス上の課題に直面しているのでしょうか。
アンケートに協力いただいた方の内、「過去に直面した」或いは「現在直面している」と回答された方は、実に半数(49.8%)にのぼりました。また、「直面したことは無いが、将来的に不安はある」と回答された方は全体の26.4%であり、あわせると4人に3人の割合で、ワークライフバランス上の課題に関して経験があるか、将来への不安があるということになります。

 続いて、ワークライフバランス上の課題を経験した方たちが具体的にどのような課題に直面し、どう対処してきたかについて、見ていきたいと思います。

問:「直面した」「不安がある」と回答した方は、どのようなことがきっかけになった、なりそうだとお考えですか (複数選択可)

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 きっかけはライフスタイルの変化、とは限らない
 ワークライフバランス上の課題に関する体験について、具体的にどのようなことがきっかけとなっているのでしょうか。やはり、「出産・育児」や「身内の介護等」のライフスタイルの変化をきっかけとするケースは多いですが、「自身の健康状態」や「職場環境」の変化がきっかけとなるケースも一定数、存在することが判ります。
 「その他」を選択されている方の中には、「自分自身の学業/研究との両立」「子供の教育」をきっかけとするケースが多くみられ、中には「子供が希望する大学に入学するまでの数年間、国内で別の業界の仕事をしていた」とする体験談もありました。

問:所属企業・団体において既に実現されているものも含め、企業・団体に対して求めることはありますか。(複数選択可)

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問:ワークライフバランス上の課題について、ご自身で取り組んでいること(取り組もうと思っていること、過去に取り組んだこと)や、周囲で見聞きした取り組みについてお聞かせください。

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 対処方法は多種多様、大事なのは選択すること
 様々な実体験に基づいたアンケート結果を紹介してきました。如何でしたでしょうか。きっかけは似ていても、対処方法は人により、様々です。
 過去にワークライフバランス上の課題に直面したという方からは、以下のような声もいただきました。

・過去に直面し、キャリアを選択した。ワーク=ライフと割り切れば、課題と感じなくなる。

 大切なことは、課題に直面した際に自分自身で多くの可能性を模索し、十分に考え抜いて、自分の意思で“選択”するということと言えるでしょう。

次章では、具体的な事例をインタビュー等で紹介します。