活力セミナー「企業CSRとNPO/NGOの連携」レポート

 昨年度PARTNERは、登録団体の皆さまへの新しいサービスとして、「PARTNER活力セミナー」を開催いたしました。
 2010年度も、11月26日(金)に東京広尾にある「JICA地球ひろば(講堂)」において開催し、53団体66名の皆さまにご参加いただきました。今回は、“企業CSRとNPO/NGOの連携”をテーマに、PARTNER登録団体の中からオリンパス株式会社(以下、オリンパス)と味の素株式会社(以下、味の素)、そして国際協力NGOである特定非営利活動法人ACE(以下、ACE)より、昨今、国際協力の大きなアクターとしての企業活動におけるCSR活動とそれをサポートする立場のNGOという二つの視点から“国際協力の連携について”事例のご紹介と連携の経験談をお話しいただきました。
 以下に、セミナーの概要をレポートします。

<CSR実施企業1:オリンパス>

まず、オリンパス松崎氏より“オリンパスの社会的責任とMDGs(ミレニアム開発目標)”をテーマに、以下の2点をポイントに同社の取り組みをご紹介いただきました。

  1. オリンパス × CSR × GC(国連グローバル・コンパクト)
  2. オリンパスとMDGs

1. オリンパス × CSR × GC(国連グローバル・コンパクト)

オリンパスのCSRは、「Corporate(=企業の) Social(=社会的) Responsibility(=責任・Response+Ability=対応能力)として、業務を果たすのみならず、社会の要請や期待に対応し、それを経営に反映させていくことで、ステークホルダーと信頼関係を確立し、企業と社会の持続的・継続的発展を実現する、という概念に基づいて行われています。そして、同社の経営理念である「Social IN−生活者として社会と融合し、価値観を共有しながら、事業を通じて社会に新しい価値を提案し、人々の健康と幸せな生活を実現する」ことこそがCSRであるとし、この理念の浸透により、当初「CSRの事業への貢献」であった同社の活動は、「事業に即した社会貢献」にシフトしていきました。また、同社は国連グローバル・コンパクト参加企業として、MDGsの達成に協力し、2008年および2009年の社会環境報告は、”Notable COP (Communication on Progress)”に認定されています。

2. オリンパスとMDGs

オリンパス講演の様子 同社の事業領域である医療、映像、ライフサイエンス・産業等の中で、ソーシャルマーケティングという視点で映像事業(企業理念)と社会貢献がうまくリンクしている2つの取り組みについてプレゼンテーションされました。
《100人の写真家が見たアフリカの一日》
世界26カ国、100人の著名写真家が1日でアフリカの日常生活を撮影。世界初のデジタル写真集として、4ヶ国語でWEB展開、20ヶ所で写真展を開催し、全収益をエイズ教育プログラム基金としました。
《国連と協働するフォトコンキャンペーン》
“世界を写そう:私たちは貧困を終わらせる”をテーマに、世界でMDGsに貢献する人々の取り組みを伝える写真コンテストを開催。また、NY・東京をはじめMDGs啓発写真展の開催等、様々な写真やVTR映像を上映しながら、同社の取り組みを紹介されました。

<CSR実施企業2:味の素>

続いて、味の素北村氏より、「企業と社会セクター連携の事例と可能性」をテーマに、

  1. CSRへの取り組み方針
  2. 各セクターとの取り組み事例
の2点についてお話しいただきました。

1. CSRへの取り組み方針

味の素グループは、グローバル健康貢献企業として「21世紀の人類社会の課題である『地球持続性』『豊かな食資源』『健康な生活』の領域に、開発や調達、生産や物流、サービスやコミュニケーション等、バリューチェーン全体で貢献することをCSR基本方針としています。 このCSR基本方針に基づいた、食資源の取り組みと栄養改善への取り組みは以下のとおりです。

2. 各セクターとの取り組み事例

味の素講演の様子 1) 食資源への取り組み
食品製造のライフサイクルと環境配慮の視点から、開発から消費者とのコミュニケーションまでの各段階で次のような取り組みを行っています。
開発から物流活動の段階では、「作るときのエコ」を実践しています。製造段階で生まれる排出物を肥料や燃料に生かすことでCO2削減に貢献し、資源・生態系を見守る「持続可能な調達」、うま味調味料の原料となるカツオを余すところなく生かしきる「自然の恵みを大切にする」取り組みです。
製品・サービスから消費者とのコミュニケーションまでの段階では、「使うときのエコ」を提案しています。たとえば、食品のロス削減案やムダにしないエコレシピ提案、Table For Twoの参加による味の素ブラジル工場の食べ残し削減キャンペーン等のエコライフ提案、さらには、広告や展示会、環境ボランティア育成講座や工場見学等で、“食卓からはじめるエコライフ提案”も現在実行中です。
2)栄養改善への取り組み
味の素グループも国連グローバル・コンパクト参加企業として、MDGsに貢献すべく、企業理念である「おいしさ、そして、いのちへ」を具現化する活動を行っています。
1999年からスタートした味の素「食と健康」国際協力ネットワーク(AIN:Ajinomoto International Cooperation Network for Nutrition and Health )プログラムはNPO/NGO、国際組織、政府系機関、教育・研究機関、地域コミュニティ等と協力して、2010年までに12ヶ国44件の支援実績となっています。このプログラムは、NPO/NGO、国際組織、地域コミュニティ、政府系機関、教育・研究機関との連携により実施されており、たとえば、AMDAと連携した栄養・母子保健プロジェクトでは、栄養不良の子どもの53%が改善など、実績をあげています。
今後の同社による社会事業は、本業と社会貢献とを別々にではなく、共にソーシャルビジネスとして発展させることを目指しますが、ここで鍵となるのは、NPO/NGOをはじめとする様々な社会セクターと協働しながら、経済ピラミッドの中間層を対象としたビジネス、つまり新しいマーケットの創出ができるかどうかとなります。このように、「食・栄養・保険分野の国際協力」を各地で継続的に行ってきた数々のNPO/NGOによる現地活動を支援することで、開発途上国の人々の生活の質の向上を目指す助成プログラムとなっています。
企業と社会セクターとの連携のポイントとしては、同グループの経験から次の3つを挙げました。

  1. 目的の共有(お互いの目的=ビジョン・ゴールをしっかりと共有)
  2. パートナーの見極め(お互いの強みを相互利用)
  3. 活動の評価・改善(試行錯誤しながらより良いものに)
  最後にNGOに期待することは、社会を変えていくスターターとして、半歩先の社会の声を発信して欲しい、企業は、それを拾いながら共に取り組みたいとして講演を締めくくられました。

<CSR活動をサポートするNGO:ACE>

最後は、国際協力NGOであるACE岩附氏より、「企業の本業とNGOとの協働〜チョコレートコットンを軸にしたコラボ〜」をテーマに、

  1. (CSR企業と)なぜ連携するのか
  2. ACE活動紹介/ACE戦略
等、NPO/NGOが企業との連携で、ファンドレイジングするためのヒントの提供について、講演いただきました。

1.(CSR企業と)なぜ連携するのか

各ステークホルダーのニーズと背景となる社会・経済状況の影響により、環境や社会的課題解決への意識が高まっています。

  • NGOのニーズ:地球規模の課題解決、自己資金強化、団体の認知度・信頼度をあげる、団体の活動を知ってもらう・参加する機会の提供
  • 消費者のニーズ:エコ(エコロジカル+エコノミー)、エシカル・ファッション(オーガニックコットン等)、フェアトレード
  • 企業のニーズ:アカウンタビリティ向上、サプライチェーン管理、商品の差別化、ブランドイメージ・価値向上
  • 社会・経済状況:環境問題、経済の閉そく感、経済危機、社会貢献・社会起業家ブーム、(企業とNPO/NGOの協働等、これまでなかったものの組合せによる)イノベーションへの期待
インターネットの普及により社会の変化が加速している状況下で、企業にとってCSRとは、社会の変化への適応力であり、これからのCSRは、企業自身によるビジネスとつなげていく「サステナビリティ戦略」へと変化しています。

2. ACE活動紹介/ACE戦略

ACE講演の様子

ACEの由来である「Action against Child Exploitation:子どもの搾取に反対して行動する」という理念に基づき、児童労働問題に取り組んでおり、職員7名という少ない団体のリソースで効果をあげるため、最も人口の多い農業分野、この中でもカカオとコットンの児童労働問題解決のために、「ピース・インド」や「スマイル・ガーナ」等のプロジェクトを行っています。
企業との協働事例については、4タイプの活動を紹介されました。一つは、企業の社員を巻き込む(社員の寄付活動に企業も相乗するマッチング・ギフト、社員が団体の活動に参加するボランティア派遣)、二つ目は社外関係者に伝える(監査や報告にNGOが関わる)、三つ目は消費者を巻き込む(店舗に募金箱設置)、四つ目は社会全体へ発信する(商品や広告を通じて社会課題解決のメッセージを打ち出す)です。
また、これまでの企業との連携からの学びとして、企業とのコミュニケーションの重要性、企業の仕事のやり方への対応力の向上、団体からの情報発信の重要性、企業との連携がさらなる連携を呼ぶこともあること等を挙げました。
企業との協働で得たものとしては、企業の担当者との人間関係構築、NPO/NGO内での認知度アップ、対企業への対応力強化、職員・現地スタッフのモチベーションアップ等となっています。
こうした企業との連携のきっかけは、他団体や企業による紹介、企業からの資料請求などへの対応、イベントでの名刺交換、そしてNPO/NGO内のネットワークの活動に積極的に参加することから生まれています。

<懇親会>

懇親会の様子 セミナー終了後には32名の方々が懇親会に参加し、カフェフロンティアの軽食と飲み物に舌鼓を打ちながら、名刺交換や講師との歓談を楽しみました。途中、セミナーに参加していたプロのパーカッショニストによる打楽器の演奏も入り、懇親会はいっそう盛り上がりました。

<当日のプログラム>

《開催日時》 2010年11月26日(金) 17:00〜20:00
《会場》 独立行政法人 国際協力機構(JICA)地球ひろば 講堂
《プログラム》

  • 17:00〜17:05 開催挨拶 国際協力人材部 国際協力人材センター課
  • 17:10〜18:50 CSR実施企業各社による、①CSR事例紹介、②今後の動向、③質疑応答
  • — オリンパス株式会社 CSR本部CSR推進部 課長 松崎 稔 氏
  • — 味の素株式会社 CSR部社会貢献担当課 課長 北村 聡 氏
  • — (特活)ACEエース 代表 岩附 由香 氏
  • 19:00〜20:00 懇親会

<講演者プロフィール>

松崎 稔 氏(まつざき みのる) オリンパス株式会社 CSR本部CSR推進部 課長
オリンパス入社以来、フィルムカメラの開発に携わる。1997年より、ニューヨーク現地法人にて勤務中、仕事を通じた社会貢献活動を開始。「A Day in the Life of AFRICA」プロジェクト立ち上げ時より中核メンバーとして参加。その後、写真展をプロデュース。他に、「Picture This 2009:地球のことを考える(UNDP共催)」「Picture This 2010:私たちは貧困を終わらせる(UNDP共催)」や「親子の日」プロジェクト等を手掛ける。企業ブランド活動で、過去、F1フェラーリ・スポンサーシップ(03-05年)・Olympus NY Fashion Week(03-05年)等にも携わる。2007年より現職。立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科在学中。

北村 聡 氏(きたむら さとし) 味の素株式会社 CSR部社会貢献担当課長
1995年、味の素株式会社入社。2000年より、食品事業本部でプロダクトマネージャーを経て、2005年より、CSR部社会貢献担当課長。グローバル食品企業として、途上国を中心に、「食・栄養」改善活動をNGO等の社会セクターと連携しながら推進している。

岩附 由香 氏(いわつき ゆか) 特定非営利活動法人 ACE(エース)代表
1974年生まれ。上智大学卒業、大阪大学大学院国際公共政策研究科修了。大学院在籍中の97年にACEを発足させ、代表に就任。会社員、通訳などの職と平行しボランティアで活動を続け、2007年から専従でACEの活動に従事。現在、児童労働ネットワーク事務局長、(特活)国際協力NGOセンター副理事長、(特活)日本NPOセンター評議員、桜美林大学講師等も務める。