活力セミナー「IDENTITYを強くする、広報のチカラ。」レポート

 2010年度「PARTNER活力セミナー」第二回は、2011年1月14日(金)に、JICA地球ひろば(渋谷区広尾)において開催しました。現在、PARTNERコンテンツとして連載されている「IDENTITYを強くする、広報のチカラ。」の原稿執筆者の一人である株式会社アム 代表取締役/NPO法人フローレンスのマーケティング担当理事である岡本佳美氏が、「ブランディング・効果的に伝え、効果を生む」をテーマに講演しました。当日は、PARTNER及び地球ひろば登録団体等から60団体86名の皆さまが参加されました。

講師の岡本佳美氏  フローレンスは、病児保育サービスを行うNPO法人であり、岡本氏は、2005年の立ち上げにボランティアとして参加し、マーケティングと広報を担当しました。

 当時の病児保育は、保育施設全体のわずか5%でしか実施していなく、99%は赤字運営でした。世の中のニーズに対して、施設の数は圧倒的に不足しており、子供の急な発病時に仕事を持つ母親が利用することは難しく、サービスを申し込んでも「キャンセル待ち10名」だったり、「3日前までに要予約」という状況でした。さらに、1時間当たり2,500円という高値で、気軽に利用できるものではありませんでした。

 フローレンスはこうした状況へ、施設を持たない会員制の病児保育サービスの提供という、新しいビジネスモデルで参入していきます。

 設立2年後には、病児保育事業を行うNPO法人として黒字運営を達成した、フローレンスのブランディングとは、どのようなものだったのでしょうか。
 以下に、セミナーの概要をレポートします。

 <ブランディングとは>

1.「1ブランド1メッセージの法則」

 ブランドとは、例えば、消費者がある商品やサービスを使った時の、「使いやすい」、「目的を達成しやすい」などの感情を伴う体験の数々から生まれる「思い出の総体」といえます。この商品やサービスを消費する「コンタクトポイント」は、提供者側には制御不能です。したがって、どんな人にも、どんな状況でも、提供する商品やサービスについて同じ理解を得られるよう、1ブランド1メッセージのブランディングをしていく必要があります。

セミナー会場の様子  自分の団体や組織を魅力的に伝えるため、広報に不慣れな人が陥りやすい誤りは、何でもかんでも盛り込んでしまう「情報の足し算」ですが、広報担当者がすべきこととは、「情報の引き算」をすることで、一番伝えたいことを見つけて、より魅力的に、より正確に伝えることなのです。

 そのためには、組織内で意思統一をすることが必要です。つまり、ブランド戦略とは経営戦略であり、「何をやり、何をやらないか」を決め、それを「いつまでにやるか」を考える事業戦略でもあるのです。

 また、ブランディングは1団体が単独でやるばかりではなく、お互いに協力することでメリットが見込まれる他の団体と「徒党」を組んでやることもできます。

 例えば、フローレンスの場合、「情報の引き算」をした結果、「病児保育=フローレンス」、「ソーシャルベンチャー=駒崎 弘樹(フローレンス代表)」というメッセージを別々に発信することとなりました。

 そこで、「ソーシャルベンチャー=駒崎弘樹」というメッセージを発信する際に、社会起業家を支援するNPO法人ETIC.と「徒党」を組みました。駒崎氏は、同NPO「社会起業塾」の修了生なので、ETIC.には社会起業家輩出のNPOというブランディングのメリットがあったのです。

 このように、お互いの強みを生かして差別化をしながら、「徒党」による相乗効果を狙うことも、「誰と組むか」という経営戦略を基にした、ブランディングとなります。

2.マーケティング・コミュニケーション戦略の立脚点「3つの輪」

 ビジョン・ミッションを基に、自団体の資産・強みを洗い出しながら、顧客ニーズ(例えば受益者や寄付者の困りごとは何で、何が必要か)に心を砕いていくことです。

  • ◆ビジョン・ミッション
        ―目的(何のためにやるか)、すなわち「未来志向」。
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  • ◆資産・強み
        ―過去に遡って独自の強みを洗い出す作業。自分達の過去を紐解いていく「歴史視点」。
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  • ◆顧客ニーズ・提供価値
        ―自分達のビジョン・ミッション、資産・強みは、現在の要請に合っているのか、という「現在の目線」。

 これらの3つの輪を埋めるために行うのが、「エスノグラフィーマーケティング」、すなわちブランディングの対象の中に入っていく作業です。

 例えば、自団体の資産・強みを探すために、団体を知る外部の人にインタビューをします(ディスカバリーインタビュー)。自ら見えているものと、外から認められている団体の資産・強みは、ずれているからです。顧客ニーズについても、同様の作業が必要となります。

 <質疑応答>

ワークショップに入る前に質疑応答の時間を設けました。
参加者より、次のような質問があり、岡本氏より回答がありました。

  • Q.ディスカバリーインタビューでドナーを対象とする場合、どのような人を選ぶのですか?
  • A.一つの属性から5名で、団体に対し好意的な人と、団体の事をよく知るが辛口な人を混ぜます。辛口な人を混ぜることで、団体の課題を見つけることができます。
  • Q.メールマガジン等電子媒体を使う時のテクニックを教えてください。
  • A.ブランディングありきで、ウェブやメールマガジン等の広報が成り立つということを念頭に置くことが必要でしょう。但し、「電子媒体」は「紙」よりも読みにくく、読んでもらいにくいので注意が必要です。レイアウトや、人の目の流れを意識した情報の配置・webの存在を知らしめるため、検索ワードを想定すること等がポイントとなります。
  • Q.最近の風潮として、「漢字」ではなく「ひらがな」で言葉を表現することが多いですが、伝える言葉の選び方はどのようにすればいいのでしょうか?
  • A.自分ではない第三者が、自分のことを他の誰かに伝える(口コミ)時に、効果的な言葉を選びます。漢字や四字熟語といった言葉では、口コミで伝えるのが難しくなりますので、(自組織がターゲットとしている層の)人の会話に乗りやすいものを考えましょう。

 <ワークショップ>

ワークショップの様子 最後に、「自分の伝えたいことが、いかに伝わらないか」を体験するワークをしました。
ワークの内容は、次の通りです。

  1. お互いの団体について、よく知らない人同士でペアになる。
  2. 1人が自分の団体について、1分以内で紹介する。
  3. 聞き手は1分以内で、2 で聞いた内容を第三者に伝えるつもりで、団体紹介をした相手に説明する。
  4. 2 で自分の団体紹介をした人が、3 で期待通りの説明をしてもらえなかった点をメモして持ち帰る。次回の説明の工夫に役立てましょう。

 ワークショップをもって、今回の「PARTNER活力セミナー」は閉会となりました。

 <懇親会>

懇親会の様子 セミナー後の懇親会にも45名の参加があり、参加団体同士の歓談の中、講師岡本氏への質問も途切れることなく続き、最後まで盛況に終わりました。

講師岡本氏による、PARTNERコンテンツ「IDENTITYを強くする、広報のチカラ。」の記事はこちら
(①「非営利団体のブランディング(1)」のみ、一般の方にも公開中。)

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 <当日のプログラム>

《開催日時》 2011年1月14日(金) 10:00~13:00
《 会 場 》 独立行政法人 国際協力機構(JICA)地球ひろば 講堂
《プログラム》

  • 10:00~10:05 開催挨拶 国際協力人材部 国際協力人材センター課
  • 10:05~11:55 「IDENTITYを強くする、広報のチカラ。」
  • ~ブランディング・効果的に伝え、効果を生む~
  • ㈱アム 代表取締役/(NPO法人)フローレンス マーケティング担当理事
    岡本 佳美 氏
  • 12:00~13:00 懇親会

 <講演者プロフィール>

■ 株式会社アム 代表取締役 岡本 佳美 氏
株式会社アム 代表取締役/NPO法人フローレンス マーケティング担当理事 
1973年生。広告会社に4年間勤務後、2000年にフリーランスのマーケティング・プランナーとして独立。住宅、自動車、化粧品などの分野で、新商品開発や市場導入戦略、コミュニケーション(広告・広報)戦略を提案。最近では、東京電力「オール電化キャンペーン Switch!」など。2005年、病児保育の「NPO法人フローレンス」の立ち上げに参画し、副代表に就任。マーケティングおよび広報を担当。2007年、黒字化達成を期に理事に就任。
2007年 森ビルアーク都市塾 住宅ビジネス企画開発コース 最優秀作品賞。
2009年 お茶の水女子大学 リーダー育成プログラム外部評価委員