2011年6月18日(土)にJICA兵庫において、「国際協力人材セミナー in 関西」を開催いたしました。
当日は梅雨空の下、188名の方々の参加がありました。
開催されたセミナーの各プログラムについて、レポートいたします。

午前の部 JICAセッション

JICAセッションの様子 JICA兵庫所長の挨拶に続いて、国際協力人材部長より昨今の国際的な動向として、日本の平和や繁栄には、世界情勢の安定が不可欠であること、3月に発生した東日本大震災により、日本は世界最大の被援助国となっており、国際協力は「国際相互協力」の時代へと変遷し、且つ日本の国際協力の資金は、民間資金が8割、政府ODAが十数年前の半分である2割であり、民間資金を生かすことが課題となっていると、挨拶しました。

 続いて「JICA専門家とは」として、国際協力人材部より「公募案件」、調達部より「公示案件」について、それぞれPARTNERを使った募集案件の読み方のコツを踏まえて、応募に際しアピールすべきポイントを説明しました。

 専門家経験談は、公募・公示型両方の専門家を経験している舟橋 學(ふなばし がく)氏に、専門家になるまでの経歴とキャリア形成のポイントについてお話いただきました。専門家とは、裨益者となる現地の人と国際協力を実施する機関の双方を相手に、自身の専門性と経験を駆使して成果をあげる「ダブル・エージェント」であるべき、とのことです。有期契約という不安定な立場にありながら、「途上国の中小企業振興」を自身のキャリアの「背骨」として、短期間の仕事も経験として積み重ねるように、大切に取り組むことで、自らのキャリアストーリーを構築でき、また、案件獲得のアピールポイントともなります。そして専門家として結果を出すことが、例え有期契約という不安定な仕事でも次の案件獲得につながる、とお話しました。

 JICAセッションの最後は、JICA兵庫で市民参加協力調整員として、国内で国際協力に携わっている青木 知子(あおき ともこ)氏よりお話をいただきました。青木氏は、「人のためになる」仕事をするべく、新卒後民間企業で勤務した後は、青年海外協力隊、NGOスタッフを経験し、途上国が抱える根本的な問題解決をするため、大学院で修士号を取得し、ジュニア専門員と専門家を経験してきました。その後、家族の介護をきっかけに、地元兵庫で、国内における国際協力に携わっています。国内での活動は、途上国の現場から遠く、専門分野からも離れるという焦りがあります。その反面、ワークライフバランスが取れ、幅広い分野や専門外についての自己研鑽ができるというメリットも多くあります。雇用形態が有期雇用であること、また自身の専門分野における将来の人材需要を見込むことが難しいことから、結婚や出産をはじめとする人生設計については悩みであり、仕事を続ける上での壁ともなる恐れがありますが、「人の幸せに近い仕事」であることが国際協力の魅力である、と話していただきました。

午後の部Ⅰ:選択セッション

■開発コンサルタントセッション

開発コンサルタントセッションの様子 開発コンサルタントセッションには、(株)シー・ディー・シー・インターナショナル環境・農業事業部コンサルタントの海口 光恵(うみぐち みつえ)氏に、開発コンサルタント業界の概要と、「開発コンサルタントに求める人材像」をお話いただきしました。同社を例に、開発コンサルタントは40代以上が主であること、30代ではコンサルタントの補助業務や国内事業を担当することが多いこと、修士号以上の学位を有し、それぞれの専門に応じた業務を担当している、との説明がありました。また、人材募集をした場合に、語学レベルは非常に高いけれども専門性が弱い人からの応募が多いものの、このような場合の採用は難しく、開発コンサルタントには、専門性と実務経験が求められていることをお話しました。開発コンサルタントとして仕事を得る際には短期決戦であることが多く、成果主義であり、各コンサルタントの実績が評価される世界なのです。ODA予算の削減に伴い、開発コンサルタントの従事者も比例して少なくなる傾向にあり、案件の経費的な制約もあることなどから、会社の経営方針としても、新卒採用や人材育成の余裕もないのが現状である、とのことでした。

■NGOセッション

NGOセッションの様子 関西でネットワークNGOとして活動している(特活)関西NGO協議会より、事務局長・理事である奥谷 充代(おくたに あつよ)氏に「NGOで働くということ」としてお話しいただきました。公的な国際協力実施機関と比較したNGOとの違いについて、NGOは次のような特徴があると説明がありました。

  1. 市民の立場で政府の政策を検証する役割を担う。
  2. 人種、国籍や宗教に関わらずに活動する。
  3. 収益を目的としない。
  4. 自発的、自立的、そして自律的に活動する組織である。

政治的立場や国境にとらわれず、現場に根付いた、人と関わる活動が得意なことから、様々な人と課題を共有し事業を進めていく、とのことでした。

 NGOの実情として、有給の職員数や雇用形態、年収と福利厚生、男女の比率、採用実績と採用基準についても最新のデータを用いた説明もありました。NGOの職員は公募に加えて既にインターンやボランティアとして関わりを持つ人材からの内部募集や、関係者からの紹介などもあることから、NGOでの活動経験がある人は採用に有利でもあります。また、本来備わっているべき各種保険制度や、各種手当も不十分であるなど、組織としての問題点についても説明下さいました。

 近年活発になっている、非営利の民間組織にこだわらない社会起業やプロボノ、そして企業におけるCSR活動やBOPビジネスなど、市民が国際協力に関わる新しい活動についても紹介されました。

午後の部Ⅱ:国際機関セッション

■前半「国際機関職員への道」

国際機関セッション(前半)の様子 外務省国際機関人事センター課長補佐 神宮司 英弘(じんぐうし ひでひろ)氏より、外務省による国際機関の日本人職員採用を促進するためのJPOやYPPの制度について、説明がありました。国際機関の人事制度は、即戦力採用であり、空席公告により職員募集が行われること、その応募要件は詳細で具体的なので、応募要件の記述に自身の学歴や経験が当てはまらない場合は、書類審査を通ることが極めて困難だと説明されました。国際機関では、書類審査は重要視されていること、日本人は「achievement」の記述(自分がこれまでの職歴でやってきたことが、組織にどのように還元されたかをアピールすること)が苦手であるため、英語力と併せて表現力を磨くことが、書類審査を勝ち抜くポイントとして紹介いただきました。ネイティブに準ずるほどの高い英語力は「前提」であり、これにフランス語などの能力を備えていること、目指すポストに関連のある分野の修士号は必須です。また、最近は日本人に適していると思われる人事、経理、広報系のスペシャリストが求められる傾向があります。

■後半「国際機関職員の仕事とキャリア構築、求められる人材」

国際機関セッション(後半)の様子 国連の各機関やニューヨーク本部で36年間のキャリアを積み、現在は関西学院大学と近畿大学の客員教授である和気 邦夫(わき くにお)氏より、お話いただきました。国際機関と一言で言ってもさまざまな機関があり、派遣先により仕事の内容も異なります。例えば国連本部は、国際政治の世界であり、海外事務所のサポートや報告書の作成など事務局としての機能が主となります。各機関では、各専門分野について政策策定や、技術的、専門的な仕事を通じた世界のスタンダードの制定などが行われています。国際機関の職員には、外交官的なイメージがありますが、実際には、職員になると先ずフィールド(現場)に派遣され、危険と隣り合わせの中で泥臭い仕事に従事し、貧しい人や村の人々と話すことが多いので、人と接するのが好きでチャーミングな人に向いている、とのことでした。和気氏の場合、人が行きたがらないような地域へ積極的に出向くことで、責任を持たされキャリアを築く機会を得てきました。

 各組織により求められる人材や職員のキャリアはそれぞれ異なりますが、次のような人材の活躍が期待されています。

  • ・国連公用語2言語以上に堪能であること。
  • ・各組織の分野について専門知識を有していること。
  • ・政治的に敏感であること。

 また、最近の採用の傾向は、

  • ・日本人職員は、JPO出身が多い(約7割程度がJPO経験者)。
  • ・経験のある中堅の人材を採用している(開発の知識だけでは不十分。NGO、銀行、商社、官公庁、外資企業、IT関連出身の人材が採用され、人事、総務、財務、広報職等に就いている)。
  • ・女性を積極的に採用している(依然、男性の職員数が多く、同レベルの複数応募者から1名を採用するのであれば、女性を採用している)。
  • ・高いポストの獲得は、日本政府のサポートが不可欠。
  • ・面接は、オープン化する傾向にある。他機関のトップが面接官として入り、より厳しい面接が実施されている。面接だけでは不十分なので、外部の人事会社による選考試験があることも。

 加えて、国際機関職員として働いていくためには、

  • ・実力がある。人材育成はしないので、即戦力として実績を出せるか。学者タイプは、実務能力も有していることが求められる。
  • ・政治的に敏感であること。(国際機関で政治的にゲームできる、官僚組織をうまく泳ぐ)。
  • ・しなやかさ(ジェンダーと異文化への理解がある)。
  • ・バランスの取れた能力がある。リーダーシップ、チームワーク、人格、結果を出せるマネジメント力、分析力、戦略的思考が求められる。
  • ・国連内の派閥に属さず「一匹狼」でいられる精神力がある。(派閥に属すると、派閥が潰れれば自分も潰れる危険がある。)
  • ・家族のケアとサポートができる。(途上国では、家族にも負担をかける。また国によっては、連れて行けないため、別居生活となる。離婚に至るケースもある。)
  • ・途上国での生活に耐えられる。
  • ・契約を繰り返す不安定下での雇用条件で働く。(合わない上司と付き合いながら契約期間を全うしなければならないこともある。)

 こうしたポイントについての説明がありました。セッション終盤には、両講師による質疑応答時間も設け、終了時間を超過するほど、次々と質問の挙手がありました。

個別キャリア相談

 事前申し込みの個別キャリア相談36名の枠は、早々に申し込みで埋まりました。また、当日の昼休みを利用して、ワンポイント相談コーナーも実施し、JICA職員と専門化経験者によるJICA専門家をはじめとする相談や、PARTNERによる国際協力全般についての相談をお受けしました。

当日のプログラム

■ 午前の部 ■
9:25 〜 12:45 JICAセッション(途中休憩あり)

  • −開会、進行説明  国際協力人材センター長 江種 利文
  • −JICA兵庫挨拶  JICA兵庫所長 伊禮 英全
  • −国際協力人材部挨拶  国際協力人材部部長 稲葉 誠
  • −国際協力人材部 「JICA専門家とは」
      JICA公募案件についての説明 (JICA国際協力人材部)
  • −JICA公示案件についての説明 (JICA調達部)
  • −専門家経験談 公募・公示型専門家経験者 舟橋 學
  • −JICA兵庫「国内で国際協力を担う人材」(JICA兵庫市民参加協力調整員)
      地域に根付いて国際協力をしながらのキャリア構築、「市民参加協力調整員」の仕事内容について

12:45 〜 14:00 昼休み(ワンポイント相談コーナー)
午前の部についての質問や、各国際協力実施機関を目指すためのキャリア構築について、「ちょっと聞きたい」方のためのワンポイント相談コーナー

■ 午後の部Ⅰ ■
14:00 〜 15:00 (選択参加)開発コンサルタントセッション/NGOセッション

  • −開発コンサルタントセッション「開発コンサルタントに求められる人材像」
      (株)シー・ディー・シー・インターナショナル 環境・農業事業部 コンサルタント 海口 光恵
  • −NGOセッション「NGOで働くということ」
      (特活)関西NGO協議会 奥谷 充代

■ 午後の部Ⅱ ■
15:10 〜 16:45 国際機関セッション

  • −「国際公務員になるために」
      外務省 総合外交政策局 国際機関人事センター 課長補佐 神宮司 英弘
  • −「国際機関職員の仕事とキャリア構築/求められる人材」
      関西学院大学総合政策学部客員教授/近畿大学総合社会学部客員教授
      元国連人口基金(UNFPA)事務局次長/元国連事務次長補
      和気 邦夫