【パーソナルデータ】

・2014年8月に長男を出産、1年半の産育休を経て、2015年12月に復職。
・これまでの主な部署:フィリピン事務所、JICA地球ひろば、東南アジア・大洋州部(フィリピン担当課)など

●子供を産む前の働きかた

 子供を産む前は、海外出張はほぼ毎月、深夜残業も当たり前の毎日。子育てしながらどのようにJICAの仕事を続けていくかのイメージは全く持っていませんでしたが「皆やっているから何とかなるだろう」くらいに考えていました。実際、JICAの中では子育てをしながら働いているママさんが当たり前にいて、私が担当していたフィリピンでも子連れで事務所に赴任しているママさんがたくさんいる状況でした。

 JICAの仕事には途上国への海外出張や海外赴任が欠かせないことも多く、必ずしも子育てとキャリアを両立しやすいと言えないと思います。ただ育休が最長で子どもが3歳になるまで取得できるなどの制度は整っており、時短はもちろん時差出勤、在宅勤務などの制度も導入され、多くの方が実際に利用もしているので、国内で働く分には環境は比較的整っていると思います。

 しかし、実際に出産と初めての子育てを経験してみたら予想をはるかに超えた人生の一大事。いままで培ってきた生活を一度すべてスクラップし、また一つ一つ新たに築き上げるような未知の体験の連続でした。「職場に戻る前に新しい働きかたを身につけないとやばいかも」と思っていたところ、育休中にちょっと変わった体験をし、その結果、復帰後にとても楽しく仕事ができるようになりました。

 復帰してまだ4か月なので、海外出張や海外勤務については未経験ですが、育休中の体験を中心にご紹介します。

●オムツ替えしながら経営を学ぶ!?~育休プチMBA勉強会に参加して

 都内某所の平日昼間、ママ向け貸しスペースの一室に集まった20数組の赤ちゃん連れの女性達。片手に赤ちゃんをあやし時には授乳しながら、組織の経営課題や制約人材をめぐるマネージメントについて熱のこもった議論が展開される不思議な空間・・・・。
 「育休プチMBA勉強会」は、マネージメント思考や復帰後に直面する「壁」を疑似体験しながら、「残業ができない等の制約を背負った子育て中の女性が、当事者目線だけでなく経営者目線で、どのようにチームに貢献し組織の成果に貢献できるか」を考える場として、昨年の夏に開始されました。プログラムは勉強会主宰の国保祥子さん(静岡県立大学講師)が実際にビジネススクールで教えているケースディスカッションの内容を、育休者向けにアレンジしたものです。
 私も縁あって、最初は参加者として、2015年の夏からは運営メンバーとして関わるようになりました。特徴的なのは、国保さん含め運営メンバーはほぼ全員が0~1歳児を育児中の女性ということ。Facebookやテレビ会議を駆使しつつ、勉強会の当日以外はすべて在宅で意思決定と作業を進め、子供の体調不良でいつ誰が離脱してもいいように、徹底したタスクの共有化とチーム制を敷くなど、無理なく無駄なく効率的に仕事ができる業務フローが工夫されていました。
 また、勉強会の参加者には第2子のママが多かったので、最初の復帰後に一人で仕事を抱え込み空回りした話や、逆に営業成績が上がった話など、具体的な事例を聞きながら、復職後に目指したい姿を描くことができたのも大きかったです。


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(勉強会での加瀬さん)

●いざ職場に復帰してみて

 以前は、復帰後の自分の働き方に漠然とした不安を感じていただけでしたが、勉強会でマネージメントの視点に触れたことで、組織全体を俯瞰しながら自分の役割やタスクの優先順位を意識して行動するようになりました。また、時間に追われる育児生活の中で、段取りやリスク管理の力が自然に強化されていたことも感じました。
 現在は海外出張が少ない広報の仕事をさせていただいていますが、もともと好きな仕事で自分の勉強にもなってとても楽しいです。時間の制約はあるものの、母親モードを切り替えて、また思い切り仕事ができることに純粋な喜びを感じて、自分でもびっくりしています。

●意外に働きやすかったJICAという職場

 育休中に、他のママと話して気づいたことは、国際協力の仕事は長期のブランクをあまり気にしなくても良い職場だということです。他の業界のママ達が「長く職場を離れると組織の中で自分だけ浦島太郎になってしまう」と心配し早めの復帰を決断した話をたくさん聞きました。しかしJICAの場合は様々な業務を経験しながらキャリアを形成することを前提に、3年に一度は在外事務所を含む他の部署への異動があるため、「海外勤務帰りで、国内で働くのは久しぶり」という人が大勢いて、自分だけブランクを心配する必要がありません。
 また、時差がある途上国とやり取りする仕事のため、時差出勤や在宅勤務制度も充実しています。私は子供の保育園への送りは夫にお願いしているので、朝早めに出勤することで時短を使わなくてもフルタイムで働けます。また時々在宅勤務を活用することで、通勤時間を省きながら集中して業務を片付けるメリハリある働き方を実践しています。

●育休経験が国際協力の仕事に役に立つ!?

 さらに、国際協力の仕事は外部のコンサルタントや業務委託先と一緒に仕事をすることが多く、管理職でなくてもプロジェクトマネージャー的な立ち位置で仕事をする機会が多いので、他者の協力を得て物事を成し遂げるのがベストアプローチな子育てママにとっては仕事がやりやすいと感じました。
 そもそもJICAの仕事は途上国の人材育成や制度・仕組みづくりが中心です。想定外の事柄が多発し、予定通りにいかない異文化社会の中で、相手を理解しながら粘り強く行動変容や社会の変化を促すのがJICA職員の仕事の真髄。子育ても、大人の都合では決して動いてくれない子供を相手に、まさに異文化理解力と交渉力の修行道場。 大人の常識や理屈が通じにくい子供に向き合い、相手の求めるものを満たしながら、いかに物事を進めていくか。忍耐力と創意工夫が問われます。そう考えると、子育て経験は途上国支援に必要な素養を養うための格好のトレーニングの機会になるのではないかとも感じています。

●育休経験=ワークスタイルのよい転換

 そもそも若いうちは体力勝負のバリバリな働き方もできますが、それをずっと続けていくのは辛いもの。どこかで働き方を変えないと、と思いつつできずにいたので、出産は働き方や生き方を根本的にシフトチェンジするよい機会になりました。
 育休中になぜ自分が働くのか、仕事を通じて何を実現したいのかを問いなおす機会を持てたことで、復帰後も迷いなく働くことができ、それが楽しさにつながっていると感じます。

 まだまだ新米ママではありますが、「子供がいてもできる仕事」ではなく、「子供がいるからこそできる仕事(ぶり)」を実現することを目指して、これからも日々楽しくがんばっていきたいと思っています。

【育休プチMBA勉強会について】
参考:プレジデントオンライン「授乳しながら学べる『育休MBA』」(2015.5.18)
http://president.jp/articles/-/13922?page=2

 ご興味ある方はfacebookの「育休プチMBA勉強会」ページで参加者募集が行われていますので、チェックしてみて下さい。また復帰後の方や妊娠前の方、男性等を対象に「週末プチMBA研究会」も隔月の週末に開催されています。