【パーソナルデータ】
 今回お話を伺ったのは、開発コンサルタントとしての経験を経て、現在、世界銀行に勤務されているY・Oさん。開発コンサルタントとして勤務していた際には、お子さんとご主人を伴い留学されたというエピソードをお持ちです。
 学生時代、就職、結婚、出産そして転職…それぞれの転機に、Y・Oさんはどのような決断をし、そしてキャリアを積んでこられたのでしょうか。

【プロフィール】
 A大学大学院に在籍、土木工学に基づく開発援助について学ぶ。修了後、都市計画コンサルタントとして開発コンサルティング企業に勤務し、主にベトナムに駐在して都市開発マスタープランの策定や高速鉄道F/S等に従事する。
 開発コンサルティング企業在籍中に、第1子を出産。さらに、翌年に英国に留学してプランニング修士号を取得する。帰国、復職を経て2015年12月、退職。
 2016年1月、世界銀行へ入行。現在はオペレーションズオフィサーとして勤務。


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最初の転機は大学在学中の転籍
 もともと、親の仕事の関係でアメリカに住んでいたことがありましたので、子供の頃から漠然と「海外で働きたい」という思いを持っていました。中学生の頃は国際公務員に憧れていましたが、国際公務員になるためのキャリアパスについてはよく分かっておらず、憧れどまりでした。
 途上国により興味を持つようになったのは、大学生の時に経験したフィリピンのスラムでのホームステイがきっかけです。当時お会いした国際協力に携わっている方々から、国際協力を志すにあたっては、自分の軸になる技術を身に着けることの重要性を説かれ、自分自身の専門性について考えるようになりました。ちょうど時期を同じくして、学内に、工学に軸足を置いた国際協力人材の育成を目的とするコースが設立され、進学を決意しました。入学時には文系の学部でしたので、いわゆる大学在学中の理系への転籍ということになります。大学入学後は、数学も物理もほとんどやっていなかったため、進学(転籍)後の成績はかなり低空飛行でしたね(笑)。
 進学したことで、JICAやJBICの職員、開発コンサルタント、NGO職員といった、国際協力に携わる様々な立場の方とお会いするきっかけがさらにたくさん生まれました。その結果、国際協力に携わっていきたいという思いは強くなったのですが、一方で、それぞれの立場の魅力を知ったことで、自分自身がどのような立場で国際協力に携わっていきたいのか、方向性をなかなか決めきれずに迷うこととなりました。
 最終的に開発コンサルタントを目指す決め手となったのは、途上国の現場の最前線で活躍し、現場を熟知する開発コンサルタントという仕事に魅力を感じたこと、また、実際に開発コンサルタントとして働く魅力的な方に何人もお会いできたことでした。

仕事に没頭する日々、自分で選んだ2回目の"転機"
 修士課程修了後、希望していた開発コンサルティング企業に就職することができました。都市計画・交通計画を中心とした会社でしたが、入社後2週間と経たず現場に派遣されました。これには驚きましたね。その後はひたすら、現場で四苦八苦する日々を送りました。そして、徐々に都市開発のおもしろさに触れ、カウンターパートと分かり合える喜びを知るにつれ、良い仕事を通じて自分の専門性を高めていくということに没頭するようになりました。入社後数年間のほとんどは、ベトナムに駐在しているような状態でしたが、大変というよりも楽しかったという思いが強いです。
 結婚後も現場での仕事を続けましたので、夫とはほとんど別居婚といえる状況でした。数年経つうちに子供が欲しいと思うようになり、やりがいのある仕事・現場からは離れがたかったのですが、会社に相談して、大きなプロジェクトが終了したタイミングで日本をベースとした業務に切り替えさせてもらうことになりました。帰国後妊娠し、産休に入るまでの期間は、日本国内での案件支援業務が中心でした。

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キャリアブレイクを利用してのスキルアップ
 妊娠が分かってから考えたのは、出産後のいわゆるキャリアブレイクをどう活用できるか、ということでした。入社後からずっと、途上国の現場でアウトプットを出すことに注力し続けてきましたので、ちょうど妊娠した時期は、知見をインプットして自分の引き出しを増やしたいという思いが高まっていた頃でもありました。
 プランニングの勉強を体系的にしたいと思っていたこともあり、どうせしばらく仕事から離れることになるのであればと、以前から興味のあった留学を志向しました。夫の職場は子供が3歳まで育児休暇を取得できる制度がありましたので、子連れで留学するなら今しかないと考え、決断しました。産休期間中は技術士試験の勉強や留学の準備に費やし、大きなお腹を抱えて試験会場に向かったりしていました。

 英国留学期間中の一年間、夫は育児休暇を取得して家事育児全般を担当してくれました。国際協力とは異業種の、技術系で男性中心の職場でしたから、制度上は可能なこととはいえ、男性が一年間もの育児休暇を取るというのは異例のことでした。日本はまだまだ男性が主体的に育児を行うために時間を割くことに対する理解が進んでいません。夫にとって、私(妻)の留学のために育児休暇を取得するということは、並大抵のことではなく、相当の覚悟を必要としたのではないかと想像しています。
 私が海外出張を繰り返していた時期も、夫はやりたいことを応援してくれていました。そういう家族や周囲の人の理解とサポートは、国際協力の仕事では特に重要だと思います。夫には本当に感謝しています。

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留学先(英国)

復職、そして再度の"転機"~転職~
 留学からの帰国後、私自身も元の職場に復職しました。職場にはもともと、お子さんのいる先輩が1人いたので、いかに開発コンサルタントとしての仕事と家庭の両立が大変であるか、見聞きしていましたし、それなりにイメージはできているつもりでした。しかしながら、やはり実際に自分自身のこととして直面してみると、両立は想像していた以上にハードなものでした。私の場合は幸いなことに、会社の理解がありましたので、保育園の迎えに間に合うように退社できるようにしてもらう等、配慮を頂くことができました。
 しかしどこかで、自分にとって年間数カ月単位の途上国への出張をこなすことは難しいと言わざるを得なくなった今、より適切な活躍の場がないかと考えるようにもなっていました。加えて、開発コンサルタントとしての現場経験を経て、より上流の国際協力の潮流がどのように形成されているかということについて関心が強くなっている頃でもありました。
 そんな時に、世界銀行で東京を拠点とするポジションの募集があり、先にお話しした通り、中学時代の国際公務員になりたいという夢を、実はずっと持ち続けていたこともあって、応募を決めました。

新たな職場へ舞台を移して、今もまだ夢の途中
 2016年1月に転職し、現在は、世界銀行のオペレーションズオフィサーとして勤務しています。主な業務内容は、日本の都市開発経験を途上国の都市に適用すること、また、それらの経験を世界銀行の本流のオペレーション(融資案件業務)に生かすことです。
 責任は重くなりましたが、その分、大変やりがいを感じています。世界銀行はオープンに議論できる雰囲気があり、非常に刺激にもなっています。 国際協力に携わる仕事である以上、海外出張はやはり、つきものです。育児との両立についてですが、例えば入行してすぐに1カ月弱の海外出張に出る機会があったのですが、このときは夫の両親が上京して助けてくれました。また、実家の両親のサポートも受けております。
 今後の中長期的な目標としては、仕事面では世界銀行でキャリアを積むことと、オペレーション(融資業務)の経験を積むことです。生活面では、日々成長していく息子の変化をこの目に焼き付けること、愛情をたくさん注ぐことです。先日、出張から帰ってきたら急激に話せる言葉が増えていて、本当にびっくりしました。子供はすぐに大きくなってしまいますね。

国際協力分野での活躍を目指す方へ
 国際協力の仕事は本当にやりがいのある仕事です。私自身は仕事が大変、きついと思ったことは何度もありますが、それでも仕事が嫌だ、投げ出したいと思ったことは一度もありません。
 家庭との両立に向いている業種とは決して言えないかもしれませんが、男女問わず、一緒に道を切り拓いていく仲間が増えたら嬉しいです。ぜひチャレンジ精神のある優秀な若い方々にどんどん入ってきて欲しいと思います。