【大宮さんプロフィール】
file2

●長男の誕生・育児を機に変わった価値観
 途上国における機会の不平等を解消したい、途上国の活力を日本の活性化につなげたい、と考えてJICAに入構しました。入構から現在に至るまで、高等教育支援やアフガニスタン支援等を行い、途上国の国創りへの熱意を支えその支援をする醍醐味を感じながら働いています。

 20代は独身で時間も体力もあったため、仕事に熱中して残業や休日出勤も厭わずにバリバリと働いていました。その時は気づいていませんでしたが、自身の私生活の充実は気にも留めず仕事にのめり込んでいました。ワークとライフのバランスはなく、ワークのみという生活でした。

 転機は、2011年の結婚と留学、そして、2013年の長男誕生です。まず、結婚によって自分の家族をもった嬉しさと幸せで、当たり前ですが、家族との時間を大切にするようになりました。次に、米国への留学を通じて、人生を楽しむアメリカ人の前向きな姿勢に感銘を受けたことで、仕事も私生活も楽しむ姿勢が強くなりました。
 さらに、2013年に長男の出産に立ち会って、洗礼を受けたかのように価値観が変化しました。妻からこの世界に産まれ出た長男の姿が輝いて見えて、ガラガラと価値観が崩れていく音が聞こえてくるかのようでした。完全な親バカですが、我が子の可愛さにメロメロになり、この子のために頑張ろう、この子が生きていく未来のために世の中を少しでもよくしていこうと決意しました。
 結婚、留学、子供の誕生を通じて変わった仕事観、人生観をどう形にして日々の生活に反映していくか、しばらく悩んでいました。その結果、まずは子育てを体感してみようと考えて、息子が1歳4か月の時に3ヶ月間の育児休業を取得することにしました。たった3ヶ月間の経験で子育ての大変さが分かったなんて言えませんが、振り返ってどれぐらいの大変さかを想像できるようにはなったと思います。子供が朝起きてから寝るまでの間の対応(着替え、食事、遊び、お風呂、おむつ交換、寝かしつけ等)、子供が寝た後の翌日の準備、炊事、洗濯等を並行して段取り良くこなすことは、仕事の大変さとは別次元ですが“とても大変“です。いや、仕事以上に“大変”といっても過言ではありません。
 例えば、仕事はどんな相手でも言葉で一定の意思疎通ができますが、赤ちゃんは言葉が通じず何を欲しているのか色々と想像して対応しなくてはなりません。仕事は定時がありますが、子育ては赤ちゃんが突然服を汚したり、深夜に夜泣きをしたり、24時間対応とも言えます。そして、か弱い命を預かって育んでいるという緊張感は、仕事の緊張感とはまったく別物です。育児休業を終える頃には、子育てをしながら仕事もしている方々、子育てをしっかり行っているパパとママに強い敬意を抱くようになっていました。
 もちろん苦労だけではありません。1歳の息子と24時間ずっと一緒にいたことで、その日々の成長をすぐ傍らで見ることができたことはこのうえない幸せでした。野菜を食べられるようになった、単語を発した、電車が好きになった等、小さな成長ですが、輝くような笑顔とともに成長する姿が心に焼きつきました。そして、3ヶ月の間に濃密な時間を過ごしたことで息子はすっかりパパっ子になったと信じています。

 さらに、育児休業中に保育園事情、自治体による子育て支援の実情、ママ達の本音等を勉強できたことも貴重な財産となりました。勉強の結果として至った考えは、現在の日本社会の働き方は持続可能ではないということ。急激な少子高齢化が進んで労働人口が減る中で、新しい働き手が求められており、育児や介護等で仕事をしたくてもできなかった人達にも働き手として参画していただく必要があります。また、事情のある方に配慮した結果、育児や介護等を行っていない人、例えば独身の男性や女性に仕事がしわ寄せされることは避けなくてはなりません。さらに、この点が一番大事ですが、日本社会は成熟した社会として仕事も私生活も充実できる働き方や生き方を築いていく時期に来ているのだと思います。
 育児休業を通じて、働き方改革により長時間労働の是正や育児・介護休業の取得促進、生産性の向上等を行う必要があり、そのために自分もできる限りのことをやっていこうという考えに至り、2014年10月に職場復帰しました。復帰後は、個人としてワークライフバランスを体現するだけでなく、職場と社会で働き方を変える原動力になることを目指すことにしました。

●『働き方改革(SMART JICA PROJECT)』での活動
 ところが、2014年10月に職場に復帰してしばらくの間、新しい職場と仕事に慣れることに時間がかかり、残業が続く毎日でした。このままではいかんと悩んでいた矢先、人事部から2015年から組織として働き方改革を行うという案内がありました。これはチャンスと思い、所属部署のワークライフバランス担当となり、『働き方改革(SMART JICA PROJECT)』を推進し始めました。

 部長以下管理職も働き方改革に前向きで、同僚も仕事の効率化に積極的だったため、週一回の定時退社と月一回の有休取得を部署の目標として各自工夫して取組んだ結果、働き方が大幅に変わりました。もちろん、取組を始めた当初は、ただでさえ忙しいのに何をやろうとしているのか、これ以上効率化はできない等、反発の声もなかったわけではありません。また、長い間で培われたきた仕事に対する価値観を一朝一夕に変えることは難しく、働き方の変化の定着が見られない場面もありました。しかし、個人だけでなく、日本社会としても働き方改革をしなくてはならないということを徐々に浸透させた結果、そして、しつこくワークライフバランスを叫び続けた結果、働き方が大幅に変わっていきました。

 成功要因は、働き方の細かいルールは設定せずに、とにかく週一回は定時退社、月一回は休暇という働き方ができるように、生産性の向上、業務の効率化を各自が工夫して取組んだことです。働き方を変えるというと、会議時間やメールの書き方等、細かい働き方のルールを決めるということになってしまうかもしれません。しかし、皆さんいい大人、成熟した社会人ですから、細かいルールは決めず、目標(「週一定時&月一休暇」と略していました)を共有して各自の事情(仕事も私生活も)に応じて工夫して取組むことが大事だと思います。さらに、プロセスではなく、結果をしっかり見るということで、有休取得数と残業時間を定点観測しました。その結果、2015年度は有休取得数が前年度比増、残業時間が前年度比20%弱減、仕事の質と効率性が向上するという素晴らしい成果が得られました。

 2016年度は、部として更に高い目標「週一以上定時退社&有休完全所得」を掲げて積極的に取組んでいます。働き方改革の啓発ポスターを作ったり、「ゆう活」を宣伝したりと雰囲気を盛り上げる取組は継続していますが、基本は引き続き個々人の工夫に委ねています。今のところ、有休取得の一層の増加、定時退社の定着(緊急事態がなければ毎日ほぼ定時退社)といった変化が出てきています。働き方改革は長年の仕事観、場合によっては人生観も変えなくてはならない大変なことだと考えており、改革を完了するには時間がかかります。地道に続けて、働き方の変化を定着させて、定着だけでなく一層深化させていくべく、今日も働き方改革に全力投球しています。

file2
(ワークライフバランスで充実した生活(?)で最近力を入れている趣味の伝統芸能「ばか面踊り」の衣装を着た筆者)
file2
(最愛の息子と娘と。子どもの未来のためにもワークライフバランスの推進を頑張ります。)

●国際協力の分野で活躍する方へのメッセージ
 人生や働き方は多様です。しかし、今までの日本社会は長時間労働を前提とした働き方で、時間を無制限に仕事に費やせる人とそうでない人で大きな差がありました。少子高齢化が進む成熟した社会である日本において、私たちの世代がこの働き方を改善し、多様な働き方が当然となり、仕事も私生活も充実できる社会にしましょう。働き方改革は、今すぐ、今日から、自分自身の働き方を変えることから始めることができます。冗長な打ち合わせやメールがないか、無用な文書を作っていないか、時間を区切って集中して仕事をしているか、常に効率化と生産性向上を意識しているか等、自分自身の日常の働き方を改善することが働き方改革の第一歩です。働き方改革やワークライフバランスという言葉が死語になるように、仕事と私生活のバランスと各々の充実が当たり前となる日本社会を共に築いていければと願っています。「開発」とは「better change」、途上国だけでなく、開発(国際協力)業界で働く私たちの働き方も「better change」していきましょう!