「新しい風」を県づくりに ~行政からの視点

■ JICAボランティア等経験者枠を設けた背景

 佐賀県には今、青年海外協力隊OBが5名、働いています。4年前の平成24年度、JICAボランティア等経験者枠(約1名)を設け、毎年1名づつ採用、27年度は2名採用で計5名となりました。これら若い力が佐賀県づくりに参画してくれたことを、心から喜んでいます。
 4年前、佐賀県にもグローバル化の波が押し寄せ、企業も県もこの波をどう乗り越えていくか、どう活かしていくかが、大きな課題となっていました。県庁内にグローバル人材を確保する必要性が急速に高まっていたこと、これがこの特別枠を設けた理由のひとつです。
 もう一つの理由は、私はこちらの方がより重要だと考えているのですが、言葉も価値観も違う住民の中に入り、信頼関係を築こうと努力してきた彼らの経験が、今、佐賀県にも必要だ、と考えたことです。
 彼らの多くは「語るもの」を持っています。異文化の中で言葉に苦労しながら、何とか住民の方と心を通わせようと努力してきた経験が、「語るもの」としてしっかり心に刻まれている。信頼関係を築いていかなければ、仕事は前に進んでいかない、このことは彼らの経験した現場と県の仕事の現場と基本的には変わることがありません。県の仕事は、税の徴収から福祉、医療、教育、産業振興など、驚くほど幅が広く、多様です。県民の考え方も様々で、皆が賛成、という場合はむしろ少なく、現実には多くの場合、利害等も絡み、賛成もあれば反対もある、その中で、ものごとを決めていかなければならない局面の連続です。その時に、どれだけ住民の方に理解してもらえるか、納得してもらえるか、そこが仕事がうまく進んでいくか否かのポイントになるのです。今、県庁や、自治体に最も求められているのは、この地道な、泥臭い、粘り強い、信頼関係を築こうとする能力ではないか、と私は思っています。「いい仕事」をするためには、苦しくともここに時間をかけなければいけません。人のために何かをしたいという彼らの情熱、住民の中に入り込み信頼関係を築いていこうとする、彼らの屈託なさ、頑張り、粘り、明るさ、そういったものを、是非とも地域づくりに生かしてもらいたい、県庁の中に「新しい風」を吹かしてもらいたい、そう思ったこと、そのことがこの制度を立ち上げた時のもうひとつの理由でした。

■ 青年海外協力隊OB入庁組の近況報告

 「くろいわさーん」はるか遠くから呼ぶ声、驚いて振り向くと、そこに1期生(24年度入庁)の細山田さん。アフリカのおおらかさを持つ彼女は「自分と’違う‘考えだからといって、それが’間違い‘ではない」との思いを胸に、一人一人の県民と向き合っています。
(世界遺産登録推進室→総合福祉センター)

 「あなたの態度は上から目線よね、と言われたんです」とショックを語る2期生(25年度入庁)の田中君。福祉や教育に情熱を注いできた彼が今取り組んでいるのは、税の徴収。畑違いの世界で悩みながら、日夜奮闘しています。
 (障害福祉課→佐賀県税事務所)

 慣れない申請手続きに苦労しながら頑張っているのは3期生(26年度入庁)の鶴田さん。
 5人のうち、唯一の地元佐賀県出身者。「あのー、ですよ」と相談を持ちかける彼女は、地元FMラジオで田中君と一緒に協力隊活動を紹介しています。
(母子保健福祉課)

 新採職員歓迎パーティで、100名を超す中からやっと見つけた4期生(27年度入庁)の佐々木さん、同じく、有田焼400年事業推進、という県を挙げてのプロジェクトの一員として配属された、荒平さん。二人とも、今はとにかく仕事のやり方を吸収中です!
 (佐々木さん:河川砂防課、荒平さん:有田焼創業400年事業推進グループ)

 これは、今、佐賀県庁の仲間として頑張っている、青年海外協力隊OBの皆さんの近況です。皆、苦労しながらも、それぞれの持ち場で踏ん張ってくれてい るようです。
 彼らが一日も早くプロフェッショナルの県庁マンとして力をつけ、自分のフィールドで、彼ららしい仕事の仕方、「いい仕事」をしてくれることを、楽しみにしています。

青年海外協力隊OB職員たち
(青年海外協力隊OBの職員たちと)


■ 国際協力のフィールドで頑張っている皆さんへ
 青年海外協力隊など、国際協力のフィールドで頑張ってこられた皆さん、人のために何かをやりたい、人の喜ぶ顔が見たい、そう思っている皆さん、佐賀県というもっと大きなフィールドで、一緒に県づくりに参加しませんか。皆さんの先輩たちも楽しみに待っています!
  • 細山田明佳さん:タンザニア・理数科教師・H21年度1次隊
  • 田中啓之さん :ネパール・村落開発普及員・H22年度1次隊
  • 鶴田さゆりさん:中国・幼児教育・H21年度2次隊
  • 佐々木舞さん :キルギス・H24年度1次隊
  • 荒平愛佳さん :セネガル・H24年度1次隊
職場風景
(黒岩部長と職場風景)

■ プロフィール
黒岩春地(佐賀県国際・観光部部長)
大学院(国際法)修了後、佐賀県庁に就職。通商産業省出向をはさみ、企業誘致、国際交流、貿易、市町村行政、人材育成等に携わる。
市町村課長時代は、市町村合併(49→20市町村に)を経験。経営支援本部長時代に、佐賀県庁採用試験のJICA等ボランティア特別枠創設に尽力。
2014年4月から現職。休日は、川辺で泳いだり本を読んだりして楽しんでいる。