青年海外協力隊から地域おこし協力隊へ

 今回は、青年海外協力隊として国際協力活動に参加され、帰国後、広島県神石高原町の地域おこし協力隊として活躍されている長山 恭子(ながやま・きょうこ)さんにお話を伺いました。

(以下、敬称略)

-まずは、青年海外協力隊に応募されたきっかけについてお聞かせください。

長山: 私は専門学校にて海外留学資格取得後、アメリカの短期大学に入学、卒業しています。
   その時に、知らない土地で生活してその土地の文化の中に入っていくことで得られる“学び”や“感動”は、
   旅行などでは味わえない経験だと感じました。
    大学卒業後は、海外雑貨の輸入代行店で働いていましたが、留学時の印象が強く残っていて、「いつか
   海外で働きたい」という思いがありました。また、折角海外で働くのであれば、日本人がなかなか知らな
   い土地がいいと考えていました。そんな中、知人から「日本人にあまり知られていない場所で活躍できる
   仕事がある」と、青年海外協力隊について教えてもらう機会があり、応募を決めました。
   

-それでは、青年海外協力隊としての活動について、お聞かせください。

長山: キルギスの最貧州と言われているナリン州のアリシュ村に派遣されました。その村にある地域女性団体
   『SAORI』では、女性たちが羊毛織物のお土産品を製作していたのですが、その生産管理、販路開拓、
   新作指導を行うのが私に与えられた役割でした。他にも、周辺の村や手芸学校を訪れ、技術支援などを行
   いました。
    『SAORI』は、仕事をしたことのない、村の主婦の方たちで構成されていましたので、当初は「仕事
   をする」という意識や意味を理解してもらうことが非常に難しく、苦労しました。それも、当人たちだけ
   でなく、その家族の理解も得る必要があったため尚更です。
    しかし、仕事を進める上だけでなく、私自身が村での生活を送るにあたっても、彼女たちの村でのライ
   フスタイルや家族の役割というものを理解することが、非常に重要でした。このため、まずは彼女たちの
   ライフスタイルを知ることから始めました。ライフスタイルを知り、生産管理の手法などの仕事の進め方
   をライフスタイルに合わせて変えていく、という取組みが、最初はどれほど時間がかかったとしても、結
   果的に仕事を進める近道だったなと実感しています。
    仕事を進めるために人を変えるのではなく、人に合わせて仕事の進め方を変えることが出来る、という
   学びは、私にとって大きな経験になりました。

(キルギス アリシュ村にて。長山さんは前列左から1番目)
(キルギス アリシュ村にて。長山さんは前列左から1番目)


    実は私が派遣される前に2人の前任者がいましたが、仕事への認識の違いは最初の担当者からの課題
   だったようです。前任者の努力のお陰で私の活動は円滑に、かつ成果につながるものになったと思ってい
   ます。また、前任者を含めた6年間の積み重ねにより、地道に信頼関係を築いていったことが、
   『SAORI』が構成メンバーにとって家族同様に大切なものと考えられ、今現在も活動が続いている一番
   の理由なのだと思っています。

-協力隊派遣後、現在の地域おこし協力隊になられるまでの経緯や動機についてお聞かせください。

長山: 私自身は東京出身ですが、帰国後は地方で就職することを希望していました。それは、キルギスで感じ
   た村の生活の温かみや、住む人々の関係性がとても印象的で、似たような環境で仕事がしたいと考えたか
   らです。地方で働くために、帰国直後に運転免許の取得をしたほどです。求職活動にはインターネットサ
   イトを活用しており、そこで「地域おこし協力隊」の存在を知りました。
    青年海外協力隊での活動では、仕事の成果を身近に感じることができること、自身の周りの人々の生活
   を“少しだけ”いいものに変えて笑顔を増やしていけることに非常にやりがいを感じていました。地域おこ
   し協力隊の仕事内容は、青年海外協力隊での活動に近いと思いましたし、日本で協力隊に近い仕事に携わ
   ることができる、と魅力に思い、応募を決めました。

(アリシュ村にて現地の子供たちと。長山さんは左から3番目)
(アリシュ村にて現地の子供たちと。長山さんは左から3番目)


-それでは、現在のお仕事の内容について、お聞かせください。

長山: 地域おこし協力隊の仕事は、大きく分けて「地域の夢のサポート」と「自身の定住活動」の2つに分か
   れます。「地域の夢のサポート」は、それぞれが担当の地域に配属され、地域の抱える問題を解決するた
   めのサポートにあたります。私は今年4月に草木地域の担当をすることになったばかりですので、今はで
   きるだけ運動会や会議など、地域の行事に参加することで、地域を知り自分を知ってもらうきっかけづく
   りを行っています。少しずつですが地域の方々にも認識されるようになり、会議の場で自分の意見を言え
   るようになってきました。
    また、地域おこし協力隊は任期終了後の定住が期待される仕事ですので、自身が得意としているデザイ
   ンの面で地域貢献が出来ればと考えています。現在は、地域おこし協力隊・自治振興会主催のイベントが
   あればチラシ作成などを行うようにしています。また、折角の恵まれた自然を活用しない手はない!と、
   ネイチャーゲームなどを通じた、子供たちの自然体験に係るイベント計画・実行のお手伝いをしていま
   す。

-青年海外協力隊での経験が、現在のお仕事に活きていると感じるのはどのような点でしょうか。

長山: 地域へ溶け込んでいく力、については、青年海外協力隊での経験が活きているように思います。キルギ
   スでも村にホームステイしていましたので、仕事していても、プライベートでも、全ての時間が村の人た
   ちと一緒でした。時々、少し窮屈に感じることももちろんありましたが、プライベートの部分で食事や農
   作業の手伝いなど、多くの時間を村の人たちと過ごしたことで、信頼関係ができ、仕事にもプラスにつな
   がることが多かったです。
    現在も、そんな、神石高原町の人たちにとっては何でもないような時間を共に過ごさせてもらうこと
   で、地域のことをより深く知るきっかけになればと意識しながら、活動しています。
    あとはやはり、多くの途上国経験者の方に共通のことと思いますが、何が起きてもめったに驚かない心
   が備わりましたね(笑)。予定や計画の急な変更にもくじけなくなり、助かっています。

(広島神石高原町にて地域の方々と。長山さんは前列右から1番目)
(広島神石高原町にて地域の方々と。長山さんは前列右から1番目)


-それでは反対に、途上国での活動後に国内での業務に就いたことで、ギャップを感じたことなど、苦労された経験はありますでしょうか。

長山: 地方に限らず、日本特有の、人との距離感・付き合い方に戸惑うことはあり、同じ日本人同士であるこ
   とはいいこともありますが、難しいこともあると感じています。青年海外協力隊の時は、言葉が少し不自
   由で内容を完璧に把握できなくとも、思いのほか何とかなったという経験が多いですが、現在の業務では
   同じ言語を介することで、言葉の“裏”を感じたり考えたりしてしまうことはありますね。深く考えずに突
   き進んでいた、青年海外協力隊の頃の自分を懐かしく、また、うらやましく思うこともあります。

-長山さんは東京のご出身とのことですが、地域おこし協力隊の活動をされている中で感じる、地方の仕事の魅力についてお聞かせください。

長山: 世の中では過疎化、地方衰退という言葉を耳にする機会がありますが、実は地方って、とても元気で魅
   力的な人で溢れているんですよ。そして、そんな魅力的な人たちの中で、一緒になってその地域の未来を
   考えることができること。考えたことをすぐに実行に移せる土壌があること。これらのことは、地域おこ
   し協力隊の活動に参加しなければ、わからなかった魅力だと思います。
    そして何より、毎日の朝の空気がおいしくて、食べ物がおいしくて、“生活の知識人”がいっぱいいて、
   夜の星空が綺麗で、その環境で日々の生活を送れることはとても魅力です!

-今現在の「夢」について少し、お聞かせください。
 長山: 神石高原町に来て1年。まだまだ知らないことばかりで、実際
    の仕事では地域の方々に教えてもらうことばかりです。ただ、毎
    日新しい発見や学びの連続で、とても楽しく勉強させてもらって
    います。微力ですが、少しずつでも私の活動によって地域の方々
    が笑顔になる、生活が変わるといった、恩返しをしていけたらと
    思っています。また、移住者の一人として、そして地域おこし協
    力隊で培った地域のネットワークを活かして、新規の移住者のサ
    ポートなどもしていけたらと考えています。






(地域おこし協力隊の活動の様子)
(地域おこし協力隊の活動の様子)

-最後に、これから国際協力の世界を志している方、あるいは、国際協力活動を経て今後のキャリアについて考えている方へ、メッセージをお願いします。

長山: 国際協力に関わることは、その活動を通じて自分自身や自分の国について振り返り、人生の“豊かさ”に
   ついて考えさせてくれる貴重な経験だと思います。途上国の人々は、食べること・仕事すること・遊ぶこ
   と・生きることといった、生活における色々な「あたりまえ」を一生懸命に生きています。勿論、国際協
   力とは途上国の人の生活を少しでも豊かにするための活動ではありますが、活動を通じてそんな人々と共
   に生活することで、自分自身の生活を“豊か”にする、そんな経験を、多くの人にして欲しいと思っていま
   す。

■ プロフィール
長山 恭子(ながやま・きょうこ)さん
東京出身。青年海外協力隊としてキルギスに派遣された経験を有する。2年の活動を経て帰国後、広島県神石高原町にて地域おこし協力隊に参加し、現在に至る。