国際協力と日本の地方創生 深い関係性について

1.背景

 ご存知のように、日本は少子高齢化が進み、特に地方における過疎化は深刻な問題になっています。従来より地方へのUターン、Iターンの取り組みなどが行なわれていましたが、2014年9月に第2次安倍内閣において地方創生大臣が誕生し、同12月に「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が閣議決定されて以降「地方創生」については、国を挙げての取り組みが本格化しています。この流れは、2015年6月のいわゆるローカルアベノミクスと呼ばれる政府の基本方針「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」に引き継がれ、2015年9月に発表された新・三本の矢の第一の矢「希望を生み出す強い経済」でも地方創生の取り組みについて言及しています。

   まち・ひと・しごと創生本部
   関系法令・閣議決定等
   ローカルアベノミクス概要(PDFファイル)

 こうした政府の取り組みを受けて、ODAの実施機関であるJICAでも地方創生への貢献を打ち出しています。

   「地方創生」への貢献とJICAの役割(PDFファイル)
   途上国も日本の地方も元気にする事業、全国で展開中(前編) (後編)

2.地方における国際協力活動

 国際協力と日本の地方との深い関わりは今に始まったことではありません。もともと日本の行う国際協力は、日本の知見や日本のこれまでの発展の経験を開発途上国に伝え、それらの国の経済社会の発展に貢献することを目指しています。つまり、日本の地方の伝統やその発展の軌跡そのものが国際協力の種になりうるのです。

  mundi(2013年10月号)「特集 市民参加 あなたの一歩が 世界を変える」
  mundi(2014年10月号)「特集 地域発の国際協力」

 JICAは国際協力の実施機関ですが、海外拠点だけでなく、日本国内にも複数の国内拠点を持っています。そこでは「専門家派遣」と並ぶ技術協力の手法の一つである「海外からの研修員受入れ事業」を行っており、地方が国際協力の舞台になっています。JICAでは毎年約10,000人もの開発途上国の人材を国内拠点で受け入れており、一部東京などの首都圏での受入れもありますが、北は北海道から南は沖縄まで、国際協力の現場は地方に存在しているのです。

 また、地方を拠点に活動するNGOや地方自治体からの提案を受け、その国際協力活動を支援する事業として、草の根技術協力があります。窓口はJICA国内拠点となっており、地方からも多くの提案が上がっています。2013年度からは「地域活性化特別枠・地域経済活性化特別」を設けており、地方の活性化を、国際協力を通じて支援する取り組みも行っています。

  mundi(草の根の活動を伝える特集記事)

3.地方で活かす・伸ばす「国際協力人材の資質と能力」

 さて、地方創生で活躍する人材には、「人材の素養としては、熱意があり、地元の人々の中に入っていけるコミュニケーション能力、そして、代々受け継がれてきた価値観を共有している農村コミュニティの中で、すぐには理解者が得られなくても粘り強く、地道に活動を続けられる」ことが求められているといった調査結果が出されています。

  「日本国内の地域活性化につながるJICAボランティアの事例調査(全編)(要約)」
   (独立行政法人国際協力機構中国国際センター/株式会社オリエンタルコンサルタンツ 2014年2月 
    PDFファイル)

 国際協力人材、例えばNGO職員やJICA専門家、青年海外協力隊員などの開発途上国での業務従事者は、異文化理解や厳しい生活環境の中での適応力などに加えて、熱意や現地の人々のコミュニティの中に入っていけるコミュニケーション能力、協力相手の自立を支援するための活動を粘り強く地道に続けることが求められています。

  しごと@JICA「国際協力人材に求められる6つの資質と能力

 上記のように、国際協力と地方創生で活躍するにあたって求められる資質や能力などの適性については高い類似性があると言えます。国際協力人材をはじめとする現場(フィールド)での業務経験者は、この能力や資質、経験を活かして世界で活躍するだけでなく、日本の地方創生の有望な担い手であると言えるのです。

 また、国際協力における地域開発は、都市部との格差是正、学校や医療機関、上下水道などへのアクセスの改善、農村部のコミュニティ開発や農業支援などの多様なニーズを含んだ極めて重要な支援の一つです。こうした課題は、過疎化によって学校や病院などへのアクセスが問題になってきている日本の地方が抱える課題と共通点があります。加えて、主要産業が農業という地方も多く、例えばJICAで最も多くの専門家を派遣しているのは農業セクターであることからも、日本の地方は有力な国際協力人材の供給源になり得るのです。

 このように、地方は国際協力人材にとって必要な経験を積む場として、また、国際協力人材の人的リソースの供給源として、多くの可能性があります。


4.まとめ

 国際協力人材としてキャリアを形成するにあたっては、海外だけではなく日本の地方においてその経験を発揮できる場が用意されているということですし、また、これから国際協力を目指したいけれど自分の専門性がないという方にとっても、まずは地方で経験を積むという選択肢があるということになります。むしろ地方での経験は国際協力の近道と言えるケースもあるでしょう。

 国際協力に関心は持ちながら将来的なキャリアが不安で国際協力に踏み込めないという方、また、国際協力経験はあるものの事情により今は海外で活動することが難しいという方や経験を今後は国内で活かしたいという方は、国内での活躍も視野に入れ、国際協力の世界で活躍することを考えてみませんか?