インタビュー



ケース1:ビジネス振興という切り口でアフリカ地域活性化を目指す企画調査員の挑戦

今回は、JICAケニア事務所にて企画調査員としてJICAの中小企業海外展開支援事業に携わっていらっしゃる、相園賢治(アイゾノ ケンジ)さんにお話を伺いました。

相園様

相園 賢治(アイゾノ ケンジ)さん

(以下、敬称略)

―途上国との出会い

私が途上国に関心を持ったのは、大学を卒業し社会に出てしばらく経ってからのことでしたので、タイミングとしては比較的遅いかもしれません。
国内でのサービス業勤務を経て、カナダのホテルで働いていたのですが、帰国が決まった際にどうしてもメキシコでプロレス(ルチャリブレ)、特に、本場の覆面レスラーを生で見たいと思い、バックパッカーとしてメキシコを訪れました。これが、途上国との出会いのきっかけでした。

起業を考えているABE卒業生への事業計画書作成のレクチャー

そこで初めて途上国の様子を目の当たりにして、それまで自分が見てきた世界(先進国)とのあまりの違いに、おもちゃ箱をひっくり返したような衝撃を受けました。
先進国においては、どちらかといえば生活というものが内側に閉ざされて見えにくくなっていると思うのですが、メキシコでは生々しい生活が外側にむき出しになっているということが非常に印象的で、そしてその環境が、妙に心地よく感じたことが、自分にとって強く記憶に残っています。
そして、メキシコには2カ月間滞在していたのですが、現地に長く滞在するにつれ、日本とは違うこういった国の産業やビジネスは一体どうなっているのだろう、ということに関心が高まっていきました。

―民間企業から国際協力業界へ、アフリカとの出会い

あらためて、簡単に私の経歴をお話しすると、大学卒業後は、国際協力には一見、直接関係のないと思われる民間企業に10年ほど勤めたり、2回ほど自分で起こした事業を経営したりしていました。
メキシコからの帰国後は、そのときの経験がずっと心の片隅に引っかかっており、何か自分にできることはないかと模索をしていたところ、ご縁があり㈳青年海外協力協会へ転職しました。そこで、JICAのボランティア調整員としてミクロネシアとセントルシアに合計2年強滞在しました。その後、やはり産業分野に関心があったため、島嶼国(パラオ、ミクロネシア、マーシャルの3国)を担当する経済的自立支援の企画調査員として4年、派遣されました。
さらに、アフリカの小規模ビジネス支援(アフリカ広域の一村一品運動推進の企画調査員)のため、開発コンサルティング企業へ移籍し、2007年から2年間、マラウイに派遣されました。これが私と、長い付き合いになるアフリカとの出会いです。

日本企業のサイト訪問

2010年にも同じく一村一品運動推進の企画調査員として、今度はケニアに派遣されました。計5年ほどアフリカに関わる中で、歴史が目の前で動いているということを強く実感し、今後もアフリカの発展に違う形で関わり続けたいと考えるようになりました。そこで、3年の任期を終えた2013年に独立し、ケニアのナイロビで現地法人「Aizono and assocites Limited」を設立しました。独立にあたってはもちろん、不安もありましたが、「何とかなるだろう」という精神で起業という選択をしました。

―中小企業海外展開支援という仕事

私が現地パートナーと立ち上げた法人のビジョンは、「ビジネス振興を切り口にしてアフリカ地域をさらに活性化していくこと」です。海外(日本を含む)の民間企業がアフリカへビジネス展開を目指す際の支援が、事業の柱の一つになっています。
法人を立ち上げ、本格的に会社の事業を開始していたところ、JICAのケニア事務所で企画調査員(中小企業支援調整員)の募集があることを知りました。その業務内容が当法人の事業とも重なっていたことから、応募を決め、2014年から現在に至っています。具体的な業務内容としては、JICAの民間連携スキームのマネージメントを行うほか、JICAケニア事務所の窓口としてケニア進出を検討している本邦中小企業に対して情報提供・各種助言やケニア政府関係者等の紹介なども行います。
年間約60から70くらいの企業・団体の方と100回以上の面談を繰り返しており、TICAD5, 6以降だんだん数が多くなってきていると実感しています。

ビジネスセミナー後の集合写真

ケニア事務所での特徴といえば、南アフリカやドバイ、ヨーロッパの駐在所など、すでに海外拠点をもち、それまでアフリカを兼轄していた地域担当者の方からケニア進出を検討して相談に来られるケースが半数以上を占めることでしょうか。ケニアでの引き合いが増えたため、片手間(兼轄)では対応しきれなくなり、ケニアに拠点をおいて本格的に営業をしようと検討されていることかと思います。
この仕事の魅力を実感するのは、何といっても、支援をしている中小企業の方の行動変容が目に見えてわかるときです。ビジネスのアドバイスとなると、成果が出たか否かの判断はすなわち、先方に利益がでたのかどうかということになるかと思いますが、ちょっとした工夫で利益構造が改善されることがあり、自分のアドバイスによって先方の行動がかなり変わってきたということがわかる場合があります。
一方で、全然行動に変化が見られない場合も多いことも事実で、自分の力量の無さを日々痛感しており、この年でも勉強の必要性を感じています。

―仕事上で大切にしていること・・・国際協力はサービス業

さて、この仕事に必要なことは、まずは経営学および経営アドバイスの経験だと考えています。途上国におけるビジネスで、MBA等の知識をそのまま使えることはほとんどなく、やはりこれまでのインプットの数がものを言います。ただ、逆説的ですが、経営学がそのままでは使えないということを理解するためにも、基本的な経営学は押さえておいたほうがよいかと思います。
また、それに加えて、その国のビジネス環境を理解していることも重要です。アフリカで一村一品推進運動の企画調査員として勤めた5年間も含め、途上国での経験を通じて私が感じているのは、途上国には新しいものやサービスに対して非常に保守的な側面があるということです。途上国でプロモーション活動しようとするとかなりの労力を要すことになり、また、色々なものやことが動くのにとても時間がかかるという経験を何度もしました。一方で、一度動くと、物事が一気に進むのが面白いところだとも実感しています。この、物事を「一度動かす」ために、どういったアプローチをするとよいか、といったことは、実際の経験を通じてのみ得られることではないかと思います。

とある村の工芸品製作女性グループの訪問時

私自身は国際協力に従事する前は、サービス業で働いていました。サービス業というものはいずれも、クライアントの事前期待にこたえるための活動といえると思いますが、国際協力も相手国や機関およびコミュニティの人たちの事前期待に答える活動を提供しないことには満足度があがらないという点で、国際協力もサービス業であると確信しています。そういった意味において、サービス業での経験が、現在の活動に活きていると感じています。

―国際協力の分野で活躍を目指す方へ

「ビジネスを通じて途上国の抱える課題を解決する」という形は、現在の国際協力の流行といえます。そのため、ビジネスを実際に行う人への支援スキームが、国連や開発パートナー等、さまざまな機関から提供されています。
JICAもその役割を担っており、私はそこに関わっている人間のひとりです。こういったスキームの運営上、ケニアでの事業展開を目指す中小企業から受け取った事業計画(企画書)を評価する機会が多くありますが、私自身がそこで重要と考えていることは、評価項目をクリアしないものは不可であると単純に判断せずに、それをクリアするにはどうしたらよいのかを問うことです。
途上国で事業を立ち上げる際に問わなければならないことは、「できるか、できないか」以前に、「やるならどうやるか」であり、そのことを一緒に考えるマインドがこの仕事には一番必要だと考えています。

ケニア産業化省のスタッフと。売れないハンディクラフトを
我々自身が購入して帰路についているところ
(それも購入したのは婦人用のサイザルバック)

ビジネスは持続的に存在し続けなくてはならない(ゴーイング・コンサーン)という使命をもっており、このコンセプトは国際協力にも通じるものがあると考えます。
「ビジネスを通じて開発課題を解決する」、扉はまだ開いたばかりです。「やるならどうやるか」のマインドをお持ちの方、一緒にこの扉を全開にしましょう。

相園さんは現在、JICAケニアのウェブサイトにて、ケニアでの事業を展開している日本企業の担当者に対するインタビュー記事を連載されています。「民間企業の方に、まずはケニアについて知ってほしい」という想いが込められています。ぜひ併せてご覧ください!