インタビュー



ケース2:企業の海外展開支援を通じて途上国の人と向き合う、開発コンサルタントの挑戦

開発コンサルタントといえば、途上国の現場で直接的に課題解決に向けた取り組みを計画・実行するスペシャリスト。
今回お話を伺った三反畑 希世子(サンダンバタケ キヨコ)さんは、開発コンサルティング企業で、日本企業の海外展開を支援するスペシャリストです。
現在のお仕事の内容から現在に至る経歴まで、お話を伺いました。

三反畑様

三反畑 希世子(サンダンバタケ キヨコ)さん

(以下、敬称略)

―企業の海外展開支援という仕事

現在、株式会社かいはつマネジメント・コンサルティングの国際ビジネス支援部に在籍しています。ODA事業で培ってきた途上国におけるコンサルティング経験を活かして、海外進出を検討している日本の民間企業の支援を行っています。
具体的には、企業より相談を受けて進出先の候補である途上国の環境(市場・貿易投資環境・各種制度)に関する調査や、相手国政府機関との協議・交渉を行ったり、企業が実際に途上国進出に乗り出す際にはそれに向けた計画・戦略の策定を支援したりする仕事です。時には途上国住民への啓蒙活動を行うこともあります。
私たちは開発コンサルティング企業ですから、支援する企業に利益をあげていただくことは勿論のこと、日本企業の進出を通じて途上国の開発課題の解決にも貢献することを事業の目的としています。

今、私は3社(主担当としては2社)のプロジェクトに携わっています。それぞれどのプロジェクトをとっても、関係者が多岐にわたっており、その多様な関係者の間に立つことが私自身のプロジェクトの中での主な役割です。
途上国現地での関係者との調整は当然のことながら、海外展開を支援する日本企業の方々に対しても、会社としてのカルチャーが異なる方を相手にすることになりますので、調整に困難はつきものです。 やり取りする相手はクライアント企業の社長など、経営層レベルの方となるケースも多く、基本的に多忙な方ばかりなので、連絡時にはメールを送るだけでなく電話等でフォローするなど、相手に合わせた丁寧な対応を心がけています。 こうした相手の性質に応じた“調整能力”と“柔軟性”はこの仕事をしていく上でとても大切な素養だと考えています。

あるプロジェクトにおけるワークショップの様子

―内戦という世界の現実を知って志した、国際協力への道

さて、話は遡りますが、私が国際協力に関心を持つようになったきっかけは高校時代にシエラレオネの内戦について知ったことです。自分が生きている同じ時代に、隣人同士で戦っている場所があるということに衝撃を受けました。大学入学後もその時の思いが頭から離れず、模擬国連※1というサークルに所属しました。何か国際関係の活動をしたいと考えたからですが、当時は実際の途上国を見もせずに紙の上で議論している、ということにもやもやとした思いがありました。
将来的に国際機関を含む国際協力業界で働きたいと考えるようになり、修士は必要であろうと考え、また、インターンを通じて実際の国際協力の現場を知ることができるという期待から、卒業後は公共政策大学院に進学しました。
実際に大学院では、インターンを2つ経験しました。1つはUNHCR駐日事務所、もう1つはJICAシエラレオネ支所です。進学時に期待していた通りに国際協力の現場を実際に目にすることができ、インターン経験は貴重な財産になりました。特にシエラレオネは自分が国際協力に関心を持ったきっかけの国であり、かつ、私自身にとってほぼ初めての途上国経験となりましたので、2カ月半という短い期間ではありましたが、鮮烈に印象に残っています。

―現職での活躍を下支えするのは、過去の業務経験と「現場」への強いこだわり

大学院卒業後の進路として私が選択したのは、外資系IT企業への就職でした。国際協力業界も目指して就職活動をしていましたが、当時は残念ながらご縁がありませんでした。国際協力とはかけ離れた進路と思われてしまうかもしれませんが、「プロジェクトベースで仕事をする経験が積める」ことと、「海外で業務をする機会があるかもしれないという期待」があったからこその選択でした。
結果的に在籍したのが2年半ほどでしたので、海外での業務に従事する機会には恵まれなかったのですが、期限が決められたプロジェクトベースの業務の進め方を仕事の基礎として身につけられたという点では、現在の仕事においても役に立っています。

その後、やはり国際協力関係の仕事につきたいと思い、現職の前になりますが、専門嘱託としてJICAで働く機会を得ました。そこで私が所属することになったのが、2012年当時は立ち上がったばかりだった中小企業支援の部署(現・国内事業部中小企業支援事業課)でした。中小企業支援という制度自体が新しいものでしたので、当初は直属の上司含め5名ほどのとても小規模なチームの中で、一から新しい制度を構築する仕事に携わりました。
前職で得たもので、現在の仕事に活きていると思うのは、まさしく“調整能力”です。構築したばかりの新しい制度に関して、内部のJICA関係部署に対しても、外部の民間企業に対しても、きちんとその中身について説明し、相手の理解を得ることが業務を進めていく上での前提条件でした。特に民間企業の方からは、海外進出に向けてスピード感が求められることが多いので、その要望を可能な限り満たしながらも、きちんと納得された上で制度上の手続きを踏んでいただくということを心がけていました。 それに加えて、現職では制度を利用する立場ですが、前職では制度を作り運用する側という逆の立場で働いていたため、様々な背景や関係者の思いをわかっているという点は強みだと思っています。お陰で、さほど苦労せずに現職の業務になじむことができました。

前職においては比較的多く現場に出張に出る機会を得ることができ、やりがいもありましたが、働き続けるうちにどこかでもやもやしたものを感じるようになっていました。このもやもやの原因は、大学時代にサークルで感じていたことと同じで、「現場経験が足りない」ということに尽きます。現場に頻繁に入っている企業やコンサルタントの方と話すたび、私自身が現地の状況を知らないという現実に、歯がゆさを感じるようになっていました。 インターンでのシエラレオネの経験が忘れられず、直接現地で活動したいという思いが強くあったのだと思います。そのため、現場により関わることのできる仕事を目指して転職活動をし、現在の職を得ました。

―企業の海外展開支援を通じて、途上国の人や課題と向き合う

現在は、技術協力プロジェクトとJICAスキームを通じた企業の海外展開支援の業務を概ね半々で担当しています。前職までの経験が日本での業務に偏っていたため、当初は日本人間の調整を基準に考えてしまいはっきり物申すということが苦手でした。そのため、現地の人と直接やりとりすることに最初は戸惑い、苦労もしました。しかし、はっきり言わないと伝わらないと理解し、割り切ってからは仕事がやりやすくなりました。
今では実際に現地に入ってカウンターパートやプロジェクト対象の方々と接する時が一番、難しいながらもやりがいを感じています。まだ経験は少ないですが、現地の人の役に立てたと実感できた時がやはり、最も喜びを感じる時です。
企業の進出先候補である途上国への出張も多々あるのですが、最近では社のコンサルタントとしては1人で現地に入ることも増えてきて、実施する業務の幅も広がり、やりがいを感じているところです。

あるプロジェクトにおけるインタビューの様子



現職において、特に印象に残っている経験があります。
とある企業の海外展開支援に関わる案件でのことです。その案件では、相手国の政府機関のカウンターパートの方だけでなく、現地農家の方の協力を得る必要がありました。しかし、当初日本企業側が想定されていた条件と、農家側の希望条件が異なっていたのです。そのギャップを埋めるため、カウンターパートの協力も得ながら農家世帯調査を行いました。調査の中で、複数人を集めてのグループインタビューも実施したのですが、農家の実情やニーズをよりリアルに把握することができ、条件交渉に大いに役立てることができました。最終的に双方が納得できる条件で合意できた時は本当に嬉しかったです。

―国際協力での活躍を目指す方へ

まっすぐに国際協力業界を目指していらっしゃる方、別の業界からチャレンジしようとされている方、様々いらっしゃると思います。
私自身、大学の頃からこの業界を目指していたという意味では回り道をしたほうだと思います。ただ、これまでの経験は今のコンサルタント業務に活かされていることが多いですし、回り道ではあっても無駄ではなかったと思っています。今は国際協力と異なる業界に身を置かれている方も、今のキャリアで将来進みたい国際協力の現場で役立てそうなポイントを、意識してみてはいかがでしょうか。

今回お話しした私のキャリア・経験や、海外展開支援という仕事の紹介が、今後のキャリアを考える際の参考に、お役に立てればうれしく思います。