【衣斐さんプロフィール】
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これまでのキャリア
 大学時代、スタディツアーでフィリピンに行き、農村の民家に泊まらせてもらう機会がありました。電気も水道も、トイレもなく、高床式の家で寝ていると、早朝には床の下からニワトリの鳴き声が聞こえる。泊めてもらった農家にはおじいさんと子ども一人しかいないので事情を聞くと、下の子どもが熱を出したので両親とともに病院に行っていて今日は帰ってこない、という。そのとき、病院に行くためのお金はあったのか、そのせいで生活が苦しくなることはないのか、と思った記憶があります。そのころから、人々の暮らしと健康を守る保健医療分野に興味を持ち始めたのかも知れません。JICAに入構し、保健医療分野に本格的にかかわることになったのは、ラオス駐在時代。3年間、ラオスの厳しい保健医療の状況をよくするためにはどうしたら良いのか、葛藤し悩みながら、必死に働きました。日本人専門家やボランティア、NGOの方々から、保健医療分野の基礎知識から臨床現場の現実、活動上の苦労など、様々なことを学ばせてもらいながら働くことができたことは本当にありがたいことでした。ヒト、モノ、カネの全てが不足していたラオスで、保健医療分野で目に見える成果を出すことは容易ではなく、この分野の難しさを痛感しました。一方で、少しずつでも人々の命を守ることにつながる保健医療分野の奥深さ、面白さを感じ、この分野を自分のキャリアの中で深めていきたいと考えるようになりました。

大学院への進学
 ラオスから帰国後、保健医療分野を扱う部署で感染症対策を担当しました。その後、結婚、出産を経て、育休から復帰後は、子育てとの両立を優先するため、しばらくバックオフィスでの勤務をしていました。業務のうえでは保健医療分野から離れたことで、かえって勉強したいとの思いが出てきて、勉強会に出席するなどしていた折、たまたま日本国内で公衆衛生修士を取得できる大学が首都圏にあることを知り、大学院進学を決めました。大学院では、統計学や疫学などを体系的に学び、これまで経験値のみに頼っていた部分に、より客観的に分析する視点を得ることができました。フィールド調査の準備から、調査員のマネジメント、データ収集・解析まで、教官の指導を得ながらほぼ独力で行い、論文執筆までこぎつけたことは自信になりました。また、同級生には国際保健経験者だけでなく、日本国内の保健医療問題に取り組んでいる医師や看護師、民間企業出身者の方々がおり、国際保健と日本国内の保健とを結び付けて考えられるようになり、視野が広がりました。

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(ラオスにて大学院の研究結果を報告)

現在の業務の概要
 現在は、主にミャンマーの保健医療分野支援の計画、事業運営・管理を担当しています。今年7月、約9年ぶりにミャンマーに出張し、ヤンゴンの変貌ぶりを目の当たりにしました。民政化し今年3月には歴史的な政権交代を果たしたミャンマーは、今まさに時代の大きなうねりの転換点にあり、こうした中で日本としてどのような支援をしていくべきか、自身のこれまでのキャリアで蓄積してきた知見が試されるチャレンジングな日々を過ごしています。

育児と仕事、学業との両立
 子どもが小さい時期は、時短勤務をしていましたが、現在は小学生になり体力もついてきたので、学童保育へのお迎えは7時。それでも職場を6時に出ないといけないので、朝はできるだけ早く出勤し、ワーキングスタイルはスピード重視で、効率的に行うよう心掛けています。懸案があれば抱え込まず、早めに上司に相談し、アクションを起こすようにしています。悩ましいのは、じっくりと考えて計画を練る時間の確保が難しいこと。読み込むべき文献などは、電車の中で読むことも多いです。育児がちゃんとできているのかはあまり自信がないのですが、食事と睡眠は子どもの成長にとって不可欠の部分なので、そこだけはきちんとしようと(逆に言うとそれ以外は手を抜いても構わないと)心掛けています。
 大学院通学時は、職務から離れ、勉学に専念。9時から17時30分の勤務時間をそのまま在学時間に切り替えました。講義の合間の空き時間で、できるだけ課題を片付けるようにし、読み切れない論文や資料は電車の中と、子どもが寝た後の時間で読んでいました。仕事をしていた時と生活リズムをほとんど変えなかったので、自分も子どももリズムを保ちやすかったのではないかと思います。

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(息子の初海外はラオスでした)

こども食堂の活動
 話はがらっと変わりますが、「こども食堂」のお手伝いのボランティアをしています。「こども食堂」とは、子どもが安心して食事を食べられる場所を地域で提供する取組みで、全国に広がりつつある試みです。大学院の同級生が、ある地域の公民館を借りて「こども食堂」を始めることになり、月1回ほど料理作りのお手伝いをすることにしました。海外の子どもたちにかかわる仕事をしてきて、また自身も子どもを持つ親となったことで、日本の社会のあり方にも何か還元できないかとの思いから、ささやかながら関わっています。

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(こども食堂にて)

(男女・年齢を問わず)国際協力の分野で活躍中(今後活躍する)人材に対するメッセージ:
 国際協力を志すことになった「思い」をぜひ大切に、困難な状況でもきっと道は拓けると信じて、時にはしたたかに、時には熱く、国際協力キャリアを進んで行ってください。

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(学会にて)