はじめに
 今回「ワークライフバランス特集」のコラムを執筆しましたが、私自身、バランスが取れているのか正直自信はありません。会社の先輩や同僚、家族、友人等、多くの方々に助けていただきながら、何とか毎日を積み重ねている、というのが正直なところです。ワークライフバランスは模索中で、開発コンサルタントとしてもまだまだ修行中です。ただ、少しでもパワーアップしたいという気持ちはたくさん持っています。こんな私の話として読んでいただけましたら幸いです。

これまでのキャリア
 大学在学中に開発学を学び、国際協力の分野で仕事をしたいという思いを持つようになりました。そのためには修士号が必要と知っていたのですが、先立つものがなく諦め、少しでも国際協力に近いところを探し、青少年の健全育成に取り組む財団法人に就職しました。広報や理事会運営等、多岐にわたる業務を経験し、成長する機会をいただきました。また、障害のある青少年と共にプロジェクトを実施する機会も得て、特に、アジアの聴覚障がい者が集うキャンプを運営した経験は、今のキャリアにつながる原点となっています。
 財団法人で3年間働いた後、国際協力の現場で更に経験を積みたいと思い、国際NGOに転職しました。助成金プロジェクトを幾つか担当した後、JICA草の根技術協力プロジェクトのプロジェクト・マネージャーとして、ウズベキスタンに2年間駐在しました。障害児・者の社会参加促進を目指したプロジェクトで、地域に根差した活動にじっくりと取り組んだ貴重な経験でした。プロジェクトで関わった障害のある方々との出会いを通じて、私は、この分野でもっと専門性を身に着けて、障害のある人もない人と同じように、生き生きと自分らしく生きられるインクルーシブな社会づくりに貢献したいと、強く思うようになりました。そんな思いを抱いて、現在の所属先に転職しました。ずっとNGOで働いていたので、対政府の仕事を担う開発コンサルタントの業務に興味を持ったのも、転職した理由の一つです。

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(ウズベキスタンで共に汗を流した仲間と出張先のフィリピンで感動の再会!彼らの存在は今でも心の支えです)

開発コンサルタントとしての仕事、そして出産
 コーエイ総合研究所では、教育や保健分野の評価や調査案件、研修業務等に従事してきました。入社から2年、開発コンサルタントの仕事が少しずつ分かってきた頃に第一子を妊娠しました。会社には、すでに子どもを育てながらパワフルに働いている先輩が数名いて、話も聞いていたので、私も頑張るぞ!という思いでした。ただ、具体的にどうやって頑張っていくのかはちゃんとイメージできていなかったと思います。
 妊娠が分かった時には、評価案件に従事することが決まっており、妊娠初期ならば加入可能な海外旅行保険があったこともあり、マレーシアに出張しました。ちなみに第2子の時にも、体調がよかったので2回ほど出張に出ました。出張にあたっては、同様の経験がある先輩からいろいろ教えていただき、また上司や同僚の理解もあり、安心して臨めました。また、何かあった場合に駆け込める病院等、現地の事情も事前に調べておきました。ただ、妊娠中の出張に関しては、体調や本人の気持ちを優先に決めるのが良いと思っています。

出産後のキャリアアップ
 第一子出産後は、1年余り育児休暇をいただきました。開発コンサルタントの仕事に従事するようになって、自分の専門が曖昧なことを実感していたため、また、いつかは障害分野の案件に従事したいという思いを持っていたため、社会福祉士の資格取得を目指すことにしました。仕事をしながら、資格取得や大学院進学に励む同僚が何人もおり、刺激を受けたことも大きいです。ただ、子どもを育てながら本当に勉強できるのか、といった不安があり、専門学校への願書提出をぎりぎりまで迷いました。先輩や家族からの励ましを受けて出願し、入学が決まってお金を振り込んで覚悟が決まりました。私の場合、お金を払ったら、その分を取り戻してやるぞ、と気合が入るようです。
 育児休暇中に、専門学校の課程を終え、会社復帰の1年後に国家試験を迎えました。仕事と育児の合間の勉強、と言っても、その合間がなかなか見つからない。朝の30分、通勤時間の15分、ちょっとの合間に練習問題を1問、という日々でした。試験前は、仕事が多忙を極め、また私を筆頭に家族がインフルエンザに罹るといったかなり厳しい状況でした。でも、今年受からなければ、来年も受からないだろうという確信があったため、ぎりぎりまで粘り、何とか合格しました。そして、人生で一番の達成感を感じると同時に、もっと社会福祉について学びたいと思うようになりました。
 社会福祉士に合格し、仕事に対し少し自信が持てるようになったことが、自分の中での大きな変化でした。そして、大学卒業以来ずっと心にあった大学院進学について考えるようになり、第2子出産のタイミングで受験しました。出産2週間後が入試だったため、出産が遅れたら諦める予定でしたが、何とか受験することもでき、無事合格しました。産後の手伝いに来ていた母には事前に伝えていなかったため、生まれたばかりの娘を預け受験したいとお願いしたら、叱られてしまいましたが。合格したものの、不安が先立ち、入学手続きぎりぎりまで進学しようか迷いましたが、学費を払ったら勉強することしか考えていませんでした。そして今は、週2~3回、学べるありがたさをかみしめつつ、0歳の娘と一緒に通学しています。娘は、学内の託児所に預けています。
 資格取得や大学院進学が、今後の自身のキャリアにどのように生かされていくのかは未知数なところもありますが、ライフワークとしてインクルーシブな社会づくりに取り組んでいきたいと思っています。

仕事と育児の両立
 第一子出産後、復職してからは、調査や研修業務等、国内業務が多い案件に従事しています。幸いなことに、希望していた障害分野の研修業務やプロジェクトに関わる機会を得ています。海外出張は2週間程度のものが年に2、3回。短期の出張になるように、会社が配慮・調整してくれています。出張と多忙な研修業務の間は、地方から実家の母、義理の父に交代で上京してもらい、保育園の送迎と家事を全てやってもらっています。保護者会にも参加した義理の父は、“スーパーじいちゃん”として保育園でも有名です。いろんな人に育ててもらえることは、子どもたちにとってプラスなことだと思っています。と言いつつも悩むことも多く、子どもたちが寂しい思いをしていないか、と私がうじうじ思い悩んでいると、「ま、彼らの人生長いから」と夫に一蹴され、励まされて前進する、という繰り返し。普段は、夫と家事を分担し(夫の貢献度の方が多いくらいです)、子どもが病気の時は、どちらか都合がつく方が休むか病児保育を利用しています。切羽詰まった時には、近所の知り合いに預かってもらうこともあります。家に仕事を持ち帰ることも多いのですが、子どもと一緒の時はじっくりと子どもに向き合うよう心がけています。
 想像していた以上に、私にとって両立は大変なこと。時間に追われ余裕がなく、元々早口なのが更に早口になり、また仕事中には“話しかけないでオーラ”全開なこともしばしばです。ワークライフバランスどころか、よろけているのではないかと思う時もありました。それでもやってこられたのは、支えてくれる先輩や同僚、家族の存在が大きいです。私の仕事への思いを理解してくれている夫には本当に感謝しています。
 私のような修行中のコンサルタントの場合、業務調整の仕事が大半です。50名程の政府関係者の旅行手配を行う業務を担当したこともありました。最初は「私はこんなことのために転職したのだろうか」と思うことも正直ありましたが、総括(プロジェクトリーダー)や仲間から学ぶことの方が大きく、いつしか「どんな仕事も自分がパワーアップするためにある」と思えるようになりました。与えられた仕事は、どんな仕事でも丁寧に、一生懸命やること。学びのない仕事はなく、それは社会に貢献できる自分に一歩近づくためのもの。これらの思いは、子どもを持って、周りの人びとの支えを実感するようになって、一層強くなったように思います。
 今は第2子出産と育児のため育児休暇中で、復帰後、両立できるのか、どのくらい仕事をしていけるのか不安が先立つこともありますが、応援してくれている先輩・同僚に恩返しをするために頑張ろうと決めています。

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(本邦研修での講義、妊娠8ヶ月の頃)

最後に―これから国際協力の分野にチャレンジされる方へ
 国際協力は本当に面白い仕事です。生まれた環境も価値観も異なる人びとと共に、汗を流し、喜びを共有できることが、この仕事の醍醐味であり、何よりの幸せです。また、学び続けられる(学び続けなければいけない)というのも、魅力の一つかと思います。育児や介護との両立が特に難しい面もある職種かもしれませんが、悩みつつもその道を切り拓いている先輩方がたくさんいらっしゃいます。私もその一人になれるよう、少しずつでもパワーアップしていきたいと思います。

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(出張で訪れたモンゴルの風景、プロジェクトの仲間と一緒に飲んだ湧き水は本当に美味しかったです)