第5号 連載コラム WASSHA株式会社での経験を通じて学んだことと私のキャリア観

(写真:3か月間、一緒に仕事をしていたSCMメンバー)
※SCM:Supply Chain Management(サプライチェーンマネジメント)

こんにちは、4月から『WASSHA株式会社』に入社予定の中田渉(なかたしょう)と申します。
本コラムでは、JICA中期インターンシップに参加した経験と、『WASSHA株式会社』に就職を決めた中で、私が感じたことや考えたことをシェアさせていただければと思います。

私は、2018年9~11月にかけてJICA中期インターンシップに参加した経験を通じて、自分自身のキャリアを考え直す機会を得たことにより、インターン先として働かせていただいた、タンザニアでソーラーランタンのレンタル事業を行っているベンチャー企業『WASSHA株式会社』 に就職することを決めました。

現在、私は東京大学 公共政策大学院で公共政策学・経済学を専門として勉強しています。
学部時代も経済学部に所属しており、主にマクロ経済学・開発経済学を専攻していました。もともと途上国支援や国際協力の世界に対する関心や憧れは中学高校のころから強かったのですが、大学での勉強を経て、途上国の経済成長を促すようなマクロな視点での関わり方をしたいと思うようになりました。

大学院入学当時は、国際機関のような公的組織に入り、途上国開発に関わりたいと思っていました。特に国際機関である明確な理由はなく、「国際機関であれば目の前の一人二人を助けるだけでなく、より多くの人を助けることが出来る大きなインパクトを生めるだろう」という漠然とした目標意識でした。

しかしながら、就職活動を始め、多くの社会人の先輩方とお話をさせていただく中で『自分が生涯をかけてやりたいこと』は決して「国際機関に行くこと」や「途上国開発に関わること」ではなく、『途上国における貧困をなくすこと』だということに気がつきました。
セクターの多様化や複雑化が進む途上国開発というフィールドにおいて、いかにしてセクター間を超えた協働を通じて大きなインパクトを生むか(トライセクターコラボレーション※)、いかにそういった仕組みづくりを行うかということが自分の大きな関心事となりました。

そんなことを考えていた時に出会ったのが『WASSHA株式会社(以下、WASSHA)』です。

WASSHAは、JICAの民間連携スキームを通じて民間投融資を受けていた他、丸紅や楽天との協働なども進めており、ビジネス側がベースとなってセクター協働が実現しているという自分にとってロールモデル的な存在でした。
「なぜWASSHAがそれを実現することができたのか」、「何が課題となっているか」を自分の目で見たく、JICA中期インターンシップを通じてWASSHAへ3か月間インターンシップをさせていただきました。

情報収集は PARTNER をはじめ、 JICAのホームページ やfacebook等を通じて行いました。また、JICAの方々とも話す機会を積極的に探し、JICA内部の方が現在の途上国開発での潮流に対してどう考えているのかといったお話もできるだけインプットできるように動きました。
インターネットを通じて面識のない人とも連絡を取り合うことが容易になっている今日の状況は、学生にとって理想的な状況だと感じています。

WASSHAでのインターンでは、主に在庫管理に関わるオペレーションの改善に関わりました。学生だからといって甘く見られることはなく、常に高速でPDCAを回して成果を出すことが求められるような刺激的な日々で、時に目の前に立ちはだかる問題の大きさに押しつぶされそうになることもありましたが、非常に充実した時間でした。

日頃、本やインターネットで途上国に関わる多くの記事やレポートを読んでいましたが、実際に現場に入り自分で経験するとともに「腹落ち」した学びが多くありました。「テクノロジーベースで作ったオペレーションやプロダクトはなかなか現場には受け入れられない」、「ビジネスの成功と顧客の満足度の向上は本質的には同じである」、「トライセクターコラボレーションは大きな可能性を秘めているが課題も多い」。
様々なことを自分の言葉で語れるようになったのが最も大きな収穫でした。

3か月間のインターンシップ期間を経て帰国してから、改めて自分の経験、そして今後のキャリアについてじっくりと考え一つの結論に至りました。それは、自分が『途上国の貧困をなくす』という目標を実現するうえでWASSHAの事業を成功に導くことは大きな意味がある、ということでした。

もともと卒業後すぐに途上国開発に関わる仕事に就き成果を出すことに対して自信がなかったので、ビジネスコンサルティング会社に就職して実力をつけてから途上国開発の世界に戻ってこようと考えていました。
しかし、インターンシップでの経験を経て、寄り道をせずに今すぐにでも自分の目標へのコミットメントを始めようと考えを改めWASSHAへの就職を決めました。

途上国開発に関わる仕事は、その関わり方もアプローチの仕方も実に多様で、キャリアに関して考えることが難しいといつも感じます。

自分の長期目標は何で、今自分がやっていることはそれに直接かかわる事なのか、それとも間接的に関わる事なのか。自分が「やるべき」理由は何で「やりたい」理由は何なのか。こういった自問自答を常に繰り返しながら、今後も自分のキャリア、目標達成への道筋を描いていきたいと思っています。


※トライセクターコラボレーションとは
政府組織、民間企業、そしてNPOをはじめとするソーシャルセクターがセクター間の垣根を越えて協働することで社会課題解決の効果を促進するべきとする言説。社会課題の複雑化を受けて元来政府組織やソーシャルセクターの守備範囲とされていた課題解決に民間企業を巻き込まざるを得なくなってきていることや、民間企業もCSV(Creating Shared Value=共通価値の創造)を通じて自身の社会的価値を創出することを重視し始めたことを受けて、その重要性を増している。


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東京大学 大学院 公共政策学教育部 中田 渉

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