第15号 連載コラム JICA Innovation Quest ~国際協力の新しい形を創る~「ジャイクエ、はじめます」(最終回)

「みんなが当たり前に開発途上国に想いを寄せ発信する世界。」
自分を取り巻く世界を、そんな世界に一歩でも近づけるために何かをしたい。という想いを胸にわたしは4年前にJICAの門を叩きました。

わたしは親の仕事の転勤に伴い、成人するまでの期間の半分を日本で、もう半分を海外で過ごしました。特に小学生の頃2年ほど住んでいた南アフリカ共和国のヨハネスブルグは、当時アパルトヘイト(人種隔離政策)の影響がまだ残っており、貧富の差が激しく治安も悪く、外国人は安全に出歩くことは到底できないような環境で、親の運転する車窓から、自分と同い年くらいの子どもたちが道端で静かに物乞いをする姿を毎朝見ながら通学していました。また近所のメイドさんの息子とも友達でしたが、クリスマスにサンタは来ないと彼は言い、我が家の玩具で一緒に遊んでいました。今思えばこの時期は、同じ時代に生まれた同じ人間でも、いつどこに生まれるかによって全く異なる暮らしをしていることに、幼いながら気が付く機会になりました。

小学5年生で日本に帰国し、南アフリカでの生活で見聞きしたことをそのまま作文に書いたところ、地域の新聞に掲載されてたくさん褒められたことがあります。その時、自分にとって身近だったあの道端に座っていた子どもたちの存在は、日本で暮らす人々の中にはいないことに気づきました。日本で楽しく日々を過ごす中でそのような話を聞くことはたしかに殆どありません。一方、地球の裏側では今でも同じ景色は広がっていて、そのような国で安く作られたものを日々消費しながらわたしたちは日本で暮らしている…。この矛盾に気付いたから、まずは個人的にでも開発途上国を日本から想い続けられる仕事に就いて、たくさんの人を巻き込んで、もっと自然に公平に開発途上国と共存できる世界づくりに貢献したい、と思うようになりました。

JICAに入ってからは、円借款を通じて日本の企業を巻き込みながらバングラデシュの橋梁を建設したり、日本の防災技術を生かしながらネパールの震災復興を支えたりするプロジェクトに携わったり、円借款の制度やルール、戦略を考える仕事をしています。日本が国として開発途上国と関わる戦略について議論したり、将来の地図に残るようなスケールの大きなプロジェクトに携わったりと、なかなか体験できないようなことが仕事となり充実感があります。

バングラデシュの橋梁建設現場付近を視察中

ネパールの山の上の村でお世話になった方々と

その一方で、二つ目の本業として、新規事業であるJICA Innovation Quest(ジャイクエ)の立ち上げにも携わっています。第一回のコラムでご紹介してからの3か月余りで、広報イベント( https://www.jica.go.jp/information/seminar/2019/20190601_01.html )の開催や、社内説明会を通じた仲間集め、ジャイクエへの参加者や協力企業を募るための営業活動など、チームで協力して活発に準備を進めています。「みんなの力を合わせて革新的な国際協力を共創したい」と話をすると、とても有難いことに、多くの方が前向きなフィードバックをくださり、「みんなが当たり前に開発途上国に想いを寄せ発信する世界」づくりが少しずつ始まっている実感があります。

今回のコラムで、ジャイクエ連載企画は最終回となります。これまでの記事を読んで、ジャイクエに参加したい!何か協力したい!一言コメントをしたい!などご感想をもっていただけましたら、ジャイクエチーム( jiq@jica.go.jp )までご連絡をいただけますととても嬉しく思います。なお、8月下旬から9月頃にかけ、ジャイクエへの参加者の募集を開始する予定です。今後ともジャイクエを成功させるためにチーム一丸となって取り組んでまいりますので、温かく見守っていただけますと幸いです。今後とも、よろしくお願いします!

ジャイクエチームメンバーの集合写真

JICA Innovation Quest チーム、企画部
神武 桜子

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