第33号 PARTNERコラムブラジルの日本と日本のブラジルに魅せられて(その2)

日本の人手不足や外国人労働者の受け入れについての報道が増えてきています。しかしブラジルに今も200万人近くの日系人がいることや、100年前まだ貧しかった日本は外国に移民を送り出す側にいたことを知らない人も多いのではないでしょうか。私はブラジルに住んでいる間、かつて日本からブラジルに来て大変な苦労をされた日本人移民1世の方々の話をよく聞きました。彼らやその子孫がブラジル国内で「ジャポネース グアランチード(信用できる日本人)」と呼ばれるようになったのは、実は教育の力によるものが大きいのです。

ブラジルは移民国家です。日本だけでなくヨーロッパなどさまざまな国から移民してきた人々が未開の内陸部にどんどん町を作っていきました。町の真ん中にはたいてい移民者が建てた立派なカトリック教会があります。日本人の移民者は、町の真ん中にまず学校を作ったそうです。日本語学校は日本人コミュニティのセンター的な役割を果たしてきました。彼らは日本人としての誇りを大切にし、日本語を学び、同胞を支え合い、なおかつブラジル社会に溶け込む為の努力を怠りませんでした。ブラジル生まれの2世の方々の中には高学歴かつ日本語とポルトガル語のバイリンガルが多くいらっしゃいます。親世代の苦労を見てきているからこそ社会で成功する為の努力を続けてこられたのでしょう。

ブラジルの社会そのものが、学ぼうとする者のために開かれているということも大きいです。私はJICAボランティアとして派遣されていた2年間、夜間学校で10代の同級生たちと共に学ぶことができました。「勉強したいです。学校に入れてください」と教育委員会を訪ねた日、教育長はにっこりと笑って自ら車に乗せて私を学校に連れていき、校長先生に紹介してくださいました。

今の日本は、「労働力不足」から外国人に門戸を開こうとしています。しかし若い彼らの自己実現やそのための学びの環境を整えることにまできちんと目を向けているかというと、残念ながらそれは十分とは言えません。文部科学省によると、小中学校の就学年齢にある外国籍の子どもの2割弱にあたる2万1701人が、学校に通っているかどうか分からない「就学不明」に、また日本語教育が必要なのに学校で指導が受けられない「無支援状態」の人数も1万1008人に達しています。

日本で暮らす外国人を差別する「心の壁」もあります。加えて「言葉の壁」「制度の壁」…これらをただのバリアにしないために、私たちに何ができるのでしょうか。英語ができなくてもポルトガル語ができなくても、誰にでも笑顔で「おはよう」と言える地域社会を作ることから始めませんか。「心の壁」は笑顔ひとつで簡単に消すことができると思います。

(写真:任地の日本人会の皆さんと七夕祭りを企画)
(写真:任地の日本人会の皆さんと七夕祭りを企画)

小学校教諭
藤川純子

毎週金曜日に配信している“PARTNERニュース”では、新着の求人・インターン情報/研修・イベント情報の受け取りの他にも、コラム掲載のお知らせもお届けしています。このコーナーでは、コラムの全文と過去アーカイブをお読みいただけます。

個人登録(「参加レベル登録」または「人材登録」)をして、是非、PARTNERニュースの購読をお願いします。